中央教育審議会 初等中等教育分科会 教育課程部会 理科ワーキンググループ(第8回) 令和8年4月13日開催

要約

本資料は、次期学習指導要領改訂に向けた理科ワーキンググループ(全8回)の取りまとめ骨子案(イメージ)を中心に構成されており、理科教育全体の改善の方向性、目標・見方・考え方、内容改善、指導・評価の充実、高等学校共通教科「理数科」の改善、そして新設が検討される「科学ガイダンス(仮称)」の具体的な内容案が示されている。

現状の課題認識として、①日本の科学的リテラシーは国際的にトップクラスを維持しているものの、理科への興味・関心・有用感・将来志向が低く、学校段階が上がるほど低下する傾向、②学校種間での学習内容・用語・分野区分の不統一、③理工系進学者の少なさ(大学学部生のうち理工系はOECD諸国ワースト2位圏の17%)と男女格差、④学習環境・機器整備の地域間格差、⑤ICT活用の格差、が挙げられている。

改善の方向性として主に以下が提示された。

  • 目標・見方・考え方の統一:小・中・高で教科の目標と分野区分(物理・化学・生物・地学の4分野)を統一し、一貫性・系統性を確保する。「自然科学的な視点」という表現に改め、クリティカル・シンキングを重視した見方・考え方を加える。
  • 新設学習内容「理科と日常生活(仮称)」(小学校):特定分野に限定できない分野横断的な科学的社会課題(エネルギー・環境等)を学ぶ内容を小学校に新設。
  • 新設学習内容「科学ガイダンス(仮称)」(中・高):「科学とは何か」「探究の過程と検証方法」「研究倫理」「理科の学習と社会・研究とのつながり」を体系的に学ぶ内容を中学・高校の各基礎科目に位置付ける(高校4~5コマ程度目安)。
  • 高等学校の必履修選択肢の追加:従来の①「科学と人間生活(2単位)+○○基礎(2単位)1科目」または②「○○基礎(2単位)3科目」に加え、③「科学と人間生活(4単位)」を新設し、カリキュラム編成の柔軟性を拡大。
  • 共通教科「理数科」の改善:STEAM的・文理横断的な課題の充実、探究指導の困難に対する国による先行事例の周知、大学等が組織的に連携できる窓口整備の推進。
  • ICT活用の推進:デジタル学習基盤(1人1台端末)を前提とした活用を深化させつつ、地域・学校間の格差解消に向け国が好事例を積極的に普及させる。
  • 探究の過程の用語統一:小中高で「課題の把握・検証・解決」という探究の過程の用語・構造を整理・統一。
  • 単元計画づくりの参考イメージの提示:「高次の資質・能力」を活用した単元構想のプロセスを、デジタル学習指導要領と連動させる形で教師向けに可視化・提供する方針。

現場視点の一般的な懸念

① 内容増加による授業時数の圧迫 「科学ガイダンス(仮称)」や「理科と日常生活(仮称)」など新設内容が加わる一方、資料は「総授業時数を増加させないことが前提」と明記している。既存内容の精選・削減が具体的にどの単元から行われるか次第では、現場の指導が窮屈になる恐れがある。特に小学校では担任が理科を担当するケースも多く、指導内容の増加は負担に直結する。

② 「科学ガイダンス」の指導担当者と評価の困難 科学の本質・研究倫理・疑似科学の見分け方など、文脈依存性が高く正解のない内容を通常の科目担当教師が適切に指導・評価できるかは疑問が残る。ペーパーテストでの評価が難しい内容であり、評価規準の設定や指導観の統一には相当の研修・支援体制が必要となる。

③ 学校間・地域間のICT環境格差の未解消 骨子案はデジタル学習基盤を前提とした深い学びを想定しているが、センサー等の実験機器整備が「十分でない学校が見られる」とされる現状は変わっていない。端末があっても周辺機器・ネットワーク・教師スキルの三拍子がそろわなければ、学校間格差がそのまま指導格差・学力格差に転化するリスクがある。

④ 探究的な学びと基礎知識習得の両立 資料自体が「探究的な学びは基礎的・基本的な知識・技能の習得・定着を前提とする」と注記している。しかし現場では、探究活動に時間を割けば知識定着が不十分になり、定着を優先すれば探究の時間が消えるというジレンマが常に生じる。この緊張関係に対する具体的な解決策(単元設計の型や時数目安)がより明確に示されないと、指導観が割れたままになりうる。

⑤ 理工系進学の男女格差解消策の実効性 アンコンシャスバイアスの解消や女子の理系進路支援が方針として掲げられているが、それらはいずれも中長期的・社会文化的な変容を要する課題であり、授業改善のみで達成できる性質ではない。学校・教師への期待が過大になりすぎないよう、役割範囲の明確化が求められる。

⑥ 大学・外部機関連携の体制整備の現実性 理数探究の深化に向けて大学等との連携が推奨されているが、連絡窓口の一元化や学部生・大学院生の活用など、大学側の組織的対応体制の構築は学校側ではコントロールできない。地方や小規模校が連携先を確保できるかどうかは地域格差に直結する問題であり、国の具体的な仲介・支援策が不可欠である。

教育課程部会 理科ワーキンググループ(第8回) 配付資料:文部科学省 https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/111/siryo/mext_00007.html

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