「新たな評価」制度の在り方について(案)――学部ごとの段階別評価と認証評価制度の抜本的見直し

要約

本部会では、令和7年2月の中教審答申「我が国の『知の総和』向上の未来像」を踏まえ、現行の認証評価制度を抜本的に見直す「新たな評価」制度の骨格案が示された。

改革の背景と目的 現行制度は導入から約20年が経過し、内部質保証システムの定着は進んだ一方、「評価結果のわかりづらさ」「評価者・被評価者双方の負担感・徒労感」「学生の学びの改善への波及不足」の三点が課題として指摘されている。新制度は「質保証の徹底」と「質向上の促進」を両立させることを目的とする。

評価の構造 評価は「大学全体の評価」と「学部ごとの教育の質に特化した評価」の二層構造を採る。学部ごとの評価は「質保証の視点」(法令等で求められる水準への適合)と「質向上の視点」(学生の成長につながる取組と教育成果)の双方から行われ、結果は4段階(要改善/★/★★/★★★)で示される。

評価基準・項目 学部評価は4つの大区分(Ⅰ.養成する人材像・DPの策定・公表、Ⅱ.カリキュラム・教育環境体制、Ⅲ.学修成果の把握と評価、Ⅳ.不断の自己改善)のもと、7評価基準・15評価項目で構成される。

評価主体 「総合評価機関(仮称)」と「特定分野評価機関(仮称)」の二種を設け、後者(医・歯・薬・法曹養成・教員養成等)の評価は前者の学部評価の代替とする。評価機関には更新制を導入し、機関間の目線合わせのため共通ガイドライン・研修枠組み・年次報告を整備する。

評価結果の公表 データプラットフォームで一元公表し、学部ごとの段階・評価の具体的内容・関連情報(DP、学位分野、所在地等)を検索・ソート可能な形で示す。

現場視点の一般的な懸念

① 「★」表示の一人歩きと文脈の捨象 星三段階という視認性の高い評語は保護者・受験生向けの情報提供として機能する半面、評価の根拠となる教育の文脈・地域性・学部の多様な目的が捨象され、「格付け」として固定化されるリスクがある。とりわけ地方の小規模大学や特色ある職業人養成学部が、指標の設計次第で不当に低位置づけされる懸念は大きい。

② 自己点検評価書の作成負担の実態 「評価機関が評価するための追加資料の作成は基本的に求めない」と謳われているが、学部ごとに15項目の根拠資料を整備・記述することは、教員数が少ない小規模学部にとって相当の実務負担となる。現行制度で指摘されていた「徒労感」が形を変えて持続するリスクがある。

③ 「教育成果(アウトカム)」の測定可能性の格差 就職率・卒業生追跡・企業アンケートなど定量的なアウトカムデータを継続的に収集・分析できる大学と、そうした体制を持たない大学の間に評価上の有利・不利が生じる。体制整備のための追加コストが誰に帰するかが不明確である。

④ 「要改善」判定後のガバナンスの不透明さ 「質保証の水準を満たさない学部」に対して文部科学省が「ペナルティを含めた措置を検討」とされているが、改善期間・支援策・措置の水準・再評価の判断基準が現時点では素案に明示されていない。現場には、判定後の対応プロセスに対する予見可能性が低いまま制度が走り出すことへの不安がある。

⑤ 評価機関の「目線合わせ」の実効性 複数の評価機関が並立する中で、共通ガイドラインと研修による調整が謳われているが、評価員の判断の均質化は難しく、受審する学部によって事実上の評価基準が異なるリスクがある。受審大学側にとっては、どの機関を選ぶかが評価結果に影響する「機関選択問題」が発生しうる。

⑥ 「質向上の視点」評価の主観性 優れた取組と教育成果の「関連性を根拠をもって示す」ことが求められるが、その根拠の説得力の判定は評価員の裁量に大きく依存する。教育実践のナラティブが評価員の専門的関心と合致するかによって、同程度の取組でも評価が分かれる可能性がある。

質向上・質保証システム部会(第8回) 配布資料 :文部科学省 https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/055/giji_list/1422801_00018.html

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