_配付資料_2.png)
要約
令和8年7月17日に開催された科学技術・学術審議会学術分科会・人文学・社会科学特別委員会(第31回)の配付資料は、大きく二つの柱から構成されている。一つは、令和6年度から実施されている「人文学・社会科学のDX化に向けた研究開発推進事業」(デジタル・ヒューマニティーズ・コンソーシアム、通称DiHuCo)の進捗報告であり、文部科学省による事業概要、人間文化研究機構による中間報告、EY新日本有限責任監査法人による評価報告から成る。もう一つが、本委員会の実質的な審議対象である「人文学・社会科学の更なる発展のためのAI for Scienceに関する当面の施策の方向性(素案)」(資料2-2)であり、これに前回会合(第30回)の主な意見(資料2-1)と参考資料(AI for Scienceについての案)が付随している。
素案は、①人文学・社会科学を取り巻く現状(社会的役割の再評価、研究DX・DHの進展、AI for Scienceの拡大)、②AI for Scienceがもたらす可能性(質的研究の検証可能性向上、研究プロセスの高速化、創造性発揮、各分野への裨益)、③課題(透明性・信頼性、人材育成、データインフラ、研究体制・コスト、権利問題)、④今後の方向性(先進事例の共有、AI活用前提のデータ構築、ネットワーク構築、市民・地域資料の活用促進)という構成で整理されている。全体として、AIの活用が人文学・社会科学の研究の「本質」を変えるものではないという立場を繰り返し強調しつつ、課題認識自体は比較的丁寧に列挙されている点が特徴的である。特に、データインフラ構築者へのインセンティブの欠如(4.3)、共同利用・共同研究拠点の減少傾向(4.4)、権利問題対応体制の不備(4.5)など、構造的な問題を率直に指摘している点は評価できる。
一方で、「今後の方向性」(5章)に移った途端、これらの課題認識に対応する具体的な制度設計や予算的裏付けが乏しくなり、「重要である」「必要となる」という当為の表明に終始する傾向が目立つ。
現場視点の一般的な懸念
第一に、教育・人材育成の実効性に対する懸念がある。4.2では、人文学・社会科学の研究者がAIに関する知識を体系的に習得する環境が乏しく、学ぶべき内容も明確でないという課題が正面から指摘されている。しかし脚注に挙げられているのは東京大学大学院という一部の大規模大学における先行事例のみであり、地方大学や小規模研究機関に所属する研究者がこの恩恵をどう受けられるのかについての具体的な道筋は示されていない。
第二に、データインフラ構築に伴うインセンティブ構造の欠如である。4.3では、原資料の専門家が膨大なコストをかけてデータインフラを構築しているにもかかわらず、それに見合うインセンティブが働いていない現状が明記されている。これは極めて重要な指摘であるにもかかわらず、5章の「今後の方向性」では「業績として評価されることが必要となる」という理念の提示に留まり、科研費の審査基準や大学における教員評価制度への具体的な組み込み方策には踏み込んでいない。
第三に、研究体制の拡大とコスト増加への財政的手当ての不透明さである。4.4では、人文学・社会科学系の共同利用・共同研究拠点が減少傾向にあることを認めつつ、「時代の変化に即した研究環境整備、支援の枠組みが必要」と述べるにとどまる。DiHuCo事業自体も予算規模は前年度から横ばいの1億円であり、抜本的な財政強化とは言い難い。
第四に、権利問題対応の専門人材確保に関する具体性の不足である。4.5及び5.4では「権利問題支援人材」の集中的養成の必要性が述べられているが、養成主体、規模、配置先、雇用形態といった制度設計は白紙のままであり、市民・地域との信頼関係構築という、本質的に属人的で時間のかかるプロセスへの依存が前提とされている。
第五に、「先進的事例の蓄積と共有」(5.1)への偏重である。これは、大規模大学や中核的研究機関で生まれた成功事例を横展開するという典型的な政策手法であり、そもそも研究資源に乏しい地方・小規模機関がその事例を実践する原資(人員・予算・計算資源)をどう確保するのかという、規模間格差そのものを是正する視点が欠落している。
第六に、AI活用の目的・範囲設定の曖昧さである。6章「AIの進展に関わる今後の課題」では、AIと人間の関係、価値観・倫理、制度の再検討といった大きな問いが提起されているが、具体的な検討体制やスケジュールは示されておらず、抽象的な理念の表明で終わっている。資料2-1に見られる「AIの利活用により現物資料が軽視され、学問が衰退するとの意見がある」という前回会合での懸念に対しても、素案は「価値は変わらない」という応答を用意してはいるものの、現場の研究者が抱く不安に対する制度的な回答としては十分とは言えない。
改善提案
第一の懸念に対しては、東京大学の事例を単発のモデルケースとして放置せず、DHコンソーシアム事業が開発する教育プログラムを核として、地方大学・小規模研究機関向けのオンライン研修や出張講座を制度化し、そのための予算措置を今後の方向性に明記することを提案したい。
第二の懸念に対しては、「業績として評価されることが必要」という理念にとどまらず、科学研究費助成事業の審査基準や大学における教員業績評価(クロスアポイントメント制度を含む)に、データ構築・公開実績を明示的に組み込む制度設計を、文部科学省として具体的に検討し、次回以降の資料で提示することを求めたい。
第三の懸念に対しては、共同利用・共同研究拠点の減少の背景にある財政的要因を定量的に把握した上で、AI時代に対応した拠点機能強化のための予算措置(新規拠点整備や既存拠点への追加配分等)を、抽象的な「支援の枠組み」ではなく数値目標を伴う形で今後の方向性に明記すべきである。
第四の懸念に対しては、権利問題支援人材の養成を「仕組み・体制の構築が必要」という抽象論にとどめず、図書館情報学やアーカイブズ学における既存の人材育成基盤と連携した資格制度・キャリアパスの設計、及び大学・自治体への配置予算の確保を具体化することを提案する。
第五の懸念に対しては、先進事例の収集・共有と並行して、小規模大学・地方機関への計算資源やデータインフラ整備予算を重点的に配分する財政措置を、規模間格差の是正策として明確に打ち出すべきである。
第六の懸念に対しては、6章で提起された人間観・倫理・制度に関する問い直しを次期委員会等への漠然とした先送りとせず、恒常的な検討の場(分科会またはワーキンググループ)の設置時期を本素案の段階で明記し、資料2-1に示された現場研究者の懸念(学問の本質が損なわれるのではないかという不安)に対して、単なる理念的な応答ではなく、継続的にフィードバックを受け止める制度的な回路を構築することを提案したい。
人文学・社会科学特別委員会(第31回) 配付資料
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu4/siryo/1421468_00003.htm
このコンテンツはAIによって生成されました。内容の真偽についての保証は致しかねます。必ず一次ソースにあたってご確認ください。

_1-380x300.png)
_議事録_1-380x300.png)