_議事録_1.png)
要約
令和8年6月22日にオンライン開催された共同利用・共同研究拠点等に関する作業部会(第13期第11回)では、今回から会議が公開され253名という異例の参加規模となる中、ネットワーク型拠点2件(物質・デバイス領域共同研究拠点、生体医歯工学共同研究拠点)からの現場ヒアリングを通じて、政策側が期待する「機能強化の基本的方向性」と、実際に拠点を運営する現場の実感との間に複数の齟齬が浮かび上がった。本稿ではその構造を、5つの懸念点として整理する。
会議はまず、本年3月末に取りまとめられた「共同利用・共同研究拠点等の機能強化の基本的な方向性」を具体化するための今後の論点整理から始まった。事務局からは、拠点の3カテゴリー分類に応じた予算支援、認定基準の明確化、ネットワーク型拠点特有の評価の在り方、そして拠点の新陳代謝促進という4本の柱が示された。これを受けて行われたのが、物質・デバイス領域共同研究拠点(大阪大学産業科学研究所ほか5研究所、教職員1,232名、17年間で8,159件の共同研究実績)と、生体医歯工学共同研究拠点(東京科学大学・広島大学・静岡大学の4研究所連携)からの発表である。
両拠点とも、ネットワーク化がもたらす異分野融合の効果や人材・設備の共有によるスケールメリットを具体的な数値とともに強調した一方、質疑応答の過程で、ネットワーク運営に固有の構造的な負荷や、制度設計が単独拠点を前提としたまま十分に更新されていない実態が繰り返し指摘された。とりわけ注目すべきは、両拠点がともに「ネットワーク型拠点独自の評価指標を導入してほしい」と要望したのに対し、事務局はいったん「ネットワークに特化した観点も入れて評価している」と回答したものの、長谷部委員の重ねての質問により、実際の中間評価運用では共同利用・共同研究拠点とネットワーク型拠点が同一の専門委員会・同一の評価軸で並べて審査されている実態が明らかになった点である。要項上の記載と現場が体感する評価の運用実態との間に、この場で初めて可視化された乖離が存在する。
会議後半では、第5期中期目標期間開始に向けた期末評価・新規認定の実施方針が議論された。前回(令和6年度)の中間評価では78拠点中B・C評価がゼロという結果であった一方、新規認定では共同利用・共同研究拠点への申請9件に対して認定はゼロ件、国際拠点は申請10件に対し採択2拠点にとどまるなど、新規参入の間口の狭さも改めて浮き彫りになっている。
現場視点の一般的な懸念
懸念①:評価制度における「言明」と「運用実態」の乖離 事務局は評価要項上「ネットワーク型拠点に特化した観点」を組み込んでいると説明する一方、実際の中間評価では単独拠点とネットワーク型拠点が同一の専門委員会・同一の評価軸・共通の相対評価枠の中で審査されている実態が委員の質問によって初めて明らかになった。制度上は対応していることになっているが、現場(拠点運営者)が繰り返し訴える「新規性・挑戦性を単独拠点と同じ基準で評価しないでほしい」という要望は、実質的にはまだ制度設計に反映されていない。
懸念②:ネットワーク運営に伴う「見えないマネジメントコスト」の構造的過小評価 物質・デバイス領域共同研究拠点からは、大学間の予算移算手続きや調整会議など、目に見えないマネジメントコストが中核機関に集中し、その負荷が単独拠点の数倍に達するとの指摘があった。認定経費の配分方式(教員数に応じた係数に上限を設ける算定方法)は、こうした管理負荷を十分に補償する設計にはなっていない。
懸念③:予算規模と活動規模の乖離、とりわけ国際化・若手支援の実効性の低さ 生体医歯工学共同研究拠点の説明では、国際共同研究支援(渡航費相当)が実勢費用にすぐ届かず、多くを大学側の「持ち出し」で賄っている実態が示された。若手支援も1件あたり10万〜15万円という少額にとどまり、拠点側の裁量的な工夫と自己負担に依存する構造となっている。
懸念④:融合分野特有の「論文になりにくい成果」が評価指標に反映されにくい構造 生体医歯工学のような臨床実装志向の融合分野では、論文数や特許数といった従来型の指標では、デバイス開発の進捗など拠点の実質的な貢献を十分に捉えられないとの指摘があった。ただし、これに代わる具体的な代替指標は本会議では示されず、課題認識の共有にとどまっている。
懸念⑤:新規認定の低い採択率と「拠点の新陳代謝促進」という政策目標との緊張関係 資料1で掲げられた新陳代謝促進の方向性に対し、前回の新規認定では共同利用・共同研究拠点への申請9件に対し認定ゼロ件という結果であった。新規参入のハードルの高さが、新陳代謝を促すという政策目標と実質的に逆方向に作用している可能性がある。
現場視点の一般的な懸念を踏まえた改善提案
提案①:評価結果の区分別公表による運用の可視化 評価要項上の「ネットワーク特化の観点」を、専門委員会の合議評価・相対評価の集計段階においても区分して可視化し、単独拠点とネットワーク型拠点それぞれの評価結果を分けて公表する仕組みを導入する。これにより、要項上の言明と実際の運用との乖離を制度的に是正できる。
提案②:マネジメントコストの定量把握と認定経費算定式への反映 中核機関が負担する調整・管理コストを把握するための簡易調査を実施し、認定経費の算定式に「ネットワーク運営管理費」に相当する加算項目を新設することを検討する。
提案③:国際化・若手支援予算の弾力的執行ルールの導入 国際共同研究支援や若手支援の予算単価を渡航実勢費用に応じて見直すとともに、拠点間・年度間での重点配分や繰越を可能にする柔軟な執行ルールを導入し、現場の「持ち出し」依存を軽減する。
提案④:融合分野向け中間的成果指標の明文化 論文・特許以外に、デバイス試作段階への到達、企業との共同開発件数、多機関間の人材交流実績など、融合分野特有の中間的な成果指標を評価観点として明文化し、専門委員会の評価者間で共通理解を図るための説明資料を整備する。
提案⑤:新規認定における事前相談窓口とフィードバック体制の強化 不採択となった申請施設に対する審査結果のフィードバックを制度化するとともに、申請前の事前相談窓口を設置し、新陳代謝促進という政策目標と新規参入のハードルとの間の緊張関係を緩和する。
共同利用・共同研究拠点等に関する作業部会(第11回) 議事録
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu4/054/gijiroku/1417785_00020.html


