
要約
令和8年4月24日開催。中央教育審議会生涯学習分科会「社会教育の在り方に関する特別部会」の第17回会議。主な議題は以下の2点。
議題①:社会教育主事・社会教育士養成等WG審議情報報告
青山主査(文教大学)より、昨年11月から5回実施したWGの中間報告。主な内容は次のとおり。
- 単位数の維持:社会教育主事・社会教育士ともに現行8単位を維持。二階建て構造への移行は見送り、一体的カリキュラムとして再設計する方針。
- 講習の受講しやすさ向上:オンライン・土日夜間対応の促進、単位互換・分割履修の拡充、国委託講習の継続。
- 導入的講習の創設:主事講習の手前に、より平易・短期間の「導入的講習」を位置づけ、裾野拡大と受講接続の橋渡しとする。一部は単位認定との代替も検討。
- 受講資格の見直し:他分野の実務経験を新たな受講資格として追加、導入的講習修了者への受講門戸開放を検討。
- 社会教育士の活躍の場拡充:公民館主事をはじめ施設職員・指定管理者スタッフへの称号取得推奨、ネットワーク構築。
- 養成課程の検討継続:講習と並行して養成課程の見直し、教員免許改革との連動(教員の「強み・専門性」として社会教育的要素を位置づけ)を今後の課題とする。
議題②:答申骨子修正案(資料2)への意見交換
「地域コミュニティの基盤を支える今後の社会教育の在り方」答申骨子(修正意見)について、神山総括官より説明後、多数の委員が発言。主な論点は次のとおり。
- 「地域コミュニティの機能低下」「家庭の教育機能の低下」といった表現の見直し(柏木委員)——かつてのコミュニティが持っていた差別・統制性への省察が必要。
- 社会教育士の専門性として、コーディネート・ファシリテーション・プレゼンテーションのスキル論を超えた、マインドセット・人権感覚・課題設定能力・当事者意識醸成支援力・伴走力の重要性(関・古賀・小見・金澤・杉野・小田切各委員)。
- 社会教育士の制度的位置づけとして、法律への明記、登録制度、自治体行政との連携仕組みの構築(神山総括官・青山委員)。
- 公民館の役割として、ユニバーサルな居場所・学習拠点としての機能維持と、専門職配置の課題(司書・学芸員との非対称性)(小見・東・関・青山各委員)。
- 多文化共生・外国人住民との相互理解を実質化する記述の強化(八木委員)。
- 地域学校協働活動・コミュニティ・スクールとの連携深化、探究学習との接続(安齋・柏木・小見・清原各委員)。
- 子供・若者・青少年を社会教育の「対象」だけでなく「主体」として明記すべき(清原部会長)。
- 大学における社会教育研究との往還関係の制度化(牧野副部会長)。
現場視点の一般的な懸念
- スキル化・技術化による空洞化の危険 コーディネート・ファシリテーション・プレゼンテーションという三能力が10年以上並列提示されてきた結果、技術的習熟が目的化し、「なぜ・何のために」というマインドセットや社会教育固有の学習観が後退する傾向が現場でも指摘されている。講習カリキュラムを再設計しても、評価可能な技術習得が優先される構造が変わらなければ同じ問題が再生産される。
- 「導入的講習」の質保証と単位認定の整合性 導入的講習を多様な主体・形式で全国展開することは裾野拡大に有効だが、内容・水準・認定基準が不明確なまま単位代替に接続されれば、称号の信頼性を損なうリスクがある。国レベルの統一基準の不在と地域格差が同時に生じうる。
- 受講資格緩和と現職実務者の学習時間確保の矛盾 受講資格の門戸を広げても、公民館主事や社会教育関係職員が業務中に講習を受講できる制度的・財政的保障(自己啓発休暇の実質化、業務扱い化)がなければ、資格取得の機会は依然として時間的余裕のある層に偏る。制度設計と勤務条件改善が連動していない。
- 公民館専門職配置義務化の困難と「コミセン化」加速のジレンマ 専門職配置を義務づければ公民館をコミュニティセンターへ転換・廃止する自治体が増加するという現実的リスクが委員間で共有された。義務化・推奨・インセンティブのいずれの方向性を選んでも現場への影響は大きく、財政力の弱い自治体ほど対応困難になる。
- 社会教育士の認知度・キャリア価値の低さが取得動機を阻害 「キャリアにつながらないからキャリコンを取る」という実態が報告されたように、資格の社会的認知・就労市場での評価が低い現状では、いかに講習を改善しても取得者増に直結しにくい。称号の法的位置づけや自治体での活用仕組みが整備されなければ、制度の外形整備だけが先行する。
- 答申骨子の「機能低下」言説が現場実践者を疎外するリスク 「地域コミュニティの機能低下」「家庭の教育機能の低下」といった表現は、共働き家庭や地域活動から離れた住民を問題視する眼差しを内包しており、社会教育の現場で支援対象となるべき人々を逆に遠ざける可能性がある。骨子の書きぶりが現場職員の実践姿勢にも影響を与えることへの配慮が不足している。
現場視点を踏まえた改善提案
答申言語の転換:「欠如モデル」から「潜在的資源モデル」へ 「機能低下」「当事者意識の低下」ではなく、「人口構造や経済環境の変化の中でも地域課題に向き合おうとする人々の実践が各地で芽吹いている」という資源・可能性の言語に書き換える。社会教育の使命を「補修・補完」ではなく「人々の学びと地域の変革を媒介するプロセス支援」として積極的に定義し直すことで、現場実践者の専門性と誇りを支える政策言語をつくる。
専門性の再定義:「マインドセット先行・スキル後付け」の明示化 講習カリキュラムにおいて、三能力を「前提的技術」ではなく「社会教育的学習観・人権感覚・当事者意識醸成の実践的表現」として位置づけ直す。評価基準も技術習得度だけでなく、省察記録・実践ポートフォリオ・対話型の相互評価を組み込む。
導入的講習の質保証フレームの先行整備 単位代替への接続を認める前に、国が「導入的講習認定基準(最低限の内容要件・時間数・実施体制)」を策定し、認定機関のリスト化と公開を行う。デジタルバッジと連動した透明な単位互換記録の仕組みを先に整備することで、称号の信頼性と裾野拡大を両立させる。
受講条件整備を人事・勤務制度改革と一体で推進 社会教育関係職員が講習を「業務の一環」として受講できるよう、任命権者向けの通知・指針を強化するとともに、国委託講習の実施機関に勤務時間配慮の要件を設ける。都道府県教育委員会が広域的なOJT・現職研修と講習を連結するモデル(北海道事例の横展開)を補助金スキームに組み込む。
公民館専門職化は「義務」でなく「段階的インセンティブ」方式で 一律義務化ではなく、社会教育士称号保有者を配置した公民館への交付税算定上の加算措置や補助率優遇を設けることで、財政力の弱い自治体でも自発的に専門職配置を選択しやすくする。廃止・コミセン転換への歯止めとして、社会教育機能の維持を公の施設の設置基準に明記することも合わせて検討する。
社会教育士のキャリアパス可視化と法的地位の明確化 称号を「告示規定資格」として法律に位置づけ、欠格条項・更新研修・登録制度を整備することで、採用・委嘱時の評価基準として機能させる。市町村アカデミー・JIAMなど総務省所管の職員研修機関との連携を制度化し、一般行政職員や首長部局担当者が社会教育士講習にアクセスしやすい環境をつくることで、行政内部での認知度を高める。
第17回社会教育の在り方に関する特別部会の議事録を掲載致しました。
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo2/015/gijiroku/1422152_00019.htm

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