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要約
本資料は、文部科学省初等中等教育局初等中等教育企画課が令和7年11月に実施した「教育委員会の現状に関する調査(令和6年度間)」の結果、及びこれに付随して令和8年8月31日付(8初初企第8号)で発出された「『教育委員会の現状に関する調査(令和6年度間)』の結果に係る留意事項及び第6次男女共同参画基本計画を踏まえた取組の推進について(通知)」から構成される。調査対象は都道府県・指定都市教育委員会67、市町村等教育委員会1,718(特別区・広域連合等を含み、事務の一部のみを処理するものは除く)で、対象期間は令和6年度間または令和7年3月31日時点の状況である。
調査項目は、①大綱の策定状況、②総合教育会議の開催・事務局・内容・議事録・意見聴取・首長との連携・活性化の取組、③教育長・教育委員等(保護者委員、女性委員、教育長の前職・任命・不在事例、教育次長職)、④教育委員会会議の開催・公開・議論活発化の取組、⑤教育委員会の活動状況についての点検・評価、⑥教育委員会と首長との連携・事務の弾力化(権限移譲、事務委任・補助執行)、⑦教育委員会事務局(指導主事の配置、事務局職員人事、教育行政職採用、外部人材登用)、⑧都道府県による市町村等支援(指導主事支援、広域連携促進)、⑨市町村等間の事務の共同実施、⑩その他学校関係(学校裁量予算、学校管理規則)と多岐にわたる。
主な結果としては、総合教育会議の令和6年度間の平均開催回数は都道府県・指定都市で1.6回、市町村等で1.3回にとどまり、市町村等の14.4%(247自治体)は年間を通じて一度も開催していない。議事録の公表率は都道府県・指定都市が100%である一方、市町村等は86.7%にとどまる。教育委員については、保護者である委員がいない市町村等が68自治体(4.0%)、女性委員がいない市町村等が24自治体(うち選任予定がないのは4自治体)あり、第6次男女共同参画基本計画(令和8年3月閣議決定)が掲げる「女性教育委員のいない教育委員会数を2030年までにゼロにする」という目標との乖離が示されている。教育委員会会議の傍聴者数が年間0人だった市町村等は65.2%に上り、点検・評価を「行っていない」と回答した市町村等も36自治体存在する。
とりわけ際立つのが、指導主事の配置状況における自治体規模間の格差である。人口5千人未満の市町村等では66.3%が指導主事未配置である一方、人口10万人以上ではほぼ100%配置されており、規模の小さい自治体ほど専門人材の確保が困難な実態が明確に表れている。都道府県による市町村支援についても、指導主事配置への財政的支援を行っている都道府県はわずか14.9%(7団体)にとどまる。
通知本文では、こうした調査結果を踏まえ、総合教育会議の更なる活用(特にいじめ重大事態等の緊急時協議、教員の業務量管理・健康確保措置実施計画の報告、高等学校教育改革実行計画をめぐる連携への活用)、議事録の作成・公表の徹底、保護者委員・女性委員の速やかな選任、教育委員会会議の公開性向上、点検・評価の確実な実施と学識経験者の意見聴取、指導主事の共同設置や「指導主事に準ずる者」の活用、都道府県による市町村支援の強化、近隣市町村との事務共同実施の推進など、多方面にわたる改善が要請されている。あわせて、点検・評価未実施や学識経験者への意見聴取未実施、女性委員選任予定なしと回答した個別自治体名も、参考資料として具体的に列挙されている。
現場視点の一般的な懸念
- 小規模自治体における指導主事不足と支援の乖離:人口5千人未満の市町村等の66.3%で指導主事が配置されていないという結果は、教育課題への指導・助言体制そのものが脆弱な自治体が多数存在することを意味する。一方で、都道府県による財政的な配置支援を行っている都道府県はわずか14.9%にとどまり、「指導主事に準ずる者」の活用や共同設置といった代替策も、制度の存在自体が現場に十分周知されていなければ機能しない。小規模自治体の教育委員会事務局が、限られた職員体制の中でこの構造的な人材不足にどう対応すればよいのか、具体的な道筋が調査結果からは見えにくい。
- 総合教育会議・教育委員会会議の「開催・公開」を巡る形式と実質の乖離:市町村等の14.4%が総合教育会議を年間一度も開催しておらず、教育委員会会議の傍聴者数が0人の自治体も65.2%に上る。通知は「更なる活用」「公開性の向上」を求めるが、開催回数や傍聴者数といった量的指標の改善が、実際の意思決定の質や住民への説明責任の向上に直結するとは限らない。特に小規模自治体では、会議を開催・公開する体制を整えること自体が、日常業務と兼務する少人数の事務局職員にとって新たな負担となりうる。
- 点検・評価や意見聴取の「未実施」自治体への対応の一律性への懸念:点検・評価を行っていない36自治体、学識経験者からの意見聴取を行っていない236自治体が、都道府県名・市町村等名まで具体的に列挙されている。これは透明性の観点では有用だが、実施できない背景にある人員・予算・学識経験者へのアクセスといった地域差を踏まえずに「速やかに実施されたい」という要請だけが先行すれば、形式的な体制整備(報告書の作成のみを目的化する等)に陥るおそれがある。
- 保護者委員・女性委員の不在解消を巡る実務的な制約:女性の教育委員がいない24自治体のうち4自治体は選任予定がないと回答しており、単なる周知や要請だけでは解消が進まない構造的な要因(人口規模が小さく候補者の絶対数が少ない、なり手不足等)が存在する可能性がある。国が掲げる2030年までのゼロ目標と、実際に候補者を確保できるかという地域の実情との間にギャップが生じうる。
- 業務量管理・健康確保措置実施計画の総合教育会議への報告義務が新たな負担となる可能性:令和8年4月施行の給特法改正に伴い、教育委員会は業務量管理・健康確保措置実施計画の策定・報告を総合教育会議で行うことが新たに求められることになった。これは教職員の働き方改革の観点からは重要な制度だが、総合教育会議自体の開催回数がそもそも少ない自治体(平均1.3回)にとって、既存の議題に新たな報告事項が加わることになり、実質的な審議時間の確保が課題となりうる。
- 広域連携・事務共同実施の推進が現場の合意形成コストを見落としている可能性:都道府県が「していない」理由として「複数市町村による学校事務の共同実施を検討しているが、服務監督等について協議が整わないこと」「連携の在り方や制度に関する知見の不足」が挙げられており、広域連携の必要性は理解されていても、実際の制度設計・合意形成には相応の時間と専門知識を要することがうかがえる。国・都道府県からの一律の推進要請が、こうした現場の調整コストを十分に考慮したものになっているかは資料からは読み取りにくい。
現場視点の一般的な懸念を踏まえた改善提案
- 指導主事不足への対応として、財政支援と広域共同設置の制度化を都道府県単位で先行実施する:都道府県教育委員会に対し、指導主事配置への財政的支援や近隣市町村との共同設置を単なる「望ましい取組」として紹介するにとどめず、モデル事業として一定期間・一定地域で先行実施し、効果検証を経た上で全国展開する段階的なアプローチを取る。あわせて「指導主事に準ずる者」の具体的な人材像(校長経験者の再任用条件、報酬水準等)を国が例示し、小規模自治体が制度を利用しやすくする。
- 会議の開催・公開状況の評価に、量的指標だけでなく質的な工夫事例を併記した好事例集を整備する:総合教育会議・教育委員会会議の開催回数や傍聴者数といった数値目標を一律に課すのではなく、図9・図24等で示された活性化の工夫(事前勉強会、オンライン開催、移動教育委員会等)を自治体規模別に整理した実践ガイドを作成し、小規模自治体が身の丈に合った改善を選択できるようにする。
- 点検・評価や意見聴取の未実施自治体に対しては、個別事情のヒアリングを前提とした伴走支援を行う:未実施自治体名を公表するだけでなく、都道府県教育委員会が窓口となって未実施の背景(人員・学識経験者へのアクセス等)を個別に把握し、近隣の学識経験者を都道府県が仲介する、複数市町村合同での点検・評価委員会を設置するといった、実施のハードルを下げる具体的な支援策を講じる。
- 女性委員・保護者委員の不在解消には、候補者プールの広域的な整備を検討する:小規模自治体単独では候補者確保が難しい実態を踏まえ、都道府県が域内の女性有識者・保護者経験者等の人材バンクを整備し、市町村からの求めに応じて候補者情報を提供する仕組みを設けることで、「選任予定がない」状態からの脱却を後押しする。
- 業務量管理・健康確保措置実施計画の報告を総合教育会議の議題に組み込む際は、既存の議題整理と一体で運用指針を示す:国は、総合教育会議の年間スケジュールの中に本計画の報告をどのように位置づけるべきか(定例化するタイミング、報告様式の簡素化等)の具体的なモデルを示し、新たな報告事項が既存の重要議題(いじめ重大事態対応等)の審議時間を圧迫しないよう配慮する。
- 広域連携の合意形成コストを軽減するため、服務監督等の論点整理済みの標準モデルを国が提示する:都道府県が指摘する「服務監督等について協議が整わない」という課題に対し、国が一部事務組合・協議会設置等の制度ごとに服務監督・人事上の論点をあらかじめ整理した標準的な協定書ひな形を作成・提供することで、個々の自治体が一から制度設計を検討する負担を軽減する。
教育委員会の現状に関する調査(令和6年度間)
https://www.mext.go.jp/a_menu/chihou/1411790_00005.htm


