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要約
第190回大学分科会では、5つの議題が扱われた。第一に、医学部臨時定員(地域枠・研究医枠)の措置を令和9年度まで1年間暫定延長する大学設置基準等の改正が諮問された。第二に、教育・学習の質向上に向けた新たな評価の在り方ワーキンググループによる「新たな評価」制度の構築案が報告された。これは現行の機関別認証評価・分野別認証評価を統合し、評価対象を「学部等」に置き、4段階の段階別評価(要是正・★・★★・★★★)を導入するもので、データプラットフォームを大学改革支援・学位授与機構に設置し、AI活用を含めた評価業務の効率化を図る。評価サイクルは6年を基本とし、「要是正」評価を受けた機関には学部新設不可等の制度的措置を含む厳格な対応を行うとされる。
第三に、大学の量的規模適正化総合施策及び高校から大学・大学院等を通した人材育成システム改革ビジョンが報告された。18歳人口が2034年度まで100万人を維持した後、2040年度までの6年間で74万人へ急減するとの推計を踏まえ、2026〜30年度を第Ⅰ期、2031〜35年度を第Ⅱ期とする「大学の量的規模適正化総合施策」を講じる。具体的には、首都圏・大都市圏の大規模私学に対する人文・社会科学系学部のダウンサイジングと理工・デジタル分野への展開(私学助成の厳格化・重点化)、設置認可の厳格化、経営体力があるうちの円滑な撤退の慫慂(経営指導対象校を100校程度に拡大)、地域における医療・福祉・産業・インフラ人材を育成する大学への重点支援などが盛り込まれた。理工農・デジタル系学部の定員を2040年までに2万人増やし、大規模私学の理工農・デジタル・保健系定員を5割に高める方針も示された。
第四に、第7期科学技術・イノベーション基本計画を踏まえた「新しい時代の科学技術人材に関する基本政策」が報告された。
現場視点の一般的な懸念
第一に、「新たな評価」制度は機関全体評価と学部等別の段階別評価という二重構造を新設するものであり、既存の自己点検・評価活動に加え、ディプロマ・ポリシー等の再検証作業が全学部等に求められる。資料では「徒労感」解消やデータプラットフォームによる負担軽減が強調されているが、移行期には旧制度と新制度の評価サイクルが並走する可能性があり、現場の実質的な負担増となりうる。
第二に、4段階の段階別評価(特に「要是正」の指定)は、学部新設不可等の制度的不利益と直結するため、評価結果が単なる改善指標としてではなく、大学の存続そのものに関わる圧力として機能する懸念がある。とりわけ「教育成果」の可視化が、単年度や個別教職員の取組に依存しないものであることを要求している点は、評価のための継続的なエビデンス収集・記録作業を現場教員に新たに課すことになりかねない。
第三に、人文・社会科学系学部のダウンサイジングと理工・デジタル分野への転換を促す施策は、私学助成の「厳格化・重点化」という財政的レバレッジを伴う。これにより、当該分野に所属する教職員・学生にとっては、自らの専門分野が政策的に「縮小対象」と位置づけられることへの不安や、転換を迫られる学部における教育研究体制の急激な再編に伴う混乱が生じうる。
第四に、地方大学の将来推計(青森県の事例)に見られるように、地域大学の縮小・撤退シナリオが具体的な大学名・学部名を挙げて分析されている。こうした分析が「経営体力があるうちの撤退慫慂」という政策と結びつくことで、地方の教育機会全体の縮小が、現場の努力や工夫では覆せない構造的な既定路線として進行することへの危機感が生じる。
第五に、「成長分野転換」関連の基金・コンソーシアムなど新組織が多数設置されているが、これらは大規模大学を主な対象としており、中小規模大学・地方大学の現場が、こうした支援スキームへのアクセスや申請対応のための体制を新たに整備する負担を負う可能性がある。
第六に、評価機関による学位分野別ピア・レビュー体制の構築には、評価員の確保・研修等の準備期間が必要であり、これまで以上に大学教員が評価員として動員される可能性が高い。教育・研究時間を圧迫する「評価のための労力」が、形を変えて現場に戻ってくる懸念が拭えない。
改善提案
第一に、新旧評価制度の移行期間における評価サイクルの重複を避けるため、現行の機関別・分野別認証評価の受審サイクルと「新たな評価」初回受審の時期を明示的に調整し、移行スケジュールを早期に公表すべきである。
第二に、「要是正」評価による制度的措置(学部新設不可等)の運用にあたっては、評価から是正までの猶予期間や支援措置(改善計画策定への専門家派遣等)を制度上明確に位置づけ、評価結果の通知が現場に「断罪」としてではなく「支援を伴う改善プロセスの起点」として受け止められるよう設計すべきである。
第三に、人文・社会科学系学部のダウンサイジングを促す施策においては、対象学部の教職員に対する配置転換・研究継続支援・リスキリング機会を、転換促進策と同時並行で具体的に提示し、財政的レバレッジのみに依存しない移行支援策を講じるべきである。
第四に、地方大学の縮小・撤退シナリオの分析・公表にあたっては、当該地域の高校・自治体・住民に対する説明と意見聴取のプロセスを制度化し、トップダウンの再編が地域の教育アクセスの実態を十分に反映したものとなるよう、地域構想推進プラットフォームにおける議論の透明性を高めるべきである。
第五に、成長分野転換基金等の新規支援スキームについては、大規模大学向けの「伴走支援」と並行して、中小規模・地方大学が利用可能な簡素化された申請枠組みを別途設けるべきである。
第六に、学位分野別ピア・レビュー体制の構築にあたっては、評価員としての従事が教員の本務(教育・研究)に対する負担増とならないよう、評価員活動を業績評価上正当に位置づける仕組みや、評価業務に対する対価・代替リソースの措置を検討すべきである。
中央教育審議会大学分科会(第190回)の配布資料を掲載しました
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/siryo/mext_00011.html
