【現場視点】令和9年度からの私立大学等の収容定員の変更に係る学則変更予定一覧について(答申)

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要約

本資料は、文部科学省(大学設置・学校法人審議会)が公表した「令和9年度からの私立大学等の収容定員の変更に係る学則変更予定一覧」であり、令和8年8月28日付で最新版が公開されるとともに、その前段階にあたる令和8年6月24日付の一覧、および参考資料として国立大学・国立高等専門学校の収容定員増加予定一覧も併せて示されている。私立大学等が令和9年度(2027年度)から学則を変更し、学部・学科の収容定員を増減させる予定について、大学ごとに定員の変更前後の人数、位置、備考、附帯事項(遵守事項)が一覧化されたものである。

8月28日付の一覧には、私立大学8校と私立短期大学1校が掲載されている。目立つ動きとして、まず薬学部薬学科の定員削減が複数校で確認できる。医療創生大学(福島県)は薬学科を廃止し令和9年4月から学生募集を停止、新潟薬科大学(新潟県、大学名を新潟科学技術大学に変更予定)、鈴鹿医療科学大学(三重県)、広島国際大学(広島県)、九州医療科学大学(宮崎県)はいずれも薬学科の定員を大きく減らしている。多くの学科で備考欄に「収容定員未充足の是正に努めること」という遵守事項が付されており、定員割れの是正を目的とした縮小であることがうかがえる。

一方で、中央大学(東京都)は経済学部を大幅に再編し、経済情報システム学科・国際経済学科・公共環境経済学科を廃止する一方、スポーツ情報学部を新設して学部全体としては295人の定員増となる。京都橘大学(京都府)も建築デザイン学科の定員を増やし、全体で10人増となっている。短期大学では、中日本自動車短期大学(岐阜県)が自動車工学科の定員を25人増やしているが、備考欄には「収容定員超過の是正に努めること」との記載があり、実際の在籍者数がすでに定員を上回っている状況を追認する形の変更であることがわかる。参考として示された国立大学の一覧では、岩手大学が「大学・高専機能強化支援事業」による定員増(理工学部10人増)を予定している。

6月24日付の一覧(前月分)には私立大学11校が掲載されており、こちらも同様の傾向が見られる。城西国際大学(千葉県)は医療薬学科を廃止し募集停止、長崎国際大学(長崎県)も薬学科を削減している。他方で、共立女子大学と上智大学(いずれも東京都)は、「地域における大学の振興及び若者の雇用機会の創出による若者の修学及び就業の促進に関する法律」に基づく特定地域内学部収容定員増抑制の除外規定の適用を受け、東京23区内にありながら定員増が認められている。上智大学は理工学部内の既存3学科の定員を減らしつつ、デジタルグリーンテクノロジー学科を新設して差し引き20人増、共立女子大学は建築・デザイン学科を50人増としている。

新設学科の傾向としては、「デジタル」「グリーン」を冠する学科が目立つ。福岡工業大学(福岡県)は電子情報工学科・生命環境化学科・知能機械工学科・電気工学科をすべて廃止し、先進工学科(460人)とデジタルメディア学科(80人)に再編、長崎総合科学大学(長崎県)は先端工学部にグリーン・デジタル学科とグリーン船舶システム学科を新設している。また、東京国際工科専門職大学は令和9年4月に国際工科専門職大学へ名称変更予定で、東京の学科を大阪・名古屋にも拡大し、定員を200人から480人へと大幅に増やす。岐阜保健大学も日本保健大学への名称変更とあわせて名古屋看護学部を新設し、多拠点化を進めている。参考として付された国立大学・国立高等専門学校の一覧(6月版)では、京都工芸繊維大学(情報工学課程10人増)、久留米工業高等専門学校(制御情報工学科を廃止し情報科学科を新設、全体30人増)が示されている。

全体を通じて、①薬学系学科を中心とした定員割れによる縮小、②「デジタル」「グリーン」等の新分野学科への再編、③大学名・学部名の変更、④東京都心部を含む多拠点展開、という4つの潮流が読み取れる資料となっている。

現場視点の一般的な懸念

この一覧を、進路指導を行う高校教員や、受験生・保護者、大学の現場職員といった視点から見ると、いくつかの懸念が浮かび上がる。

第一に、大学名・学部名・学科名の変更が同時多発的に生じている点である。新潟薬科大学→新潟科学技術大学、岐阜保健大学→日本保健大学、東京国際工科専門職大学→国際工科専門職大学など、名称変更が令和9年4月に集中しており、既存の在校生・卒業生の帰属表記、入試広報、過去の合格実績データとの整合性、高校側が保有する進路資料の更新など、現場が対応すべき作業は少なくない。特に薬学科など専攻名まで変わる場合、志望校選定時に生徒・保護者が混乱するおそれがある。

第二に、薬学部薬学科の定員削減が全国規模かつ同時期に集中している点である。備考欄の「収容定員未充足の是正に努めること」という記載から、多くの大学で薬学科の定員割れが常態化していたことがうかがえるが、これが個々の大学の経営判断としてバラバラに縮小されており、地域の薬剤師供給計画といった俯瞰的な視点からの調整は見当たらない。地域によっては薬剤師不足が懸念される一方、大学側の定員政策が需給を反映した計画的なものなのか、単に定員割れの後追い的な是正にとどまっているのかが、この資料だけでは判断しにくい。

第三に、「デジタル」「グリーン」「AI」「エンタテインメント」といった時流に沿った名称の新学科が相次いで新設されている一方、これらの学科が実際にどのような教員体制・カリキュラム・設備をもって運営されるのかは、この一覧からは全く読み取れない。名称だけが先行し、教育の実質が伴わない「看板倒れ」になる懸念は、現場でしばしば指摘される点である。

第四に、東京23区内の定員増を原則抑制する法律の「特定地域内学部収容定員増抑制の除外規定」が、上智大学・共立女子大学という都心の有力私立大学に適用されている点も、地方大学関係者からは疑問視されやすい。地方の若者流出抑制という法の趣旨と、実際の運用実態との整合性が問われる可能性がある。

第五に、東京国際工科専門職大学や岐阜保健大学のように、一つの大学が複数の都市にキャンパスを同時展開するケースが見られるが、教員配置や設備投資が拠点ごとに十分に行われるのか、多拠点化によって教育の質にばらつきが生じないかという懸念も、現場では拭いきれない。

第六に、この種の一覧が6月・8月と月単位で改訂・追加されていく形で公表されており、同じ令和9年度入学者向けの情報であっても、進路指導の現場が常に最新版を追い切れているとは限らない。古い版の定員情報のまま生徒に指導してしまうリスクも実務上は無視できない。

現場視点の一般的な懸念を踏まえた改善提案

以上の懸念を踏まえ、次のような改善の方向性が考えられる。

まず、大学名・学部名・学科名の変更については、文部科学省または各大学が、変更前後の対応表(新旧名称対照表)を分かりやすい形で公表し、高校の進路指導担当者や受験情報会社が参照しやすいようにすべきである。特に薬学系など資格取得に直結する学科の名称変更では、資格試験受験資格との関係も含めて明示することが望ましい。

次に、薬学部薬学科をはじめとする定員割れが続く分野については、個々の大学の経営判断に委ねるだけでなく、地域の薬剤師需給や医療人材計画といった広域的な視点から、都道府県・関係団体を交えた調整の枠組みを検討する余地がある。あわせて、なぜ定員が縮小されたのか(定員未充足の是正か、戦略的な規模縮小か)を大学側が受験生向けに丁寧に説明することも求められる。

新設学科の実質を担保するためには、認可・届出の審査段階で、名称だけでなく専任教員数・研究設備・カリキュラムの具体性を厳格に確認し、審査結果の概要を公表することで、受験生や保護者が学科の実態を判断しやすくすることが望ましい。

特定地域内定員抑制の除外規定の運用については、どのような基準で除外が認められているのかを一覧の中でより明確に説明し、制度の趣旨と運用実態との乖離が疑われないよう透明性を高めるべきである。

多拠点展開する大学については、拠点ごとの教員配置計画・設備投資計画を届出時に明示し、後年度に拠点間で教育の質に差が生じていないかを検証する仕組みを設けることが望ましい。

最後に、情報の鮮度という点では、月単位のPDF一覧を積み重ねる現行の公表方法に加えて、同一年度分の変更予定を一元的に検索・閲覧できるデータベース形式での公開を進めることで、現場の進路指導担当者や受験生が常に最新の正確な情報にアクセスできるようにすることが望まれる。

令和9年度からの私立大学等の収容定員の変更に係る学則変更予定一覧について(答申)
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/daigaku/toushin/1422602_00013.htm

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