令和7年度 英語教育改善プラン(全都道府県・政令指定都市版) (文部科学省、2025年7月〜8月公表)

要約

本文書は、文部科学省が各都道府県・政令指定都市に提出させた「令和7年度英語教育改善プラン」を一冊に集約したものである。全47都道府県および20政令指定都市(札幌市・仙台市・さいたま市・千葉市・横浜市・川崎市・相模原市・名古屋市・京都市・大阪市・堺市・神戸市・岡山市・広島市・北九州市・福岡市・熊本市・静岡市・浜松市・新潟市)が対象で、小学校・中学校・高等学校の3校種別に様式が設けられている。

各プランの共通構成は以下の通りである。

目標設定:校種ごとに数値目標を掲げる。中学校・高校はCEFRレベル到達割合(例:中学校でCEFR A1相当以上を〇〇%に引き上げる)、小学校は言語活動の充実や英語への積極的態度の育成を目標とすることが多い。

現状と要因分析:①改善が進んだ点と❶未だ改善が必要な点を峻別して記述する。改善が進んだ例としては、ICTを活用したティーム・ティーチングの拡大、家庭学習でのICT活用の定着、英語使用割合の増加などが挙げられる。課題としては、CEFR到達割合の低下・伸び悩み、教員の英語力(特に地方圏でのCEFR B2以上の取得率の低さ)、言語活動の形骸化、4技能5領域のアンバランス(特に「話すこと〔やり取り〕」の不足)、小中連携の地域間格差などが共通して指摘される。

施策・事業:課題に対応する形で都道府県独自の施策が記載される。共通して多く見られる施策は以下のとおりである。

  • 教師の英語力・指導力向上研修(文部科学省の実践的オンライン研修への参加促進を含む)
  • ALTとのオンライン交流体制の整備(広域・遠隔地対応)
  • 指導と評価の一体化推進(パフォーマンステストの充実)
  • ICT・生成AIを活用した言語活動の推進
  • 特別受験制度(外部英語検定試験の受験機会確保)の周知
  • 小中・中高の校種間連携の強化

現場視点の一般的な懸念

① 数値目標の達成圧力と形式化のリスク CEFR到達割合という定量目標の設定は分かりやすい反面、外部検定試験の「受験促進」が目的化しやすい。受験指導的な対策に重点が置かれ、真の言語運用能力の育成とは乖離した指導になるリスクがある。特に受験会場が遠隔地に限られる地域では、受験機会の格差が結果の格差に直結する構造的問題が残る。

② 教員の負担増と研修機会の確保困難 文部科学省のオンライン研修受講、特別受験制度による自身の英語力向上、ALTとの調整、ICT・生成AI活用の習得——これらが同時並行で求められる。高校の要因分析に「校務や部活動等を理由に研修時間が確保できない」と明記されているように、研修の必要性は認識されているが構造的な時間確保が追いついていない。施策として「周知・促進」を重ねるだけでは改善は難しい。

③ ALTの活用と質の担保 オンラインALT交流は遠隔地の課題に対する現実的な解ではあるが、対面コミュニケーションとの質的差異は検討されているか。また、ALT参画の「理解に差がある」「授業者主導になりやすい」という現状認識が複数自治体から上がっており、ALTの役割設計と日本人教員との協働に関する具体的な指導が伴わなければ形骸化しやすい。

④ ICT・生成AI活用の「目的化」 生成AIとの会話練習やライティング添削への活用は、技術的には有効な手段でありうる。しかし、「ALTが常駐していない学校の代替」として位置づけられていることは、本質的な問題(ALT配置の不均衡)の棚上げになりかねない。ICTをコミュニケーション指導の手段として位置づける設計が確立されないまま導入が進むと、機器操作が目的化する。

⑤ 小中連携の形骸化と人事異動問題 複数自治体が「人事異動によって連携体制の再構築が必要になる」と明示的に記述している。年度単位での教員異動が前提である現行の人事制度と、学校区単位での継続的な小中連携構築は構造的に相性が悪い。研修や協議の場を設けても、担当者が変わるたびにゼロベースに近い状態に戻りやすい。

⑥ 改善プラン様式の全国一律化による地域課題の平準化 199ページにわたる本文書は、様式の統一によって全都道府県・政令市の比較が可能になる一方、各地域の固有の文脈(産業・観光資源との接続、外国人児童生徒の多様性など)が捨象されやすい。「全国に横並びの課題認識」が先行し、地域の実態に根差した改善策の発案を阻む可能性がある。

令和7年度英語教育改善プラン:文部科学省
https://www.mext.go.jp/a_menu/kokusai/gaikokugo/1418086_00010.htm

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