「新たな評価」制度の在り方について(案)――教育・学習の質向上に向けた新たな評価の在り方ワーキンググループ(第11回)配付資料

要約

背景と問題意識

令和7年2月の中教審答申「我が国の『知の総和』向上の未来像」を踏まえ、少子化が進む中で学生一人一人の能力を最大限に引き出す「教育の質」の向上が急務とされている。現行の認証評価制度は導入から20年が経過し、①評価結果のわかりづらさ、②評価者・被評価者双方の「負担感」「徒労感」、③学生の学びの改善に直結しないという三つの課題が指摘されてきた。こうした現状を受け、制度を抜本的に見直す「新たな評価」への転換が提案されている。

制度の基本設計

「新たな評価」は、大学全体の評価学部単位の段階別評価の二層構造で構成される。

大学全体の評価では、①社会的信頼に関すること、②全学的な内部質保証システムに関する手続・体制、③内部質保証が図られていること、の三基準により「適合/要改善」を判定する。大学全体が「要改善」と判断された場合、学部ごとの評価は実施されない。

学部単位の段階別評価は、以下の四段階で評価される:

評語意味
要改善法令等で求められる水準に達していない
★(1つ星)求められる水準に達している
★★(2つ星)学生の成長につながる優れた取組を通じて高い教育成果が期待される
★★★(3つ星)学生の成長につながる優れた取組を通じて高い教育成果を挙げている

評価は「質保証の視点」(法令基準への適合を厳格に判定)と「質向上の視点」(DPに掲げる資質・能力を備えた学生を育成できているかを総合的に判断)の二軸で行われる。

評価の基本方針(4区分・7基準・15項目)

学部ごとの評価は以下の四つの基本方針で整理される:

  • 明確な「養成する人材像」とDPの策定・公表
  • DP達成のためのカリキュラム・教育環境体制
  • 学生の学修成果の適切な把握と評価
  • 学生の学びと成長の結果を基盤とした不断の自己改善

評価主体

総合評価機関(仮称)」(大学全体+全学部の段階別評価を担当)と「特定分野評価機関(仮称)」(医学・薬学・法科大学院・教職大学院等の特定分野を専門評価)の二種類を設ける。特定分野評価機関の評価結果は、総合評価機関の当該学部評価に代替可能とし、重複受審の負担を軽減する。評価機関には更新制を導入し、定期的に文科大臣が適格性を確認する。

評価サイクルと方法

評価サイクルは6年間を基本とする(現行の機関別認証評価7年・分野別5年の中間)。評価方法は、学部ごとの自己点検・評価書を中心に据え、ピア・レビュー形式で実施。実地調査の義務化は見直し、オンライン面談の活用など柔軟な運用を可能とする。

データプラットフォームと評価結果の公表

独立行政法人大学改革支援・学位授与機構にデータプラットフォーム(仮称)を設置し、受審管理・データ入力・評価支援・情報公表の機能を一元化する。評価結果は大学名・学部名・分野・星の数などで検索・ソートできる形でオンライン公開し、高校生や企業などが進路・採用判断に活用できることを目指す。

現場視点の一般的な懸念

① 「星の数」が独り歩きするリスク 評価結果が★1〜3の形で可視化・公開されることで、教育の実態とは乖離した「レーティング競争」が生じるおそれがある。受験生向け情報として活用されることを明示しているだけに、大学・学部の序列化が促進され、小規模・地域密着型の教育機関が構造的に不利になる可能性が高い。

② 学部ごとの自己点検評価書作成の実務負担 「大学全体の評価の簡素化」を謳いながら、実質的な評価の中心は学部単位の自己点検評価書に移行する。学部が21の学位分野を踏まえながら、DP到達度・多面的評価・教育成果のデータを整理・記述・根拠資料で裏付ける作業は、現行の認証評価以上の事務負担を生む可能性が高い。「負担感解消」の訴求と実際の書類作成業務の重さの間に大きな乖離がある。

③ 「教育成果」の可視化要求と測定困難性の矛盾 ★★以上の評価を得るには「教育成果を明確に挙げていること」の説明が求められるが、その根拠として挙げられるのは就職先調査・全国学生調査・ルーブリック等の間接評価が中心である。これらは教育の質の代理指標にすぎず、大学が意図的に操作可能な数値でもある。「測れるものしか評価されない」という圧力が、数値化しやすい能力に教育が収束していく恐れがある。

④ ピア・レビュー評価員の確保と質の均質性 21分野×全国約800大学を対象とするピア・レビューに必要な評価員の確保は、現実的に極めて困難である。文科省も「幅広く協力を促していく」と曖昧な表現にとどまっており、評価員の質・基準の均質性をどう担保するかは未解決のままである。

⑤ 評価機関間の「目線合わせ」の実効性への疑問 複数の評価機関が「共通評価ガイドライン」と「研修」で目線を揃えるとされているが、機関間で段階評価の基準が実際に統一されるかは疑わしい。評価機関の競合・市場化が進めば、被評価大学に有利な評価を出す機関へのインセンティブが発生し、制度全体の信頼性が損なわれるリスクがある。

⑥ 「要改善」処分の曖昧さとペナルティの不透明性 「要改善」と判定された学部・大学に対して文科省が「ペナルティを含めた措置」を検討するとされているが、具体的な措置の内容・基準・手続きが一切明示されていない。予見可能性のない行政措置は、大学経営の不安定化を招くとともに、処分回避を目的とした保守的・形式的な自己点検書作成を誘発する。

教育・学習の質向上に向けた新たな評価の在り方ワーキンググループ(第11回) 配付資料
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