
戦後から現在まで、学習指導要領は社会の変化や教育論争に応じて繰り返し改訂されてきた。大きく4つの時代に整理できる。
① 誕生と系統学習期(1947〜1977年)
1947年 戦後直後、GHQの影響下で「学習指導要領一般編(試案)」が作成された。アメリカ進歩主義教育の影響を受けた経験主義・問題解決学習が基調で、法的拘束力のない「教師の手引き」にすぎなかった。
1958年 告示形式に変更され、初めて法的拘束力が付与された。スプートニク・ショック(1957年)を契機とする科学技術教育強化の世界的潮流を受け、系統学習を重視する方向へ転換。道徳の時間も新設された。
1968〜1970年 「教育内容の現代化」を掲げ、高度経済成長を支える人材育成の観点から数学・理科を中心に内容を大幅に高度化。いわゆる「詰め込み教育」の頂点にあたる。
② ゆとりへの転換期(1977〜1989年)
1977〜1978年 「過密なカリキュラム」「受験競争の激化」「落ちこぼれ問題」への批判を受け、授業時数を削減し「ゆとりと充実」を掲げた。「ゆとり教育」の起点となる改訂。
1989年 臨時教育審議会(臨教審)答申を受け、「個性重視」「自己教育力の育成」を基調とした改訂。小学校1〜2年生を対象とした生活科が新設された。
③ ゆとり教育の完成と揺り戻し(1998〜2008年)
1998〜1999年 「生きる力」を理念に掲げ、「総合的な学習の時間」を新設。授業時数・教育内容を大幅に削減し、2002年からの完全学校週5日制と合わせて「ゆとり教育」の完成形となった。
2003年(一部改訂) PISA2003の結果などを背景に学力低下論争が起き、発展的な学習内容を追加する一部改訂を実施。ゆとり路線は早くも修正を迫られた。
④ 脱ゆとりと資質・能力ベースへ(2008年〜現在)
2008〜2009年 「確かな学力」を掲げ、授業時数・教育内容を増加方向へ転換した「脱ゆとり」改訂。言語活動の充実やPISA型読解力・思考力への意識が強まった。
2017〜2019年 現行の学習指導要領。「何を知っているか」から「何ができるようになるか」へという発想の大転換が行われ、①知識・技能、②思考力・判断力・表現力、③学びに向かう力・人間性という「三つの柱」で資質・能力を整理した。主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)、カリキュラム・マネジメント、小学校における英語の教科化・プログラミング教育なども盛り込まれた。
2022年〜(高校) 高等学校では2022年度入学生から全面実施。「歴史総合」「地理総合」「公共」が新設され、「総合的な探究の時間」を中核とした探究科目が充実した。
改訂史から見える構造的問題
改訂のサイクルを俯瞰すると、「詰め込み批判→ゆとり導入→学力低下批判→内容復活」という振り子運動が繰り返されてきたことがわかる。その根底には、教育理念の転換が現場の実態や教員の働き方と十分に接合されないまま行われてきたという構造的問題がある。理念先行で改訂が重なる一方、それを担う教員の業務量・専門性・労働条件への手当ては後回しにされ続けてきた。


