【現場視点】(第11回)中央教育審議会大学分科会質向上・質保証システム部会 配布資料

20260825_223043_中央教育審議会大学分科会質向上・質保証システム部会(第11回)の配布資料を掲載しました_1

要約

令和8年8月25日、文部科学省は中央教育審議会大学分科会質向上・質保証システム部会(第11回)の配布資料を公開した。今回の会議では、①「新たな評価」を通じた質保証システムの担保、②新たなデータプラットフォームにおける情報公表、③教学マネジメント指針の見直し、の3本立てで議論が行われている。特に注目すべきは、認証評価で「不適合」(新制度下では「要是正」)となった大学への対応を、法令違反の程度に応じてA・B・Cの3区分に仕分け、Cに該当する重大な違反については学校教育法第15条に基づく勧告・変更命令・廃止命令へと段階的に進める枠組みが具体化されつつある点である。現行の機関別認証評価では、第3サイクルで不適合となった16校のうち、再評価を経て適合に至ったのはわずか4校にとどまっており、この「改善が進まない現状」への危機感が制度改正の背景にある。

もう一つの柱が、大学ポートレートに代わる新たなデータプラットフォーム「Univ-map(仮称)」の構想である。国公立版・私学版に分かれて運用され、更新の遅さや網羅性の課題、学修成果の可視化不足が指摘されてきた大学ポートレートを統合的に再設計し、「新たな評価」の結果を「要是正・★・★★・★★★」という4段階の星評価で一元的に公表する仕組みが提案されている。API公開やAI検索、チャットボット導入といった利便性向上策と並んで、評価結果を資源配分等の国の政策に活用することも検討課題として明記されており、単なる情報提供にとどまらない政策的インパクトを持つ制度設計となっている。

これらの新評価制度は、7つの評価基準・15の評価項目にわたって大学に根拠資料の提出を求める枠組みであり、AIを活用した自動確認機能や不足情報へのアラート機能によって評価者・大学双方の負担軽減を図るとしているが、実際にどこまで大学側の入力・資料整備の負担が軽減されるかは、具体的な運用設計次第という段階にとどまる。また、教学マネジメント指針についても、「新たな評価」の趣旨を踏まえた改訂の検討が提起されており、令和2年の策定以来、大学教育に求められる管理運営の枠組み自体が更新局面に入りつつある。

第10回部会(6月29日開催)で委員から出された「要是正状態を理由に新学部設置を認めない場合、学部再編による改善の妨げになりうる」「再評価のプロセスが分かりにくい」といった懸念は、今回の資料である程度反映されているものの、なお制度設計上の曖昧さが残る部分も少なくない。評価結果の資源配分反映、星評価の社会的な受け止められ方、大学ポートレートからの移行スケジュールなど、大学現場が具体的な運用の詳細を注視すべき論点は多い。以下、現場視点から6点の懸念と、それぞれに対応する改善提案を示す。

現場視点の一般的な懸念

  1. 評価対応の恒常的な事務負担増大:新たな評価では7つの評価基準・15の評価項目にわたり根拠資料の提出が求められる。加えて新データプラットフォームでは、評価結果は6年以内ごとだが、基本データについては毎年度の入力が想定されている。AIによる自動確認・アラート機能で負担軽減を図るとされるものの、IR担当・教務担当職員の限られた人員体制の中で、恒常的なデータ収集・入力作業が積み重なる懸念があり、特に人員体制の薄い中小規模大学・地方大学ほど相対的な負担は重くなる。
  2. 星評価の指標自己目的化:「要是正・★・★★・★★★」の4段階評価を高校生・保護者向けに一元公表する設計は、資料自体が「リーグテーブルの代わりに」と位置づけているにもかかわらず、実質的にはランキングとして受け止められやすい。大学側が星の獲得そのものを目的化し、ディプロマ・ポリシーの文言調整や自己申告データの見栄えを整えることに注力するインセンティブが生じかねない。
  3. 資源配分反映による格差拡大の懸念:評価結果を私学助成の減額・不交付等の資源配分に反映することが検討課題として明記されているが、財政的な支援策とセットでなければ、既に基盤が脆弱な大学ほど「要是正」からの改善投資が困難になり、規模・地域による格差がむしろ拡大する可能性がある。
  4. 「要是正」対応区分の判断基準の不透明さ:法令違反の程度に応じたA・B・Cの3区分と、それに続く勧告・変更命令・廃止命令のフローが示されたが、Cに該当するか否かの実質的な判断基準は明文化されておらず、「明確にCに該当すると判断できる場合等は付議をせずに対応を進める」という例外規定も曖昧である。第10回部会でも「再評価や改善指導のプロセスが分かりにくい」との指摘が出ており、今回の資料でも運用の透明性に課題が残る。
  5. 学部再編による改善の阻害リスク:要是正状態を理由に新学部設置等を一律に認めない制度的措置は、個別学部の課題を理由に、大学全体が自律的な学部再編を通じて改善を図ろうとする取組そのものを止めてしまう可能性がある。個別の問題が大学全体の改革機会を奪う「個への帰属」のリスクが残る。
  6. プラットフォーム移行期の二重対応負担:大学ポートレートと新プラットフォーム「Univ-map(仮称)」との役割整理は「発展的解消も視野に今後検討」との段階にとどまり、統合・移行の具体的なスケジュールは未確定である。移行期間中、大学側が両システムへの二重対応を強いられる可能性がある。

現場視点の一般的な懸念を踏まえた改善提案

  1. 評価項目・データ入力項目について、学校基本調査等の既存統計との自動連携を徹底し、大学側の再入力を求めない設計とする。あわせて、想定される入力作業時間など負担の定量的な見積りを事前に大学側へ提示し、実際の負担軽減効果を継続的にモニタリング・公表する仕組みを設ける。
  2. 星評価の公表ページ上で、評価が「大学の総合的な優劣」ではなく「学生の成長度・教育成果に関する相対的な指標」であることを明示するとともに、星評価の算定根拠となる具体的なエビデンス(学生の伸び率データ等)を必ず併記し、星の数だけが独り歩きしない表示設計とする。
  3. 評価結果を資源配分に反映する場合には、単純な減額・不交付措置と併せて、改善計画の実行を支援する重点的な財政支援や専門人材派遣等の充実策をセットで制度設計し、格差の拡大を防ぐ仕組みとする。
  4. A・B・Cの分類にあたっての具体的な判断基準・事例集をガイドラインとして事前に公表し、大学設置・学校法人審議会への付議を省略できる要件を限定的に列挙する。分類結果とその理由についても、当該大学に対して書面で明示することを制度化する。
  5. 新学部設置等の認可制限について、既存の問題学部の廃止・改組を伴う再編計画である場合には例外的に審査を認めるなど、改善に資する自律的な再編を後押しする運用ルールを明確化する。
  6. 大学ポートレートから新プラットフォームへの移行スケジュールと、参加大学への影響(データ移管方法、二重入力の要否)を早期に明示し、移行期間中の大学側の負担を最小化する具体的な工程表を示す。

中央教育審議会大学分科会質向上・質保証システム部会(第11回)の配布資料を掲載しました
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