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要約
第9回部会では、新たな評価の在り方ワーキンググループ(森朋子主査)が約1年間・12回の議論を経てまとめた「議論のまとめ」について、事務局(鈴木大学設置・評価室長)から説明がなされ、委員による質疑・意見交換が行われた。
新制度の骨格は、現行の機関別認証評価(7年)・分野別認証評価(5年)を統合し、学部等を評価単位とする新評価へ転換する点にある。評価は「質保証の視点」(法令適合性等、4方針・7基準・15項目)と「質向上の視点」(教育成果=直接評価・間接評価・社会からの評価を総合勘案)の二軸で行われ、結果は要是正・星1~3の4段階評価として、6年サイクルで実施される。教育成果の評価はディプロマ・ポリシー(DP)に掲げる資質・能力の達成度を中心に据え、各大学はDPの再検証を求められる。
評価の実施体制としては、大学改革支援・学位授与機構にデータプラットフォームを設置し、データ入力・閲覧支援・公表の3機能を持たせることで大学側の負担軽減を図るとともに、実地調査の必須化を緩和する。評価主体は学位分野別のピア・レビューを基本とし、総合評価機関と特定分野評価機関(医学分野のJACMEなど)を並行設置する。要是正と判定された機関には学校教育法に基づく厳格な対応(勧告・変更命令・閉鎖命令等)を検討する。
委員からは、(1)直接評価・間接評価という概念の分かりにくさ(田中委員、松下委員による直接・間接評価と自己・他者評価の区別の整理)、(2)国立大学法人評価との重複・評価負担軽減の具体策(松下委員)、(3)「新たな評価」と「新たな認証評価」の用語の違い(松下委員)、(4)要是正後の改善プロセスの具体像(松下委員)、(5)評価対象数(学部約2,640、年間約400件)に対する評価者の供給見込み・待遇の未整理(濱中委員、松浦委員)、(6)教育成果の定義が正課教育に限定されている点と課外活動等の扱い(松居委員、松下委員、太田委員)、(7)成績評価インフレのリスク(田中委員)、(8)評価機関間の「調整組織」の位置付け(田中委員、メタ評価ではないとの回答)、(9)費用負担増・地方大学や小規模大学への影響(松尾委員)、(10)高校・受験生への分かりやすい説明と単純な序列化への懸念(日吉委員、太田委員、小林委員)など、多岐にわたる論点が提起された。事務局は多くの点について「今後検討」「引き続き詰める」と回答するにとどまり、具体的な数値・財源・待遇等の制度設計は次フェーズの課題として残された。
現場視点の一般的な懸念
- 評価単位の細分化による負担増と財源不在:機関別から学部単位評価への移行により評価件数が大幅に増加する一方、評価者の確保・育成・処遇についての具体策が示されておらず、濱中委員が指摘したように、現行の評価者謝金水準(責任者1校1万円程度等)のままでは「大学教員の善意と持ち出し労働」に依存する制度になりかねない。
- 概念の専門性と現場理解のギャップ:「直接評価・間接評価・社会からの評価」という教育成果評価の中核概念は、田中委員が指摘した通り、教育評価の専門家以外の一般教員には理解が困難であり、定義・具体例の明示なしに新制度を導入すれば、教育成果の可視化において混乱が生じるおそれがある。
- 既存評価制度との重複・整理不足:国立大学法人評価(特に現況分析)との機能重複が認識されているにもかかわらず、どの部分を統合・代替するのかが明確化されておらず、「評価負担軽減」の実感が伴わない可能性がある。
- 教育成果の定義の狭さと形骸化リスク:教育成果がディプロマ・ポリシーに紐づく正課教育中心の定義にとどまっており、課外活動・準正課活動(部活動、留学、インターン等)を通じた成長が十分に評価対象に組み込まれない場合、評価が大学の実態とずれ、形骸化につながる懸念がある。
- 段階別評価・資源配分連動による萎縮効果と公平性リスク:星評価や要是正という明確な序列化が、資源配分や厳格な対応(勧告・変更命令・閉鎖命令)と連動することで、大学側の防御的・委縮的な対応(成績評価インフレ、駆け込み受審等)を誘発するおそれがあり、また異議申立てプロセスやサンクションの透明性が未整備なまま厳格化が進めば、信頼性を損なうリスクがある。
- 社会・高校側への伝達不足による単純なランキング化:星評価が偏差値同様の単純な大学・学部のランク付けとして独り歩きする懸念があり、評価結果の背景にある「どのような力を伸ばせるか」という質的情報が高校生・保護者に届かなければ、かえって画一的な進路選択を助長しかねない。
改善提案
高校・保護者向けの説明資料と段階別評価の補足情報を制度化する:星評価・要是正の結果を公表する際、なぜその評価になったのか、どのような力を伸ばせる教育が行われているかを示す説明文をセットで公表することを必須とし、単純な序列化ではなく多様な学びの方向性を伝える情報設計を、評価結果公表の様式自体に組み込む。
評価者の処遇・供給体制を制度設計と同時に数値化して示す:学部数(約2,640)・年間評価件数(約400)の推計を踏まえ、必要評価者数、研修体制、謝金水準を制度開始前に具体的に試算・公表し、ボランティア依存を前提としない持続可能な報酬体系を予算要求段階から組み込むべきである。
直接評価・間接評価等の中核概念を図表化したガイドラインとして別途整備する:専門用語の定義集や評価軸の関係図(直接/間接評価と自己/他者評価の違いを含む)を、自己点検・評価書作成のための実務マニュアルとして全大学に配布し、研修プログラムと連動させる。
国立大学法人評価等との具体的な代替・統合表を作成し公表する:どの評価項目が新評価でカバーされ、現況分析等のどの部分が削減されるのかを一覧化し、「重複解消によって実際にどれだけ負担が減るか」を可視化することで、現場の負担軽減実感を担保する。
教育成果の定義に課外・準正課活動の特記事項枠を設ける:DPに紐づく正課教育の達成を評価の基本としつつ、松下委員の提案のように、DP以外の教育成果(部活動、留学、ボランティア等)を任意で記載・承認できる仕組みを設け、大学教育の実態をより正確に反映できるようにする。
要是正後のプロセスと異議申立て手続きの透明性を制度開始前に明文化する:改善状況の確認から厳格な措置(勧告・変更命令・閉鎖命令)に至るまでの判断基準・期間・再審査の回数を事前に明確化し、性善説に頼らないインテグリティ基準とサンクションの透明性を担保することで、評価される側の予見可能性を高める。
質向上・質保証システム部会(第9回)議事録
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/055/giji_list/1422801_00024.html
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