
要約
本法律案は、情報通信技術の進展を踏まえ、小学校・中学校・高等学校等における教科書制度を抜本的に見直すものです。主な改正内容は以下の通りです。
1.学校教育法の改正 現行法では「教科用図書(紙)」のみを教科書として規定していますが、改正後は紙・デジタル・紙+デジタルの複合形態を含む広義の「教科書」を新たに定義します。これにより、デジタル形態の教科書が正式な使用義務の対象となります。あわせて、既存の「教科用図書代替教材(デジタル)」制度は廃止されます。
2.教科書発行に関する臨時措置法の改正 デジタル形態を含む新たな教科書の発行・供給(電気通信回線による自動公衆送信を含む)に対応するため、発行者の義務内容や保証金制度を見直します。
3.無償措置関連法の改正 義務教育段階の教科書無償制度について、デジタル形態の教科書にも無償措置を拡大します。紙・電磁的記録の別に応じた無償措置の方法を定めます。
4.著作権法の改正 デジタル教科書の発行・使用等に伴い、音楽や動画を含む著作物の公衆送信に関する権利制限を拡充します。
5.その他関連法の整備 文部科学省著作教科書に関する法律、障害児童生徒向け教科用特定図書等普及促進法についても、デジタル教科書対応の所要改正を行います。
施行期日:令和9年(2027年)4月1日
現場視点の一般的な懸念
1. デジタル環境の整備格差
デジタル教科書の使用には端末・通信環境が前提となりますが、学校・家庭間の整備状況には依然として格差があります。「教科書は全員が使える」という無償・平等の原則が、デジタル環境の有無によって実質的に損なわれる恐れがあります。
2. 教員の指導負担と研修
紙とデジタルが混在する授業設計が必要になるため、教員への負担が増大します。特に情報活用が得意でない教員へのサポートや、研修体制の整備が伴わない場合、現場での混乱が生じやすくなります。
3. 教科書採択・供給体制の複雑化
発行者の義務や保証金の還付方法が「供給の方法ごとに文部科学省令で定める」とされており、デジタル配信を含む供給体制の実務が複雑になります。採択・発注・配布の手続きが従来と異なり、事務担当者の対応コストが高まります。
4. 著作権処理の実務的負担
著作権法改正により公衆送信が可能になる範囲が広がりますが、音楽・動画等の著作物利用については発行者・学校ともに適切な範囲の判断が難しく、誤用リスクや確認コストが生じます。
5. 障害のある児童生徒への対応
教科用特定図書等についても無償措置が整備されますが、デジタル形態への対応が紙と同等に機能するかは、個々の障害特性や支援ツールとの互換性によって異なります。現場での個別対応が求められる場面が増える可能性があります。
6. 施行まで約1年という準備期間
令和9年4月施行に向けて、省令・規則の整備、教科書の検定・採択・発注・配布の流れが大幅に変わります。特に初年度は制度移行の混乱が生じやすく、現場への周知と事前準備の時間的余裕が十分かどうかが懸念されます。
学校教育法等の一部を改正する法律案
https://www.mext.go.jp/b_menu/houan/an/detail/mext_03491.html

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