教育課程部会 体育・保健体育、健康、安全ワーキンググループ(第10回)配付資料

要約

1. 議題

本回の議題は次の2点。①学習指導要領における部活動・地域クラブ活動の取扱い、②体育・保健体育、健康、安全WG取りまとめ骨子(案)等について。

2. 資料1:部活動・地域クラブ活動の取扱い(資料1-1・1-2)

次期改訂の方向性

現行の中学校学習指導要領総則では、部活動を「学校教育の一環」として位置づける記載がある。次期改訂では以下の方向で改善する。

  • 「部活動」と「地域クラブ活動」の双方について記載する
  • 部活動については基本的記載を維持しつつ、①体罰・暴言・事故等の防止、②学校における働き方改革の推進に関する記載を充実させる
  • 地域クラブ活動については、新たにその位置づけや学校との適切な連携等を記載する
  • 高等学校等については「部活動」のみ記載

3. 資料2-1:WG取りまとめ骨子(案)

本資料が今回の中心的資料であり、次期学習指導要領における体育・保健体育教科の全面的な改善方向を提示している。

(1)目標・見方・考え方の在り方
  • 目標は体育と保健を分けず、小中高共通の「柱書」を設ける。三つの柱(知技・思判表・学びに向かう力)それぞれについて学校段階ごとに書き分ける
  • 「見方・考え方」は卒業後の人生・社会との関わりを見据えて統一的に示す
  • 体育:「運動やスポーツを、心身の充実に果たす役割や多様な楽しみ方の視点から捉え、自他の豊かな生活及び活力あふれる社会づくりにつなげること」
  • 保健:「保健に関する課題や情報を、健康や安全に関する概念やそれに関わる原則に着目して捉え、リスクの軽減や生活の質の向上、及び健康・安全を支える環境づくりにつなげること」
(2)資質・能力の構造化
  • 体育・保健とも「並列パターン」で構造化。内容のまとまりごとに「統合的な理解」(知技)と「総合的な発揮」(思判表)を示す「高次の資質・能力」(表形式)を設ける
  • 「学びに向かう力・人間性等」に位置づけてきた公正・協力・責任・参画・共生・健康安全は「運動との関わり方」として「知・技」を中心に再整理し、指導と評価の改善を図る
  • 「愛好的な態度」は「運動・スポーツの多様な楽しみ方を目指す態度(仮称)」として「学びに向かう力・人間性等」に引き続き位置づける
(3)系統性の見直し

体育

段階期間特徴
各種の運動の基礎を培う時期小1〜4「遊び」の要素を取り入れた学習。幼児教育との接続重視
多くの領域を経験しスポーツの基礎に触れる時期小5〜中2ルール等を簡易化した「運動」を基本。全ての子どもが安心して参加できる機会を保障
卒業後も多様な楽しみ方で豊かに関わる時期中3〜高3選択制。自己選択・社会との接続・豊かなスポーツライフの実現

保健

  • 小:身近な生活を中心とした健康・安全に関する基礎的な内容(実践的に学ぶ)
  • 中:個人生活を中心とした健康・安全に関する内容(科学的に学ぶ)
  • 高:個人及び社会生活における健康・安全に関する内容(総合的に学ぶ)
(4)内容の改善
  • 小1〜4段階では「遊び」要素を取り入れ、具体的運動名の限定的列挙をやめ、「どのような動きの習得を意図するか」を軸として示す
  • 高2以上(最終段階)の技能水準を現行の中3〜高1程度に引き下げ、余白を創出
  • 体育理論の名称を「スポーツ理論」に改称。改正スポーツ基本法の趣旨を踏まえた内容改善
  • 高等学校専門学科「体育」を「スポーツ」に改称。スポーツの推進・発展の担い手育成を軸に再整理
  • 健康・安全に関する学習は「生命(いのち)の安全教育」との関連整理を含め、演習的な学習活動を充実させる
(5)学習・指導・評価の改善
  • 深い学びの実現に向け、体育と保健を往還・統合した指導を重視
  • 多様性の包摂:1次的支援(分かりやすい授業・多様なニーズへの対応・子どもの主体的活動)の拡大
  • 水泳授業:学校プールの老朽化・暑熱問題に対応し、社会体育施設との複合化・民間連携等も視野に入れた持続可能な在り方を検討
  • デジタル学習基盤の活用:動画・ウェアラブル端末・VR等を活用しつつ、機器操作の目的化・身体活動時間確保に留意
  • 調整授業時数制度等を活用した発展的・探究的な学習機会の例示
  • 学習評価:「内容のまとまりごとの評価規準例」を国が示す方向性を踏まえつつ、「運動との関わり方」の評価については態度主義的評価にならないよう更に検討

4. 資料2-2:単元構想に向けた「統合的な理解」「総合的な発揮」の活用イメージ

「高次の資質・能力」(統合的な理解・総合的な発揮)を活用した単元構想の具体例を提示。

  • 運動領域の例(中2・ボール運動ネット型・バレーボール):「誰もが攻防の楽しさや喜びを味わうために必要なことを考える」を単元の核に据え、10時間の学習活動の相互関連を示す
  • 保健の例(小5・心の健康):「統合的な理解」に向けた概念的知識と「総合的な発揮」に向けた課題解決過程を4時間で構造化して示す

5. 参考資料1:部活動改革に関する最近の動き

  • 令和7年改正スポーツ基本法・給特法により、部活動の地域展開に関する法的根拠が整備された
  • 令和8年度から「改革実行期間(前期:R8〜10)」がスタート。令和8年度予算として57億円(補正含む計139億円)を措置
  • 新たなガイドライン(令和7年12月)に基づき「認定地域クラブ活動」制度を構築。活動時間・休養日・参加費・指導体制・安全確保・学校連携等の要件を設定
  • 休日の地域展開は令和8年度予定で全部活動の約30.4%(38,954部)が対象見込み。平日は約1割弱(8,007部)にとどまる

現場視点の一般的な懸念

  1. 「余白の創出」と実質的負担の矛盾 小学校段階で具体的な運動名の列挙をやめ「どのような動きを意図するか」に切り替えるとされているが、これは個々の教師が自力で指導内容を解釈・構築する責任を背負うことを意味する。体育専科でない小学校教師には「余白」ではなく「解釈負担の増大」として機能するリスクが高い。指導参考資料で補完するとされているが、資料の量・質・アクセス可能性が担保されなければ、現場の指導格差は拡大する。
  2. 「高次の資質・能力」による評価の複雑化 「統合的な理解」「総合的な発揮」を内容のまとまりごとに設定し、これを評価規準に接続する構造は、教師が習熟するまでの学習コストが非常に高い。「内容のまとまりごとの評価規準例を国が示す」とされるが、それ自体が膨大な分量になるうえ、教師にはそれを読み解き授業設計に落とし込む時間的余裕がない。評価の形骸化と「評価規準の記載を埋めること」が目的化する危険性がある。
  3. 「運動との関わり方」の再整理に伴う指導の混乱 「公正・協力・責任・参画・共生・健康安全」を「学びに向かう力」から「知・技」中心に再整理することは概念的には整合的だが、現場で実際に「公正さに関する知識を教える授業」と「公正な態度を体育の中で体感する活動」の区別が曖昧になりやすい。従来の「態度主義的評価」への反省から生まれた改善だが、逆に形式的な「知識確認」へのすり替えが起きる可能性がある。
  4. 部活動・地域クラブ活動の「二重記載」と学校現場の責任の所在 学習指導要領に「部活動」と「地域クラブ活動」の双方を記載することで、学校は地域展開が進んでいない段階でも「地域クラブ活動との連携」を意識した教育課程編成を求められる形になりかねない。地域によって地域クラブ活動の整備状況に大きな差があるなかで、整備されていない地域の学校が記載との乖離に苦しむ事態が生じうる。
  5. 水泳授業の「持続可能な在り方」が地域格差を制度化する危険 プール老朽化・暑熱問題への対応として「社会体育施設との集約化・民間連携」が方策として示されているが、これを可能にする財政的・地理的条件は自治体間で大きく異なる。都市部と中山間地域・離島での学習機会格差が政策的に容認される形になりかねない。「全ての児童生徒の適切な学習機会が確保されることが必要」という記述と現実の施策間の矛盾が現場に押しつけられる。
  6. 「健康・安全」に関する学習の教科横断的展開と教師の調整コスト 健康・安全に関する学習は「学校教育活動全体で充実を図っていくことが重要」とされ、外部機関・専門家・地域資源の活用や探究的プロセスの導入も期待されている。しかし実際の授業調整・外部連携・探究設計の作業は担当教師(多くの場合体育教師または学級担任)に集中する。「期待される」という言語で書かれた推奨事項が、評価や学校訪問の際に「やっていないこと」として問題化される事態が繰り返されてきた経緯に留意が必要である。

現場視点の一般的な懸念を踏まえた改善提案

  1. 「余白の創出」に対応した段階的支援体制の整備 指導内容の解釈・構築を教師個人に委ねるのではなく、「動きの習得意図一覧」「領域別授業設計ガイド」等を国が先行的に整備し、指導要領告示と同時に公開することを義務化する。また都道府県・市区町村ごとに体育専科教師をコアとした「教科指導支援チーム」を設置し、非専科教師が相談できる体制を制度的に保障する。
  2. 評価規準の「学校ごとカスタマイズ」から「国提供の例示への準拠」への転換 「高次の資質・能力」に基づく評価規準を国が各領域・段階・内容のまとまりごとに具体的に提示し、学校はそれを援用または参考にする形式とする。教師が評価規準をゼロから作成する現行の実態を是正し、作成負担を軽減しつつ評価の標準化を図る。評価規準例の公表時期は教科書採択前を原則とする。
  3. 「運動との関わり方」の再整理に向けた教員研修の系統的実施 「公正・協力等の概念知識をどう指導し評価するか」について、具体的授業事例と評価場面を盛り込んだ動画教材・研修プログラムを中央研修レベルから都道府県・学校レベルまで段階的に整備する。特に小学校の非専科教師を主な対象とした「体育の資質・能力を育む授業入門研修」を制度化することを提案する。
  4. 学習指導要領の「部活動・地域クラブ活動」記載に地域整備状況の条件設定を付加 記載の充実にあたっては、「地域クラブ活動が整備されている場合には……を図ること」という条件付き表現を採用し、整備が進んでいない地域の学校が「地域クラブ活動との連携」を義務的に求められない形にする。同時に、整備状況の定期的な実態調査を国が実施し、地域間格差の可視化と財政的補正措置に接続する仕組みを設ける。
  5. 水泳授業の学習機会格差に対するナショナルミニマムの設定 「全ての児童生徒の適切な学習機会が確保されることが必要」という方針を実効化するために、水泳授業の最低授業時数・施設基準・安全確保基準を文科省が国として設定したうえで、基準を下回る地域への財政的支援措置(施設整備補助・民間施設利用費用補助等)を法定化する。「地域の実情に応じた対応」という文言が格差容認の免責に機能しないよう、格差縮小に向けた数値目標を設定することを提案する。
  6. 教科横断的な「健康・安全」の指導体制を「教師の善意」に依存しない仕組みに転換 保健・安全に関する教科横断的指導を学校に期待する場合は、年間指導計画作成の際にその調整作業を担うための「教科間調整時間」を公式に勤務時間として認め、調整担当者(保健主事等)の職務として位置づける。外部専門家・地域資源との連携コーディネートについても、コーディネーター人件費を公費措置する仕組みを整備し、「期待」から「保障」へと政策言語を転換することを求める。

教育課程部会 体育・保健体育、健康、安全ワーキンググループ(第10回) 配付資料
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/112/siryo/mext_00010.html

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