
要約
今回のフレームワーク文書(2026年5月29日発行、214ページ)で学校現場にとって最も影響が大きいのは、科学的リテラシーに新設された第3のコンピテンシー「意思決定と行動のための科学情報の調査、評価、利用」と、革新領域として初めて導入された「デジタル世界における学習(Learning in the Digital World: LDW)」の2点である。いずれも、従来の理科・情報教育の枠組みでは十分にカバーされてこなかった能力を国際学力調査の評価対象に組み込むものであり、日本の教科指導・ICT活用の現状とのギャップが顕在化しやすい論点である。なお結果自体は「PISA 2025 Results (Volume I)」として本資料に先行して2026年9月8日に既に公表されており、本フレームワークはその評価設計の考え方を事後的に詳述する位置づけとなっている点にも留意が必要である。
PISA 2025は第9サイクルで、91の国・地域の76万人以上の生徒(約3,300万人の15歳児を代表)が参加し、今回は科学が主要領域(major domain)となった。科学の評価は「現象を科学的に説明する」「科学的探究のデザインの構築・評価とデータ・証拠の批判的解釈」に加え、新たに「意思決定と行動のための科学情報の調査、評価、利用」という第3のコンピテンシーが追加された。背景には、若者の85%がGoogleを、3分の2がYouTubeを利用し、少なくとも4分の1がSNSやオンラインニュースから情報を得ている実態があり、誤情報が信頼できる情報源より速く広範囲に伝播しうるという問題意識がある。生徒は情報源の専門性、査読の役割、科学的合意の程度などを踏まえて情報の信頼性を判断する力(認識論的知識)を求められる。あわせて「科学的アイデンティティ」「科学資本」という情意的構成概念が測定され、環境領域では「人新世におけるエージェンシー(Agency in the Anthropocene)」という新しい成果概念も導入された。
LDWは、計算論的問題解決実践(実験の実施、データの分析、計算論的成果物の構築とデバッグ)と自己調整学習プロセスの2本柱で構成され、各30分のインタラクティブなデジタル環境(ブロック型プログラミング、コンセプトマップ、フローチャート、シミュレーション等)で評価される。評価はコンピュータベースを原則とし、紙ベースは希望する国のみに提供される。また2018年に導入された多段階適応型テスト(MSAT)が、2025年調査では読解・数学・科学の中核3領域すべてで初めて採用された点も技術的に重要な変更である。
質問紙面では、家族・保護者の定義が継父母・里親・祖父母等を含む形に拡大されたほか、ESCS(経済的・社会的・文化的背景)指数の全面的な見直し、教員の「移民・マイノリティ背景」という新構成概念の追加、成長マインドセットや社会的流動性認識の測定強化など、公平性・多様性に関する項目が拡充されている。さらに指導実践に関しては、PISA2015の分析結果として「探究型指導への接触が多いほど、多くの参加国で科学パフォーマンスと負の相関を示した」ことが明記され、直接指導とガイド付き探究の組み合わせが最適という知見が示されている。
現場視点の一般的な懸念
- 科学の新コンピテンシー『意思決定と行動のための科学情報の調査、評価、利用』では、査読・科学的合意形成・情報源の信頼性評価などメディアリテラシー的な内容が問われるが、日本の理科カリキュラムはこの領域を体系的に扱っておらず、現場教員がどの単元でどう指導すべきか判断材料がない。
- LDW評価は計算論的問題解決実践(ブロック型プログラミング、モデル構築・デバッグ等)を前提とし評価はコンピュータベースが原則だが、GIGAスクール構想で端末は整備されたものの、理科・技術科教員がこうした計算論的思考の指導経験・研修を十分受けていない学校では、生徒がテスト形式自体に不慣れなまま臨む恐れがある。
- 資料はPISA2015の分析結果として『探究型指導への接触が多いほど多くの国で科学パフォーマンスと負の相関を示した』と明記し、直接指導とガイド付き探究の組み合わせが最適だとしている。これは近年推進されてきた『主体的・対話的で深い学び』重視の理科授業と方向性が食い違う可能性があり、現場が拠り所とすべき指導方針が定まらない懸念がある。
- OECD諸国全体で物理・工学・コンピュータ科学を選択する生徒(特に女子)の少なさが政策的懸念として明記され、科学的アイデンティティ・科学資本という新概念で測定される。日本でも理系進路のジェンダー差は顕著だが、進路指導や教科選択の構造的要因への対応が学校・教員の個人的努力に委ねられがちで、組織的な取組が不足している。
- MSAT(多段階適応型テスト)が中核3領域すべてで初採用され、CBT実施が前提となる一方、紙ベース実施を選ぶ国も残る。国内でも学校のICT環境・通信環境の格差により、CBT環境が十分整っていない学校では実施運営上の負担や結果の解釈への影響が生じうる。
現場視点の一般的な懸念を踏まえた改善提案
- 国(文部科学省)は次期学習指導要領・教科書改訂において、科学情報の信頼性評価、査読制度、科学的合意形成プロセスの理解を理科の指導事項として明示的に位置づけるべきである。
- 教育委員会は理科・技術科・情報科の教員を対象に、ブロック型プログラミングやモデル構築・デバッグといった計算論的思考を指導するための研修プログラムを拡充し、GIGAスクール端末を活用した実践事例を共有すべきである。
- 国立教育政策研究所等の研究機関は、探究型指導と直接指導の組み合わせに関する国内データを検証し、PISAの知見を踏まえた具体的な理科指導法ガイドラインを現場に提示すべきである。
- 学校・教育委員会は、理系進路選択における男女差の実態を校内データで把握し、女子生徒向けのロールモデル提示やキャリアガイダンスを進路指導計画に組み込むべきである。
- 教育委員会は域内学校のCBT実施環境(端末・通信・電源等)を点検し、格差がある学校への予算措置や機材整備を優先的に進めるべきである。
※この文章はAIで作成されています。あくまで参考としてお読み取りいただき、事実関係、内容の妥当性の確認はリンク先の原典を当たるなど各自の判断でお願いします。
PISA 2025 Assessment and Analytical Framework
https://www.oecd.org/en/publications/pisa-2025-assessment-and-analytical-framework_86c36975-en.html


