
要約
本懇談会の第4回は、以下の3議題をめぐる資料が配付された。
資料1:通信制高校について(通信制課程の教育課程)
前回(3月25日)の議論の概要を受け、次期学習指導要領に向けた通信制課程の見直しの方向性(案)が提示された。
主な検討事項は以下の通り。
学習の質と量の確保:通信制の1単位は全日制・定時制の35単位時間の授業に相当する学習量を確保すべきこととし、添削指導・面接指導の意義を学習指導要領上に明確に示す方向が示された。また「通信教育実施計画」における学習評価・単位認定基準の具体的記載と公表の徹底を求める方向性が打ち出された。
添削・面接指導の在り方:指導回数の一律拡充は行わず、学習指導要領で示す回数はあくまで最低限の基準であることを解説に明記する方針。「総合的な探究の時間」については指導の倍増方向(1新単位あたり添削1回・面接1コマ以上)を検討。「特別活動」はメディア減免の対象から除外し、面接指導の10分の6以内を同時双方向オンラインで「代替」可能とする案が示された。
メディア減免の見直し:10分の8減免については適用要件を厳格化し、生徒個別の計画作成を条件とすることを検討。各学校は通信教育実施計画にメディア利用の内容を具体的に公表することが求められる方向。
単位制の柔軟化との関係:現行1単位を2新単位に細分化する中教審の議論を踏まえ、端数が生じる場合は基本的に「切り上げ」とする考え方が示された。
参考資料として令和7年度通信制高等学校実態調査(速報版)が添付されており、323校を対象に調査。私立が70.3%を占め、令和7年度入学者の57%が中学3年時に不登校経験者であることが判明。面接指導に一度も来ていない生徒が在籍生徒の2.6%(約8,000人)に上るなど、実態上の課題が浮き彫りになった。また、自校評価の不実施・非公表や、スクール・ポリシー未策定校が一定数存在することも明らかになった。
資料2:高等学校入学者選抜について
平成5年通知以来の入学者選抜改善の経緯を整理した上で、現状と課題および具体的方向性が示された。
学力検査の改善:知識量を問う出題から思考力・判断力・表現力を問う出題への質的転換を促進。デジタル技術を活用した採点効率化や都道府県間の連携も検討。
多様な選抜方法の拡充:スクール・ミッション・ポリシーを踏まえた多様な選抜方法の導入、不登校・障害・外国籍などの多様な背景を有する生徒への配慮の充実を整理する方向。調査書の欠席日数記載については、本人に帰責されない理由による欠席で不利益が生じないよう配慮を求める通知(令和7年6月)が紹介された。
単願制・併願制問題:デジタル行財政改革会議(令和7年4月)における総理指示を踏まえ、公立高校の単願制見直しの論点が提起された。自治体ヒアリング結果として、単願制のメリット(志望動機の高さ)と課題(心理的プレッシャーによる消極的進路選択)、DAアルゴリズムを用いた併願制の課題(序列化・地域校の定員割れ・採点基準統一の困難・コスト増大)が整理された。愛知・兵庫・京都・福岡の各自治体の選抜実施方法も参考資料として紹介。
資料3:高校教育改革促進基金の公募概要
国が設置した高校教育改革促進基金による「抜本的改革支援」の公募概要。①アドバンスト・エッセンシャルワーカー等育成支援、②理数系人材育成支援、③多様な学習ニーズへの対応の3類型で各都道府県が改革先導拠点を申請する仕組み。令和8年2月〜5月に複数回の締め切りで採択発表が行われており、富山・静岡を含む採択事例が紹介された(最大22.2億円規模)。
現場視点の一般的な懸念
① 通信教育実施計画の「具体的記載」は現場に過重な文書作成負担をもたらす
今回の方向性は、通信教育実施計画に学習評価基準・単位認定基準・メディア利用計画などを「より具体的に」記載・公表させることを求めている。しかし、現状でさえ計画作成や自校評価の実施・公表が徹底されていない実態(自己評価未実施13.9%、通信教育連携施設では58%が自己評価未実施)がある中で、記載基準を引き上げることは、体制の弱い私立・株立校の現場に書類作成・管理の追加負担を押し付ける構図になりかねない。「見える化」の要請が現場の疲弊をもたらすという政策の逆説を検証する視点が必要だ。
② 「総合的な探究の時間」面接指導倍増は、指導の形骸化を加速させかねない
指導回数を倍増するという量的拡充策は、何を「探究的な指導」とカウントするかの判断基準が曖昧なまま実施されれば、内容を問わず回数を満たすための形式的面接を増やすことになる。通信制高校において深い協働的探究が困難な構造的事情(地理的分散、非同期学習が基本)に対して、回数規定による対応は本質的な解決策にならない可能性が高い。
③ 特別活動における「メディア減免廃止+オンライン代替」は言葉の操作に近い
特別活動をメディア減免の対象から除外しつつ「10分の6まで同時双方向オンラインで代替可能」とする方針は、実質的には現行の利便性をほぼ維持しながら制度の厳格化を印象づける政策パッケージとも読める。現場では「代替」と「減免」の区別をどう説明するか、新たな解釈上の混乱が生じることが予想される。加えて、「協働的な学び」の本質が非言語・同期的な対面交流に依拠するという観点からは、オンライン代替の「代替」性そのものに疑義が残る。
④ 単位の細分化(2新単位化)に伴う添削・面接回数の端数処理が実務的に煩雑
現行1単位を2新単位に分割する議論を前提とした回数・コマ数の整理が示されたが、増単・減単・切り上げ・25分単位での増減など、組み合わせの複雑さは指数的に増大する。各学校の通信教育実施計画を年度ごとに更新する際の計算・記載・確認作業は、担当者にとって高度な専門判断を要するものとなる。小規模校や担当者が少ない学校での運用現実を踏まえた補足ガイドラインの整備が不可欠だ。
⑤ 入学者選抜「多様化」の要請と調査書「見直し」の方向性が矛盾しかねない
調査書を選抜に使う必要のある事項に絞り込む方向を示しながら、多様な選抜方法では生徒の個性・活動経験・特性を「多面的に評価」せよと求めている。評価材料の縮小と評価の多面化という二方向の要請が、現場(特に中学校)にとって何をどう記録・提出すれば良いかの混乱をもたらす可能性がある。評価基準の整理は教員の判断負担の再配分に過ぎず、負担の軽減にはなりにくい。
⑥ 高校教育改革促進基金は「先導拠点」の普及メカニズムが脆弱
基金による先導拠点の創出は「パイロットケースの普及」を目的としているが、普及の具体的メカニズムが「オープンソース化」や「施設の開放」といった程度にとどまっている。億円単位の施設整備・人材投資を前提とした先導拠点モデルが、財政的・人的に制約された一般校に「普及」できるかという問いに、資料は正面から答えていない。先導拠点と一般校の格差拡大を「改革の成果」として可視化することへの批判的視点が現場関係者の間で高まることが予想される。
高等学校教育の振興に関する懇談会(第4回)の配付資料を追加しました
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/201/siryo/mext_00004.html

_配付資料_1-380x300.png)
