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要約
本議事録は、令和8年4月20日に開催された中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会芸術ワーキンググループ第8回の審議内容を記録したものであり、「芸術系教科・科目の資質・能力の育成等について」を主題として、論点1(学習評価の在り方)、論点2(ICT活用の在り方)、論点3(資質・能力の構造化を踏まえたさらなる検討)の3点が扱われている。
論点1では、総則・評価特別部会での議論を踏まえ、形成的評価の充実と総括的評価の精選という方向性が示された。具体的には、題材や単元ごとに全ての観点で記録に残す総括的評価を行うことを前提とせず、複数の題材・単元・区分でまとめて総括的評価を行うことも可能とする案、および「学びに向かう力、人間性等」の評価に関して、学びに向かう力の3要素(初発の思考や行動、学びの主体的な調整、対話と協働)が思考・判断・表現の過程で表出した場合に「○」を付記するという新たな仕組みと、その着眼点となる「見取る姿」(仮称)が各教科等ごとに提示された。音楽、図画工作・美術・工芸、書道それぞれの「見取る姿」イメージ案が示され、委員からは総じて形成的評価充実の方向性への賛同が寄せられた一方、「見取る姿」と従来の評価規準との違いの説明可能性、および評定への反映プロセスの複雑さについて複数の懸念が表明された。
論点2では、GIGAスクール構想による1人1台端末環境を踏まえ、ICT活用が知識・技能の習得にとどまらず思考を広げ深めることや、感性・創造性の涵養に資するべきとの方向性が示された。あわせて、生成AIを含むICTの適切な活用、知的財産の保護と活用に関する指導の充実が論点として提起され、音楽・図画工作美術工芸・書道それぞれの具体的活用イメージ(リコーダー演奏の可視化、アイデアスケッチの相互鑑賞、デジタルアーカイブ活用等)が例示された。
論点3では、教育課程企画特別部会の提案を受け、構造化・表形式化された学習指導要領を単元・題材計画作りにどう活用するかの参考イメージが、小学校音楽・中学校美術・高等学校書道の各教科について具体的に提示された。また教科書の在り方については、掲載教材の精選と、歌唱・器楽を組み合わせるなど柔軟な学習構成を可能にする構成上の工夫の方向性が示された。
現場視点の一般的な懸念(6項目)
第一に、「見取る姿」(仮称)と既存の評価規準との関係性が現場教師にとって判然としないという懸念が繰り返し表明された。原委員は、これまで評価規準に基づいて児童生徒の姿を見取り指導助言を行ってきた実践との違いをどう説明すべきか整理がついていないと述べ、加藤眞太朗委員および加藤泰弘委員も同様に、評価規準と「見取る姿」の相違が現場に大きな戸惑いを生じさせる可能性を指摘している。抽象度の高い記述から教師ごとに異なる子供の姿をイメージしてしまう懸念(大泉委員)も、この不透明性を裏づけるものである。
第二に、「○」付記の評定への反映経路が複雑で、教師・生徒・保護者いずれにとっても説明が困難になるという懸念がある。加藤眞太朗委員は、資料内の図が「見取る姿」を個人内評価として評定に反映させない矢印と、思考・判断・表現の評価につなげる矢印の両方を示しているように読め、実際の運用において矛盾を生じさせかねないと指摘した。
第三に、複数の題材・単元・区分をまとめて総括的評価を行うという改善策自体が、必ずしも教師の負担軽減につながらないとの指摘がある。稲委員は、この方式が形成的評価充実の観点からは効果的である一方、長いスパンで資質・能力の育成をデザインし児童生徒の実態に応じて計画を修正しながら指導するという、むしろ専門性を要する高度な業務になると述べている。
第四に、新たに提示された題材・単元計画書の様式が、現行の学習指導案のフォーマットと大きく異なり、現場教師にとって理解や活用のハードルが高いという懸念である。山内委員・新井委員・加藤泰弘委員はいずれも、従来の学習指導案(単元名、目標、評価規準、指導観等の構成)に慣れた教師にとって新様式は新規性が高すぎ、かつ授業デザインの画一化を招く恐れがあると指摘した。
第五に、教科書の内容精選が、教材としての資料的価値や生涯学習を支える情報量の縮小につながるのではないかという懸念がある。水戸委員および山内委員は、高等学校の教科書等に見られる豊富な内容が、精選の名の下に失われることへの危惧を表明している。
第六に、ICT・生成AIの活用推進と、芸術教育が本来重視する身体性・体験基盤との緊張関係、およびそれに伴う教員の知的財産権指導等の専門性向上の必要性に対する懸念である。新井委員は、身体的な体験基盤が乏しい児童生徒ほど生成AIの誤った出力を無批判に受け入れるリスクが高いと指摘し、大泉委員は知的財産の保護と活用に関する指導の充実を掲げる一方で、そのための教員研修機会の充実が不可欠であるとした。
改善提案(現場視点の懸念を踏まえて)
第一の懸念に対しては、「見取る姿」と評価規準との関係性を明文化した解説資料またはQ&A集を学習指導要領解説の改訂と同時に整備し、両者が「同一の評価基準」ではなく「思考・判断・表現の過程を見取るための着眼点」であることを、具体的な授業場面の事例とともに周知徹底する必要がある。特に、教育委員会主催の研修等を通じて、抽象度の高い記述を現場の授業実践レベルに翻訳する機会を制度的に確保することが望まれる。
第二の懸念に対しては、「○」付記から個人内評価・観点別評価・評定・指導要録の総合所見欄に至る一連の情報の流れを、単一の明確なフローチャートとして学習指導要領解説等に明示し、保護者向け説明用の簡易資料もあわせて作成することが有効と考えられる。運用開始前にモデル校等での試行を行い、混乱が生じやすい接続点(特に個人内評価と観点別評価の境界)を洗い出しておくことも重要である。
第三の懸念に対しては、複数題材・単元をまとめた評価計画を実際に作成する際の思考プロセスを示した実践事例集を、教科・校種別に整備し、あわせて教科書会社と連携した年間指導計画モデルの提供を進めることで、教師個人の力量に依存しない形での運用を支援すべきである。ポートフォリオ評価やデジタルツールの活用など、具体的な負担軽減策(大泉委員が言及した方策)を制度的に後押しする環境整備も並行して検討されたい。
第四の懸念に対しては、新たな題材計画書の様式を「必須のフォーマット」としてではなく、あくまで一つの参考例として提示し、現行の学習指導案との対応関係(単元名⇔題材名、単元設定の理由⇔教材観・児童生徒観・指導観等)を明示した対照表を併せて公開することが望ましい。加えて、経験の浅い教師と経験豊富な教師とで求める情報量や活用の仕方が異なることを踏まえ、複数のバリエーションを用意することも一案である。
第五の懸念に対しては、教科書の「精選」が内容の一律な削減を意味するのではなく、必修部分と選択的に活用できる参考・資料部分とを構造的に区別する構成上の工夫であることを、教科書検定基準や編集の手引き等において明確化する必要がある。これにより、生涯学習の基盤としての教科書の資料的価値を損なうことなく、授業で扱う分量の調整を可能にする両立策が図られる。
第六の懸念に対しては、学習指導要領本文またはその解説において、ICT・生成AIの活用推進と並行して、身体性を伴う体験活動とのバランスを取ることを明記した文言を加えることが求められる(新井委員の提案に沿うものである)。あわせて、知的財産権や生成AIの適切な利用に関する指導力を教員が習得できるよう、教科横断的な研修プログラムを整備し、情報・技術科など関連教科との連携体制を制度的に構築することが必要である。
中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会芸術ワーキンググループ(第8回)の議事録を掲載しました
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