
要約
本資料は、特定分野に特異な才能のある児童生徒(以下「特才児童生徒」)を対象とした特別の教育課程制度の取りまとめ骨子案である。
制度の基本構造は「2階建て」の発想に基づく。まず通常の教育課程(1階)で支援の可能性を検討し、それでも対応困難な児童生徒のみを特別の教育課程(2階)の対象とする。飛び級等の「完全早修」ではなく、在籍学年に留まりながら「部分早修」と「拡充」を組み合わせる方式を採用する。
対象活動は、算数・数学や理科など認知的側面に着目した高度な内容を想定し、大学の講義受講・個人探究・大学等が実施するプログラム参加などが例示されている。相当する教科等の授業時数を削減して対象活動に充てる仕組みで、A(総合的な学習の時間の代替)、B(各教科の代替)、C(その両方)の3パターンが示された。
実施機関は高等学校・大学・公的研究機関・博物館・一定要件を満たす民間団体等が想定される。指導計画はクラウドで関係者間共有することを原則とし、複数特例に重複する児童生徒のための統合様式「2階シート(仮称)」の国としての提示も検討される。
学習評価については、相当教科等の観点別評価・評定を維持しつつ、対象活動の成果を評価材料に参酌する方式を基本とする。入試対策を助長しないよう、指導要録本体への記載は行わず個別の指導計画の写しを別紙添付とする方向で検討されている。
対象児童生徒の判断プロセスは、日常的な見取りや心理検査(WISC等)によるアセスメントを経て、教育委員会と学校が相談支援体制(大学等によるプラットフォーム)を活用しながら総合的に判断する。
現場視点の一般的な懸念
① 担任教師への負担集中 指導計画の作成・改善・クラウド管理・実施機関との連携・学習評価・保護者対応が基本的に担任(及び教科担任)に課される。「過度な負担を避ける」との文言が繰り返されるが、具体的な業務軽減策は示されておらず、現行の通常業務との兼ね合いで形骸化するリスクがある。
② 対象判断の困難さと属人化 「特異な才能」の定義を意図的に曖昧にしていることは理念的には理解できるが、実際の判断は学校・教育委員会の裁量に委ねられる。WISCを含む心理検査の実施体制は自治体間で大きく異なり、判断の公平性や一貫性の確保が課題となる。特才の認定もなければ法的根拠も薄い中で、学校が「対象とする・しない」を判断する責任の重さは現実的に大きい。
③ 相談支援体制の整備見通しの不確かさ 制度の実効性は大学等によるプラットフォーム整備に強く依存している。しかし「当分の間は選択肢の提供」という表現にとどまり、全国均一なアクセスが保障される見込みは不明瞭である。地方の小規模自治体では実施機関の確保自体が困難であり、都市部との格差が拡大するおそれがある。
④ 入試対策防止策の実効性への疑問 指導要録への不記載や調査書への別紙不活用の方針は打ち出されているが、「調査書で別紙の内容も活用すべきではない」という要請に法的拘束力はない。大学・高校側への「一定の要請」という表現も実効性に乏しく、結果として特定の家庭・層が制度を活用する構造が生まれる懸念がある。
⑤ 学級内の関係性・包摂への影響 対象児童生徒が特定の時間に教室を離れることで、クラス内での孤立感・異質感が生まれるリスクは資料も認識しているが、具体的な対応策(他の児童生徒への説明、学級づくりの支援等)は明示されていない。「包摂的な学校文化の醸成」は目標として示されるが、その実現を誰がどのように担うかは曖昧なままである。
特別支援学校教諭の免許制度や教職課程、幼・小・中・高の教職課程における特別支援教育の在り方に係る方向性について:文部科学省 https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/124/mext_00005.html

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