【現場視点】令和9年度文部科学省 概算要求等の発表資料一覧

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要約

本資料は、文部科学省が令和8年8月28日付で公表した「令和9年度文部科学省 概算要求等の発表資料一覧」であり、大臣官房、総合教育政策局、初等中等教育局、高等教育局、科学技術・学術政策局、研究振興局、研究開発局、スポーツ庁、文化庁など省内各局が同時に取りまとめた令和9年度(2027年度)概算要求関連資料一式へのリンク集である。中核となるのは「令和9年度概算要求のポイント」で、文教関係予算は5兆7,360億円+事項要求(令和8年度予算額4兆5,981億円)、科学技術予算は2兆4,453億円+事項要求(同9,863億円)と、いずれも前年度から大幅な増額要求となっている。

内容は大きく三つの柱で構成される。第一の柱「質の高い公教育の再生」では、改正義務標準法に基づく公立中学校35人学級の計画的整備を含む定数改善計画(令和9年度分7,539人、令和8~10年度累計24,605人)の着実な推進、教職調整額の計画的引上げなど教師の処遇改善、学校における働き方改革の加速化(173億円)、「高等学校教育改革交付金(仮称)」の創設(事項要求)、GIGAスクール構想の更なる推進としてのAI活用環境整備(887億円)、そして令和12(2030)年度からの「デジタルな形態を含む教科書」導入に向けた環境整備(25億円)が挙げられている。デジタル教科書については、令和8年度の制度改正を起点に著作編集・検定・採択を経て令和12年度に導入するスケジュールが示され、令和9年度は実証研究校での授業実践や都道府県教育委員会向け研修の伴走支援等を通じた先行事例の創出が中心となる。あわせて、不登校・いじめ対策(校内外教育支援センターの機能強化等122億円)、特別支援教育の充実(医療的ケア看護職員配置の拡充等)、外国人児童生徒等への教育・日本語教育の推進(「秩序ある共生社会の実現に向けた日本語教育支援総合パッケージ」113億円+事項要求、前年度31億円から大幅増)、学校給食費の抜本的な負担軽減(1,656億円)など、誰一人取り残されない学びの保障に関する施策も幅広く盛り込まれている。

第二の柱は高等教育・研究力強化である。国立大学法人運営費交付金は1兆2,512億円(うち増額分1,554億円)、高専(KOSEN)の機能強化には891億円(前年度631億円)が計上され、成長戦略17分野を中心とした教育カリキュラムの高度化、KOSENの国際標準(KIS)運用や海外展開の推進、老朽化に対応する基盤的経費の増額(92億円増)と先端設備整備(120億円増)が示されている。私立大学等経常費補助(3,297億円)では、理工農・デジタル系人材育成や地域を支える人材育成への重点支援を強化する一方、収容定員充足率に基づく減額・不交付(50%未満は不交付)を維持・強化し、「撤退の慫慂や合併の促進等を通じた高等教育の規模適正化」を対応方針として明記している。また、大学・高専機能強化支援事業(成長分野転換基金)に1,100億円を積み増し、成長分野への学部転換や高専新設の促進を図るとしている。

第三の柱は科学技術・研究力の強化で、科研費による知の基盤強化(4,552億円)、AI for Science関連(2,984億円)、産業競争力強化にも貢献する新たな研究大学群の形成(2,732億円、新規)などが並ぶ。これらに加え、8つの分野横断課題として「高校教育と高等教育の一体的改革」「17の戦略分野を牽引する研究開発・人材育成」「国土強靱化」が掲げられ、AX(AIトランスフォーメーション)時代を見据えた人材育成が概算要求全体を貫く共通コンセプトとして位置づけられている。

現場視点の一般的な懸念

  • 事項要求・新規事業の金額未確定によるプランニングリスク:「高等学校教育改革交付金(仮称)」をはじめ、大学病院施設・設備の緊急的改善、経済安全保障重要技術育成プログラムなど、重要施策の少なくない部分が金額を明示しない「事項要求」にとどまっている。概算要求段階の資料はあくまで各局の「要求・要望」であり、年末の予算編成過程で規模が縮小・見送りされる可能性があるが、現場(教育委員会・学校・大学)がこの段階の数字をそのまま前提に人員配置や設備投資の計画を立ててしまうと、後に確定額との乖離が生じるリスクがある。
  • 定数改善計画と働き方改革予算の規模の非対称性:令和9年度の定数改善は7,539人(令和8~10年度累計24,605人)である一方、学校における働き方改革の加速化予算は173億円(前年度118億円)にとどまる。教職調整額の引上げなど処遇改善は進む方向にあるが、教員一人当たりの持ちコマ数や事務負担そのものを軽減する施策の規模が、定数改善のペースに見合っているかは資料からは判然としない。
  • 私学助成のリバランス方針が地方中小規模大学の経営に与える影響:私立大学等経常費補助において、収容定員充足率に基づく減額・不交付を維持・強化しつつ、理工農・デジタル系や地域人材育成への重点支援を進める方針は、資料自体が「撤退の慫慂や合併の促進」を対応方針として明記している。地域によっては当該私立大学が唯一の高等教育機関である場合もあり、機械的な充足率基準の適用が、地域の進学機会そのものの縮小に直結しかねない。
  • デジタル教科書導入スケジュールと現場整備の同時進行:令和12(2030)年度の全国導入に向け、令和9年度はなお実証研究・研修伴走支援の段階にある。導入まで残り数年という限られた期間で、通信環境やビューア動作環境の整備、教師の指導力向上、紙とデジタルを組み合わせた学びへの習熟を、全国の学校規模・自治体財政力の差を超えて均質に進められるかは、本資料だけでは見通しにくい。
  • 日本語教育・外国人児童生徒等支援の急拡大と人材確保の追いつき:日本語教育支援総合パッケージは前年度31億円から113億円+事項要求へと大幅増額されているが、増額分の多くはプレスクール・プレクラスの全国展開支援など「新規」事業であり、実際に指導にあたる日本語指導員・登録日本語教員等の人材そのものが急速に確保できるとは限らない。また「日本語・生活学習プログラム(仮称)」が出入国在留管理庁との連携のもとで検討されている点も、教育的支援と在留管理施策の目的の違いをどう整理するかという論点を残したままである。
  • 高専の量的拡大策と教員確保・基準整備の同時進行:成長分野転換基金(1,100億円、新規)による高専新設・学部転換の促進、KOSENの国際展開・海外展開の推進が打ち出される一方、高専教員の確保自体が容易でない実態は他の検討会資料でも指摘されている。新設・拡大のペースに対し、教員の質・量の確保や国際的な質保証(KIS運用等)の基盤整備が追いつくかどうかは、予算の規模だけでは判断できない。

現場視点の一般的な懸念を踏まえた改善提案

  • 事項要求・新規事業の確定状況を追跡できる仕組みの整備:年末の予算編成過程における確定額・確定時期を、教育委員会や大学等の現場に早期かつ継続的に周知するロードマップを整備し、概算要求段階の数字を前提とした計画策定に伴うリスクについても、あわせて注意喚起を行う。
  • 定数改善計画と働き方改革予算の連動した工程表の提示:令和10年度までの定数改善計画の進捗(累計改善人数・残り予定人数)を年度ごとに可視化して公表するとともに、働き方改革関連予算の拡充規模を定数改善のペースと連動させた複数年度の工程表として示す。
  • 私学助成リバランスにおける地域配慮の制度化:収容定員充足率等の機械的な基準適用に加え、地域における当該大学の役割(地域唯一の高等教育機関であるか等)を考慮した激変緩和措置や、撤退・合併を選択する大学への丁寧な伴走支援(在学生の学びの継続保障を含む)を制度上明確に位置付ける。
  • デジタル教科書移行期における自治体間格差の是正策の前倒し:実証研究校で得られた研修モデル・事例集を早期に全国の教育委員会・学校へ共有するとともに、通信環境やビューア動作環境整備等のインフラ費用について、財政力の弱い自治体を優先した補助枠を導入前倒しで確保し、学校規模・自治体財政力に応じた柔軟な移行スケジュールを示す。
  • 日本語教育人材の処遇改善とプログラムの目的整理の並行推進:日本語指導員・登録日本語教員の処遇改善とキャリアパスの明確化を新規事業の立ち上げと並行して優先的に進めるとともに、「日本語・生活学習プログラム(仮称)」の検討状況を学校・教育委員会関係者に早期に共有し、教育的な日本語支援と在留管理施策の目的・運用を制度上区別するプロセスを設ける。
  • 高専新設・拡大における教員需給調整と質保証基盤の先行整備:成長分野転換基金による新設・拡大の認可にあたっては、開校前段階での教員採用・育成の数値目標の明示と、既存校からの人材流出を防ぐ国レベルの需給調整を予算執行と同時並行で進め、KIS等の国際的な質保証の基盤整備を新設ペースに先行させる。

令和9年度文部科学省 概算要求等の発表資料一覧
https://www.mext.go.jp/a_menu/yosan/r01/1420668_00005.html

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