
要約
本ワーキンググループ(第7回)では、高等学校の次期学習指導要領改訂に向けて、専門高校(産業教育)を中心とした以下の二つの議題について事務局説明と意見交換が行われた。
議題(1)職業に関する各教科における柔軟な教育課程の編成について
総則・評価特別部会で検討が進む「高等学校単位制の大幅な柔軟化」の方向性を前提として、専門高校における具体的な適用の在り方を検討。主な内容は以下の通り。
- 科目の柔軟な組み替え:必履修科目を含む既存科目の内容を一部または全部、他の科目に移行・統合することを一定の要件のもとで可能とする方向。要件は①元の科目の目標の趣旨を損なわないこと、②教育課程全体として同様の成果が期待されること、③カリキュラム・ポリシーとの関連で趣旨・内容を公表・説明すること、の三点。専門高校においては、組み替えが「専門教科全体の学びをより系統的・体系的または実践的・探究的なものとする」ことを追加配慮事項として解説に示す方向。
- 単位計算方法の見直し:現行「50分×35コマ=1単位」を「50分×17コマ=1新単位」へ細分化(半期単位化)。専門高校では、水産・看護・福祉・自動車整備等の国家資格養成施設規則と高校の単位計算の整合性について関係省庁との調整が必要。
- 減単の在り方:共通教科での原則不可から、一定限度内であれば可能とする方向に転換。専門教科は従来どおり学習指導要領解説に「想定単位数」として幅を持たせる形を踏襲する方向。
- 科目の履修免除・振替:英語・数学の必履修科目を対象に外部試験(CEFR対応試験、数学外部試験)を活用した免除制度を先行導入する方向で検討。振替先は同教科の上位科目・学校設定科目・学校外学修とし、免除科目と同単位数の修得を要件とする。
- 学校設定教科・科目の単位数上限の拡大:普通科28単位・その他普通教育を主とする学科36単位へ引き上げることを念頭に検討。
- 週当たり授業時数の標準(30コマ)廃止:生徒の余白確保の観点から標準を示さない方向。
- 質確保の仕組み:国・都道府県・学校の三層での実態把握、指導・助言体制、HPでの公表義務を設ける方向。
議題(2)職業に関する各教科における学習評価の在り方について
こちらも総則・評価特別部会の議論を前提とした専門高校への適用に関する検討。主な内容は以下の通り。
- 「学びに向かう力・人間性等」の評価の実質化:従来の「目標準拠評価(ABC)」から、教育課程全体を通じた「個人内評価(総合所見欄記載)」と、思考・判断・表現の観点別評価に「◯」を付記する形に移行。「◯」は、「初発の思考・行動」「学びの主体的な調整」「他者との対話・協働」の3要素について、評価期間を通じた「継続的な発揮」を見取ることができた場合に付記。
- 「◯」の評定への影響:「◯」は独立した評価観点として評定を直接左右するものではなく、「思・判・表」と一体的に勘案した結果として評定に影響し得る(例:知・技B、思・判・表Bの場合、「B◯」なら評定4か5の総合的判断)。
- 「高次の資質・能力」の取扱い:直接の評価対象とはせず、教師が単元構想や「深い学び」のデザインに活用するツールと位置づける。
- 学習評価プロセスの整理:「記録に残す評価」の精選、評定頻度の見直し、生成AIを含むICT活用の可能性も含め、シンプルで指導改善に直結するプロセスを再構築する方向。
現場視点の一般的な懸念
①「組み替え」の要件判断を誰が、どのように行うのか
科目組み替えの可否は要件①〜③に基づくとされているが、「目標の趣旨を損なわないこと」「同様の成果が期待されること」という判断は高度な専門的知見を要する。学校現場の教師が通常業務の中でこれを適切に判断・文書化できるか疑問が残る。実質的には、組み替えを行おうとする学校の担当教師に膨大な準備負担がかかることが予想される。
②関係資格規則との調整が「今後」のままでは実施見通しが立たない
水産・看護・介護福祉士・自動車整備士など、国家資格養成に直結する専門高校では、教育時間・単位数の要件が関係省庁の規則で別途定められている。今回の資料では「関係省庁と調整を図っていく必要がある」にとどまっており、調整が実現しなければ該当学科では新単位制を事実上導入できない。施行前に確実な調整完了が保証されなければ、学校現場は不安のまま準備を進めることになる。
③「1新単位=17コマ」化による実務上の複雑さ
卒業要件が「74単位→148新単位」と倍増することで、時間割編成・単位認定・成績管理システムの改修が必要になる。特に既存の校務支援システムへの対応や、3学期制校での運用イメージはまだ十分に具体化されていない。「3学期制でも対応可能」とはされているが、その具体的な時間割モデルが示されない限り現場の不安は解消されない。
④「◯」付記の運用が結局、新たな記録負担に転化しないか
「学びに向かう力」を「継続的な発揮」で見取るとされているが、校内での客観性・公平性確保の観点から、個々の教師が根拠の記録を蓄積するよう求められる事態は十分に想定される。「◯なし」とした判断の説明責任が生じた際、現場教師が「形式的な証拠集め」に走る可能性は、制度設計の意図と裏腹に排除できていない。「評定に影響し得る」と整理されたことで、保護者・生徒から「なぜ◯がつかなかったのか」という照会が増えるリスクもある。
⑤履修免除制度の「先行実施」が受験準備と切り離せない問題
英語・数学の必履修科目を外部試験で免除し、上位科目や学校設定科目に振り替えるという制度は、高校入学前から特定の外部試験に向けた準備を行える層(塾・教育投資に余裕のある家庭)に有利に機能する可能性がある。免除制度の導入が、実質的に「早期受験塾化」を助長しないかという教育機会の公平性の観点からの検証が必要である。
⑥質確保の仕組みが「事後チェック」偏重である点
国・都道府県・学校の三層での質確保が設計されているが、研究開発学校での先行事例が蓄積される前に制度が施行された場合、現場は試行錯誤を余儀なくされる。「不適切な運用があった場合に是正を図る」という事後的な管理体制は、生徒・保護者にとっては「実験台にされた」という結果を招くリスクをはらんでいる。事前の丁寧な研修・伴走支援体制の整備が、制度の実効性を左右する。
教育課程部会 産業教育ワーキンググループ(第7回) 配付資料:文部科学省 https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/106/mext_00019.html

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