
要約
第4回会議で最も現場への影響が大きいと感じられる論点は、「発達段階に応じてデジタルをどこまで・どのように使うか」という判断が、令和12年度の小学校からの順次導入に向けて、まだ明確な量的・質的基準を持たないまま学校現場に委ねられそうだという点である。委員からは低学年では紙を基盤にすべきという意見が繰り返し出されたが、「読みのスキル形成時期」がどの学年までかについても専門家の間で確定的な答えは出ておらず、指針策定の難しさが改めて浮き�011がった。
発達段階についてのヒアリングでは、野澤委員が「スクリーン劣位効果」(読解得点がスクリーンより印刷のほうが高いという知見)とその要因である「浅い処理仮説」「認知負荷仮説」を紹介した。小学校1年生を対象にした研究では、単語の読みが十分でない子供には印刷のほうが成績がよく、学校・園という文脈では家庭よりもスクリーン劣位効果が現れやすいと報告された。2022年PISAでは、OECD平均で30%の生徒が数学の授業で自分のデジタル機器によって注意をそらされると回答しており、日本はその割合が低いものの、今後の注意散漫防止の工夫が必要とされた。渡辺弥生教授(法政大学)は、紙が向く機能(初期習得・精読・記憶定着)とデジタルが向く機能(反復練習・即時フィードバック・動的資料・アクセシビリティ)を整理し、低学年は選択的注意が未熟なため「情報が固定されている」紙の利点が求められる一方、中学年以降はメタ認知の獲得に伴いデジタルの併用が複雑な内容の理解に資すると述べた。
健康への影響については、脳科学の細田千尋教授(東北大学・慶應義塾大学)が、米国のABCD Study(9〜12歳、脳データで7,000人規模)などを踏まえ、スクリーンメディア利用と脳機能・認知機能・行動の関連は「効果量が0.1に満たない」程度であり、有意ではあるものの極めて小さいと報告した。2019年の論文では「デジタル技術の使用と発達の関連については科学的合意に達していない」ことが明記されており、責任ある専門家は科学的不確実性を強調すべきだとされている。一方で2025年のABCD縦断研究では、スクリーンタイムが長いほどADHD傾向が上がり右被殻の体積が減少するという結果(効果量は同様に小さい)も紹介された。3〜5歳児47名の研究では、スクリーン使用が多い児童ほど言語処理が未発達で白質の微細構造が低下するという結果も示されたが、サンプル数の少なさへの留意も付言された。
学力等への効果・影響と諸外国の動向については、後藤教科書課長が資料4に基づき説明した。現行デジタル教科書の活用頻度は年々上昇し、半数以上の教師が半分以上の授業で活用、約7割が4回に1回以上使用しているとのデータが示された。大規模児童生徒アンケートでは活用頻度が高いほど「授業内容の理解」「主体的な学び」「協働的な学び」等の指標が高い傾向が見られ、つくば市の実証事例では英語デジタル教科書の家庭学習が音読課題・定期テスト・英検IBAの成績向上と結びついていた。諸外国の動向では、スウェーデンが印刷教科書の購入補助を近年導入した一方で義務教育・高校でのタブレット使用を廃止した事実はなく、ノルウェーは企業広告入りデジタル教材の問題を経て特別支援等のニッチ分野への補助にシフトし、シンガポールは中学校では1人1台配布する一方、小学校では当面配布せず段階的導入とする方針であることが紹介された。いずれの国も「デジタルとアナログの適切なバランス確保」を志向しているとまとめられた。
「手書き」の重要性については、昨年9月の中教審審議まとめや国会答弁を踏まえ、デジタル一辺倒ではなく紙のノートにまとめる活動の重要性が改めて確認された。中学校社会や中2国語・小5社会の実践事例では、デジタルでの情報収集・意見交換の後、紙のノートで手書き整理する場面が紹介されている。委員からは、紙とデジタルを固定的に二項対立で捉えず、画面への書き込みや紙のノートの写真をクラウドで共有するなど、現場は既に柔軟に使い分けているとの指摘もあった。次回会議は8月18日(火)10時〜12時の開催予定である。
現場視点の一般的な懸念
- 野澤委員の発表で、小学校1年生の研究では単語の読みが不十分な子供に紙が優位という結果が出ているが、「読みのスキル形成時期」がどの学年までかは委員間でも一致しておらず、低学年担任がデジタル教科書の使用量をどこまで絞るべきか現場判断に委ねられる可能性がある
- 市川委員が指摘した「認知処理過程(文字か音声か、継次的か同時的か)の特性は多様であり、それをどこまで共通の教科書に反映すべきか」という論点は、通常学級に在籍する特別支援ニーズのある児童生徒の教材選定を担う学校・特別支援コーディネーターにとって、判断基準が示されないまま令和12年度導入を迎えるリスクがある
- 細田教授の報告では、スクリーンメディア利用と脳機能・認知機能の関連の効果量は0.1に満たない程度であり、2019年の論文でも「科学的合意に達していない」とされているにもかかわらず、令和12年度の小学校からの順次導入というスケジュールが先行しており、エビデンス整備と制度導入のタイミングがずれている
- スウェーデンが印刷教科書の購入補助を近年導入し、ノルウェーが企業広告入りデジタル教材の問題を経て補助対象を特別支援等に絞り直したという諸外国の政策転換が紹介された一方、日本のような教科書使用義務・検定制度を持つ国が少なく単純比較できないとされており、教育委員会が国際動向を採択判断の参考にする際の拠り所が弱い
- 資料5で紹介された「手書き」の実践事例は中学校社会・中2国語・小5社会など個別校の事例にとどまり、大臣答弁で示された「書く活動の確保」の具体的な時間配分や量的な目安が示されていないため、学校が年間指導計画に落とし込む際の指針が不足している
現場視点の一般的な懸念を踏まえた改善提案
- 国(文部科学省)は、野澤委員・渡辺教授の知見を踏まえ、低学年は紙を基盤としつつ中学年以降デジタル活用を段階的に広げるという学年別・教科別の目安を指針案に明記し、教育委員会が採択・運用基準に反映できる形にする
- 国と大学(東北大学・慶應義塾大学等の脳科学研究チーム)は、効果量が小さいとされる現行のエビデンスを踏まえ、令和12年度の小学校からの順次導入前に、学習利用(娯楽利用と区別した)データを対象とした追加実証研究を前倒しで実施する
- 教育委員会・学校は、市川委員が提起した認知処理特性の多様性に対応するため、特別支援教育コーディネーターと連携し、学習障害・自閉症等の特性別にデジタル教材(読み上げ機能・視覚的支援等)の選定基準を校内で明文化する
- 学校は、大臣答弁や資料5の実践事例を踏まえ、教科ごとに「デジタルで情報収集・議論した後、紙のノートで手書き整理する」場面を年間指導計画に具体的な時間数として組み込み、教科書会社・教材作成者はその場面設計を教材に反映する
- 国は、スウェーデン・ノルウェー・シンガポール等の政策転換を紹介する際、日本の教科書検定制度・使用義務との制度差を明示した上で、教育委員会が参照しやすい形で「バランス確保」の具体的指標(学年別デジタル活用時間の目安等)を今後の指針に追記する
※この文章はAIで作成されています。あくまで参考としてお読み取りいただき、事実関係、内容の妥当性の確認はリンク先の原典を当たるなど各自の判断でお願いします。
デジタルな形態を含む教科書の発行・採択等の指針に関する検討会議・第4回議事録
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/206/gijiroku/mext_02447.html


