
要約
1. 日本人学生の海外留学者数
JASSO調査(中短期・大学把握分) 2024(令和6)年度の日本人学生海外留学者数は91,054人(前年度比1,875人・2.1%増)となり、増加は続いているが増加率は鈍化している。
留学期間別では、1か月未満の短期留学が60,301人(前年度比5.7%増)と増加した一方、それ以外の期間別留学者数はいずれも減少している。
主な留学先はアメリカ合衆国(12,627人、6.6%減)、オーストラリア(9,329人、1.8%増)、韓国(8,360人、0.3%減)。地域別ではアジア諸国が36,904人(7.0%増)と最多で、北米は19,363人(8.4%減)に落ち込んだ。
ユネスコ・IIE等統計(長期留学・海外機関把握分) 2023年統計によると、長期留学者数は50,139人(前年比2.3%増)。主な留学先はアメリカ合衆国(13,959人、13.0%減)、台湾(9,888人、35.0%増)、中国(6,140人、13.3%減)。
2. 外国人留学生数
2025(令和7)年5月1日現在の外国人留学生数は408,069人(前年度比71,361人・21.2%増)となり、前年度に続き過去最大を更新した。
在学段階別では、専修学校(専門課程)が106,829人(39.8%増)、日本語教育機関が140,174人(30.7%増)と特に大幅増。大学(大学院・短大含む)は156,593人(5.2%増)。
出身国別では中国131,097人(6.2%増)、ネパール100,239人(54.7%増)、ベトナム43,366人(7.5%増)の順で、南西アジア圏(ネパール・ミャンマー・スリランカ・バングラデシュ)からの受入れが急増した。
現場視点の一般的な懸念
① 「短期化」する日本人留学の実質的価値 留学者数の増加の実態は1か月未満の短期留学の急増によって支えられており、1か月以上の留学はすべての期間区分で減少している。語学運用能力の向上や異文化への深い適応が見込まれる中長期留学が減少し続けているにもかかわらず、総数の「回復」として政策的に肯定的に語られる構図には注意が必要である。留学の質的変容が数値に隠蔽されている。
② 北米離れとその背景への無関心 アメリカ合衆国への留学が短期・長期ともに顕著に減少し、北米全体でも8.4%減という大きな落ち込みがある。コスト高・安全懸念・円安等の構造的要因が背景にあると考えられるが、本資料ではその分析は一切なく、数値の羅列にとどまる。費用負担の問題は経済的に不利な立場の学生にとって留学機会の格差を直接的に意味するが、その視点は欠落している。
③ 外国人留学生急増の「量」偏重と質保証の空洞化リスク 外国人留学生が1年で7万人超増加し40万人を超えたことは、表面上は「国際化」の前進として評価されうる。しかし増加の中心は専修学校(専門課程)と日本語教育機関であり、増加率はそれぞれ39.8%・30.7%に達する。文部科学省は「在籍管理の徹底」「質の向上」を方針として掲げるが、急増への対応の実務は学校現場・都道府県に委ねられる構造になっており、受入れ体制の整備が数の増加に追いついているかどうかの検証はこの資料からは読み取れない。
④ ネパール・南西アジア急増の構造的背景への言及なし ネパールからの留学生が1年で35,000人超増加し10万人を超えたことは、単なる留学動機によるものではなく、労働移動・就労目的と留学制度の交差という複合的な社会現象として理解すべきである。しかし本資料はその社会的文脈を一切示さず、「多様で優秀な留学生の確保」という政策言語で括っている。現場の教育機関が直面している日本語指導・生活支援・就労管理の実態と、政策文書の記述との間に大きな乖離がある。
⑤ 経済安全保障の観点の唐突な登場 大学・高専における外国人留学生受入れ方針として「経済安全保障の観点に留意」という文言が盛り込まれているが、具体的にどの国籍・専攻・研究分野を対象とするのかは明示されていない。現場の教育機関にとって、入学審査や指導において何をどう「留意」すればよいのかが不明確なまま責任だけが転嫁される可能性がある。
「日本人学生の海外留学状況」及び「外国人留学生の在籍状況調査」について
https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/ryugaku/1412692_00003.htm


の配付資料を掲載しました_1-380x300.png)