
要約
本資料は、次期学習指導要領改訂に向けた芸術系教科・科目(音楽、図画工作・美術・工芸、書道)に関する審議資料であり、以下の三つの論点を中心に構成されている。
論点1:学習評価の在り方
評価の抜本的見直しが提案されている。現行の「主体的に学習に取り組む態度」の目標準拠評価(ABC)を廃し、「学びに向かう力・人間性等」を教育課程全体を通じた「個人内評価」に改める。代わりに、「思考・判断・表現」の評価過程において「学びに向かう力の3要素」(初発の思考・行動、学びの主体的な調整、他者との対話や協働)が継続的に発揮された場合に「◯」を付記する新方式が提案されている。評定への総括を学年末のみとすることを可能にし、学期中は形成的評価を重視する方向性も示された。芸術系教科では、題材・単元ごとに全観点の総括的評価を行うことを前提とせず、複数単元にわたってまとめて評価することを促す方向が示された。
論点2:ICT活用の在り方
GIGAスクール構想による端末整備が一定程度進んだ現在、「ツールとしての利用」にとどまらず、感性・創造性の涵養に資する活用を目指すことが基本方針として提示された。音楽では演奏の可視化・創作アプリ活用、図工・美術では映像メディア表現や相互鑑賞への活用、書道ではデジタルポートフォリオや書の美の鑑賞への活用イメージが示されている。生成AIを含むICTの活用を前提としつつ、発達段階への配慮と知的財産教育の充実も求めている。
論点3:資質・能力の構造化と教科書の在り方
前回までに整理した資質・能力の構造化を、単元・授業づくりのプロセスに落とし込む可視化の方策と、教科書の在り方についての更なる検討が課題として掲げられている。
現場視点の一般的な懸念
①「◯」付記の運用負担と評価の形骸化リスク 「思・判・表」に「◯」を付記するための「見取る姿(仮称)」は、「各学校がそのまま活用可能なもの」を国が示す方針だが、実際の授業観察の中で「継続的な発揮」をどの程度・どのタイミングで確認するかの基準が現場には不明瞭である。形式的な評価材料集めを回避するという趣旨は理解できるが、逆に判断根拠が曖昧になることで、評価の客観性・保護者への説明責任を問われた際の担任負担が増大しかねない。
②評定の学年末一括化に伴う中学3年生・高校入試対応の矛盾 資料自体が「高校入試との関係上、中学校3年生は2学期までの評定が必要」という課題を認識しており、解決策は「引き続き検討」とされている。現場では入試・進路指導と評価の制度設計のズレが直接的な問題となるため、改訂が先行し実務対応が後追いになる構造に対する懸念は大きい。
③ICT活用の「質的転換」と教師の専門性・設備格差 「ツール利用にとどまらず感性・創造性の涵養に資する活用」という方向性は高い理想を掲げているが、それを実現できる授業設計力は、ICT研修の蓄積や設備環境によって学校間・地域間で大きく異なる。「活用イメージ」として示された具体例は充実しているものの、それを実際に授業で展開するための教師側の指導技術と機材・ネットワーク環境の整備が追いついていない学校では「活用のための活用」に陥るリスクがある。
④芸術系教科固有の評価困難性への対応の不十分さ 資料は「制作過程の評価が難しく完成作品のみから評価する現状」を課題として指摘しているが、改善策は「一連の過程で見取ることを重視」という方向論にとどまっている。実際に週1〜2時間の中で、複数生徒の制作プロセスを継続的かつ記録可能な形で観察・評価することの困難さへの具体的な解決策は示されておらず、現場の教師には「正論だが、どうやって実現するのか」という疑問が残る。
⑤「見取る姿(仮称)」の学年別・段階別明確化の遅れ 「見取る姿(仮称)」は学習指導要領改訂後に速やかに示すとされており、現時点ではイメージ例のみの提示である。改訂後に別途示されるとなると、移行期間中の対応が不透明なままとなり、各校が年間指導計画や評価計画を立て直す際のタイムラインが極めてタイトになる懸念がある。
教育課程部会 芸術ワーキンググループ(第8回)配付資料:文部科学省 https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/113/siryo/mext_00008.html

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