中学校・高等学校教員養成の見直し(案)について 中央教育審議会初等中等教育分科会 教職課程・免許・大学院課程ワーキンググループ 中学校・高等学校作業部会(令和8年4月23日)

要約

本報告は、中学校・高等学校の教員免許取得に必要な養成課程の構造を再編する案を示したものである。主な見直し内容は以下の通り。

①教科指導法と専門的事項の一体化 学習指導要領に即して「各教科の指導法」と「教科に関する専門的事項」を一体的に学ぶ構造に改める。両者の配分は大学の裁量とする。また、従来の教科専門科目の一部を新設の「強み専門性」(20単位)へ移行させることを前提に、必要最低修得単位数を圧縮する(現行59単位→見直し案36単位+強み専門性20単位=計56単位)。

②一般教養としての「体育」の扱い変更 免許法施行規則第66条の6に基づく「体育」を一般教養科目としては位置付けない。代わりに、健康教育に関連する「適応力・回復力・自己管理能力」についての学修内容を今後検討する。

③特別支援に関する学修単位の扱い 「特別の支援を必要とする幼児、児童及び生徒に対する理解」について、中学校・高等学校免許状において2単位必要かどうかは他の作業部会の状況をふまえて今後継続検討とする。

④高等学校固有の事項 高等学校免許状の基礎資格要件の変更なし。教育実習の単位数変更なし(3単位維持)。


現場視点の一般的な懸念

1. 「強み専門性」の実態と質保証 20単位を「強み専門性」として大学の裁量に委ねる設計は、大学間の内容格差を拡大させるリスクがある。採用側の学校・教育委員会が強み専門性の中身を評価・比較する基準が整わないまま運用が始まれば、採用判断の混乱や、免許の実質的価値の低下につながりかねない。

2. 指導法と専門的事項の一体化による教科理解の浅化 指導法と専門的事項を一体的に扱う構造に移行すると、教科内容そのものを深く学ぶ機会が縮小する恐れがある。特に中学校・高等学校では、教科の専門的知識の厚みが授業の質に直結するため、「指導法の文脈でのみ教科を学ぶ」形式では、内容理解の深度が不十分なまま教壇に立つ教員が増加する懸念がある。

3. 特別支援教育に関する学修の後退 特別支援に関する2単位の扱いを「継続検討」としていることは、インクルーシブ教育の推進という政策方向との矛盾をはらむ。通常学級における発達障害等のある生徒への対応は現場の喫緊課題であり、単位数の縮小・削除は現場負担の増大に直結する。

4. 「適応力・回復力・自己管理能力」の学修内容の曖昧さ 「体育」の位置づけ変更に伴い代替として挙げられた能力概念は、現時点で学修内容・評価基準ともに未確定である。養成段階での心身のウェルビーイングに関する学びは重要だが、概念だけが先行して実質的なカリキュラムが伴わない状態で制度化されると、各大学での対応が形骸化するリスクが高い。

5. 総単位数圧縮による現場対応力への影響 見直し案では実質的な必修単位数が圧縮されるが、現場が教員に求めるスキルセットは増加・多様化し続けている(ICT活用、生徒指導、カリキュラム・マネジメント等)。養成段階での学修量の削減が、採用後の OJT や研修への依存をさらに高め、多忙化が進む学校現場の負担増につながることへの懸念は拭えない。

中学校・高等学校作業部会報告:文部科学省 https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/127/siryo/1360150_00001.htm

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