
要約
本資料は、次期学習指導要領改訂に向けた国語科の検討内容をまとめたもので、大きく二つの議題から構成される。
議題①「知識及び技能」の整理
現行の〔知識及び技能〕を二つの側面に再編することが提案されている。「⑴各領域の学習の過程で生かし深める事項(仮称)」(側面①:思考・判断・表現の過程で繰り返し働かせる知識・技能)と、「⑵各領域の学習を支え文化的な知識や態度、教養として深める事項(仮称)」(側面②:文化的知識・態度・教養の習得を目的とする知識・技能)の二層構造への移行が中心的な方向性である。整理の手法としては、事項の「分割・統合」「系統化」「明確化」の三パターンが示されており、小・中・高等学校を通じた縦断的な系統性の確保が重視されている。また、これらの事項を「事項のまとまり(仮称)」として構造化して示す方針も提示された。
議題② 高等学校国語科の科目の在り方
現行(平成30年改訂)の選択科目構成(論理国語・文学国語・国語表現・古典探究、各4単位)について、単位数の多さが時間割編成上の制約となり、「国語表現」(履修率16%)や「文学国語」(49%)が選択されにくい構造的問題が顕在化していることが課題として整理された。改善の方向性として、現行の選択科目群を「標準科目」(現代の国語Ⅱ・言語文化Ⅱ、各4単位)と「発展科目」(論説と批評・対話と表現・文学と叙述・古典と文化、各2単位)に再編することが提案されている。論理的思考力と感性・情緒の育成を二項対立に陥らずバランスよく統合する設計が基本方針とされており、「話や文章の機能(仮称)」という枠組みによって各科目の資質・能力を整理する。
現場視点の一般的な懸念
「事項のまとまり」の構造化が教員の授業設計を複雑化するリスク 〔知識及び技能〕の二側面への再編は理念的な整理としては理解できる一方、「側面①か②か」の判断が教員に委ねられる場面では、個々の解釈のばらつきが生じやすい。告示文・解説書がどこまで具体的に示すかによって、現場での受け止めは大きく異なる。
「系統化」「明確化」による指導内容の増加懸念 現行では特定の校種や科目にのみ示されていた内容を小・中・高に系統的に再配置する「系統化」パターンは、指導事項の実質的な増加を招く可能性がある。精選と構造化が同時に進められるとしても、授業時数の増加なしに内容を拡充することへの現場の負担感は看過できない。
選択科目再編にともなう移行期の混乱 現行の論理国語・文学国語等からの移行において、教員の専門性・教材研究の蓄積・大学入試との対応関係が一時的に宙に浮く。特に「発展科目(2単位)」は新設科目であり、教科書の整備・教員研修・入試科目としての位置づけが整うまでのタイムラグが懸念される。
「国語表現」的な内容の実質的な保障 現行の国語表現の低履修率(16%)は、大学入試との接続が弱いことが主因とされているが、新設の「対話と表現(仮称)」が同じ構造的問題を引き継がないか注視が必要である。科目名が変わっても、進学指導上の優先順位が変わらなければ、選択率の改善は見込みにくい。
読書離れへの対応と授業内の現実 参考資料として示された読書時間・不読率のデータは深刻であるが、「読書習慣の形成」を学校教育の中で実現するためには、授業時間外を含めた学校全体の取り組み(学校図書館の活用、司書との連携等)が不可欠である。国語科の授業内だけで解決できる問題ではなく、現場では人員・施設・時間のいずれにおいても制約が大きい。
メディアリテラシーの「国語科化」への負荷 SNSやYouTubeをニュース源とする若者の実態やオンライン情報の信頼性確認率の低さが課題として示されているが、これらへの対応を国語科が中心的に担う方向性は、すでに多くの指導事項を抱える国語教員にとってさらなる負荷となりうる。教科横断的な対応の枠組みを整備しない限り、現場への過剰な期待になりかねない。
教育課程部会 国語ワーキンググループ(第9回) 配付資料:文部科学省 https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/107/siryo/mext_00009.html

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