【現場視点】「学校給食衛生管理基準」の在り方に関する有識者会議(第3回)配布資料

20260827_182406_「学校給食衛生管理基準」の在り方に関する有識者会議(第3回)配布資料_1

要約

本資料は、令和8年8月27日(木)15時30分~17時30分にWeb(Zoom)形式で開催された「学校給食衛生管理基準」の在り方に関する有識者会議(第3回)の配付資料である。同会議は令和8年3月10日付けの総合教育政策局長決定により設置され、令和8年3月10日から令和10年3月31日までを検討期間として、学校給食の一層の安全確保と、働き方改革の推進や物流の輸送力不足など社会環境の変化に適応した効率的な運営を両立させるための基準の在り方を検討することを目的としている。構成員は日本給食サービス協会、全国学校給食推進連合会、日本給食品連合会などの給食関係団体、栄養教諭、大学研究者、地方自治体職員、微生物学の専門家ら10名で、内閣府食品安全委員会、厚生労働省、消費者庁、農林水産省、水産庁がオブザーバーとして参加している。

議題は「『学校給食衛生管理基準』の改正に向けた論点整理について」であり、配付資料【資料1】は、平成21年文部科学省告示第64号「学校給食衛生管理基準」のうち第1(総則)及び第2(学校給食施設及び設備の整備及び管理に係る衛生管理基準)を対象に、現行基準と改正イメージを対照表形式で示したものである。資料自体が明記するとおり、これは今後の改正の方向性を分かりやすく示すためのイメージであり、確定した改正案ではなく、今後の有識者会議での議論の進捗や告示制定に係る行政手続きの過程で随時変更され得るとされている。

改正イメージの柱は大きく分けて三点ある。第一に、総則において学校設置者の定義に株式会社立の学校法人等を含められるよう修正し、教育委員会等に「管理に関する点検及び記録」を行う義務を明記するなど、HACCPの考え方に基づく実態把握を「努める」から「講じる」「行う」に格上げする形で、大量調理施設衛生管理マニュアルとの整合性を図る方向性が示されている。

第二に、施設・設備面では、外部に開放される箇所への防虫設備(網戸・エアカーテン・自動ドア等)の設置を努力義務から原則義務へと引き上げ、釜周りに限定していた排水規定を冷蔵庫のドレン水やスチームコンベクションオーブンの結露水など「学校給食用設備から生じる排水又は結露水」全般に拡大するなど、近年の設備の多様化に対応した見直しが提案されている。また、施設の設計段階で意見を聴取すべき関係者に、従来の栄養教諭等に加えて調理従事者、配送事業者、食材納入事業者を新たに加えることとし、その考え方として物流効率化法の施行を踏まえた荷卸しのしやすさや駐車スペース、搬入動線への配慮が挙げられている。共同調理場の配送体制についても、「調理後2時間以内に給食できる配送車を確保する」という車両台数中心の規定から、「調理終了後2時間以内に喫食することが望ましいことから、保冷又は保温設備のある配送車を必要台数確保するなど、適切な温度管理が可能な配送体制を整える」という、温度管理を含めた体制整備を求める規定へと改める方向が示されている。

第三に、調理用の機械・機器・容器については、大量調理施設衛生管理マニュアルに合わせて、下処理用は魚介類用・食肉類用・野菜類用に、調理用は加熱調理済食品用・生食野菜用・生食魚介類用に区分する整理が提案される一方、焼き物機・揚げ物機・真空冷却機・中心温度管理機能付き調理機といった現行基準の例示は削除し、施設の規模や献立・調理方法に応じて必要な機械・機器を選択できる規定に改めることで、人員不足や作業負担、設備の老朽化といった有識者会議で示された課題に対応しようとしている。手洗い設備についても「レバー式、足踏み式又は自動式等」という方式の例示を削除し、「直接手指を触れることなく操作でき、かつ、温水を使用できる構造」という機能要件に置き換えることで、新技術の導入余地を広げる改正イメージが示されている。このほか、ねずみ・衛生害虫対策について施設及びその周辺の維持管理や侵入経路・繁殖場所の排除を明記し駆除記録を1年間保管することとする点、布タオルの使用を「避ける」から「使用しない」に厳格化する一方で個人用に加え洗浄・消毒済みの爪ブラシを使用の都度交換するワンウェイ方式も選択できるようにする点など、衛生管理の強化と現場の運用柔軟化を組み合わせた提案が随所に見られる。

参考資料としては、有識者会議の開催要綱(参考資料1)、運営規則(参考資料2)、現行の学校給食衛生管理基準の告示本文及び施行通知(参考資料3)、大量調理施設衛生管理マニュアル(参考資料4)に加え、参考資料5「基礎資料集」が添付されている。この基礎資料集には、栄養教諭等の配置率が全体で37.8%(国立72.9%、公立37.8%、私立24.0%)にとどまっている実態、共同調理場では受配食数に応じて栄養教諭等が1~3人で複数校を巡回指導している勤務実態、令和8年度から始まる第5次食育推進基本計画における地場産物・国産食材使用率の目標と実績の乖離、令和7年施行の物流効率化法や令和7年6月施行の労働安全衛生規則改正(熱中症対策の義務化)、学校給食の安定的な運営に向けた取組の推進についての通知(契約書の未整備、FAX中心のやり取りなど調達実務の課題)といった、基準改正の背景にある社会的環境変化を裏付けるデータが収められている。

現場視点の一般的な懸念

今回の論点整理を学校給食調理場の現場(栄養教諭・学校栄養職員、調理員、共同調理場、配送・納入業者)の視点から見ると、いくつかの懸念が浮かび上がる。

第一に、点検・記録業務のさらなる増加である。総則における「管理に関する点検及び記録」の明記、ねずみ・衛生害虫の駆除結果の1年間保管、器具・容器の洗浄後の「殺菌」の明記と原則搬出後実施の徹底など、今回のイメージ案は随所で努力義務を原則義務化し、記録の保存期間や実施頻度を具体化する方向にある。これらは食中毒予防の観点からは妥当な強化だが、日々の調理・配膳・清掃業務に加えて記録作業が積み重なることになる。基礎資料集が示すとおり栄養教諭等の配置率は全体で37.8%に過ぎず、共同調理場では1人の栄養教諭が複数校を巡回して指導に当たっているのが実態であり、記録・点検の主体が調理員や限られた人数の栄養教諭等に偏る中で、業務量の増加にどう対応するかが明確でない。

第二に、設備更新に伴うコスト負担の見通しが示されていない点である。防虫設備の設置義務化、排水・結露水対策の対象拡大、手洗い設備の機能要件化などは、老朽化した施設ほど改修コストがかさむ内容であり、焼き物機・揚げ物機等の例示削除も「施設の規模や献立・調理方法に応じて必要な機械及び機器を備える」という抽象的な努力義務にとどまっている。どの機器をどの水準まで整備すれば基準を満たすとみなされるのかが不明確なまま現場の判断に委ねられれば、自治体や学校の財政状況によって整備状況に大きな差が生じ、定期検査や監査の場面で解釈のばらつきが生じる懸念がある。

第三に、配送体制の見直しと物流効率化法・トラックドライバー不足との整合である。「保冷又は保温設備のある配送車を必要台数確保する」という規定強化は食品衛生上望ましい一方、基礎資料集が示すとおり物流業界では2024年問題によるドライバー不足が深刻化しており、学校給食の配送を担う共同調理場や委託事業者が、必要な車両・人員を確保できるとは限らない。学校給食の安定的な運営に向けた通知が指摘する「契約書が未整備」「発注条件やキャンセル条項の記載がない」といった調達実務の課題を放置したまま基準面の要求だけを引き上げれば、配送事業者側の負担や撤退リスクが高まりかねない。

第四に、熱中症対策や物流効率化との重複対応である。令和7年6月施行の改正労働安全衛生規則により、調理場を含む高温多湿作業場には熱中症の重篤化防止のための体制整備・手順作成が別途義務付けられている。今回の学校給食衛生管理基準側でも「夏期」に限定しない温度上昇防止設備の整備が論点として挙がっており、労働安全衛生法令上の対応と学校給食衛生管理基準上の対応が別々の枠組みで現場に求められる形になれば、限られた人員体制の中で対応窓口や優先順位づけが煩雑になる可能性がある。

第五に、株式会社立の設置者を明確に位置づける総則改正や、栄養教諭等以外の意見聴取先の拡大(調理従事者・配送事業者・食材納入事業者)は方向性として望ましいが、実際にどのような場・手続きで意見を聴取し、それを設計にどう反映させるかの具体的な仕組みが示されていない。理念が先行し、現場の意見が形式的な聴取にとどまるおそれもある。

現場視点の一般的な懸念を踏まえた改善提案

以上の懸念を踏まえ、次のような改善の方向性が考えられる。

まず、点検・記録業務の増加については、記録様式のデジタル化・電子化を前提とした運用ガイドラインを基準改正と同時に整備し、ICTツールの導入経費に対する補助スキームを用意することが望ましい。栄養教諭等の配置が手薄な共同調理場ほど記録負担の影響が大きいため、配置基準の見直しや調理員・事務職員への記録業務の適切な分担ルールも合わせて検討すべきである。

次に、設備更新のコスト負担については、「食の指導改善充実事業」や「学校給食への地場産物・有機農産物等使用促進による食の指導充実に関するモデル創出事業」のような既存の補助スキームを参考に、防虫設備・手洗い設備・温度管理機器の更新を支援する財政措置を基準の施行時期とセットで明示し、老朽施設に対しては十分な経過措置期間を設けるべきである。あわせて、どの機器構成であれば基準を満たすと評価されるのか、施設規模別・調理方式別のモデル例を国が示すことで、自治体間の解釈のばらつきを防ぐことができる。

配送体制の見直しについては、基準の改正と並行して、物流効率化法に基づく荷主・物流事業者向けの判断基準(リードタイムの確保、荷待ち時間短縮、予約受付システムの活用等)を学校給食の配送実務にどう適用するかを整理した手引きを作成し、教育委員会・給食センター・配送事業者・食材納入事業者が参加する協議の場を制度化することが有効である。契約書の未整備やFAX中心の商慣行といった調達実務上の課題は、基準改正とは別に着実に是正を進める必要がある。

熱中症対策については、労働安全衛生規則に基づく事業者の義務と学校給食衛生管理基準上の設備整備規定を一体的に説明する資料を用意し、現場が二重の対応に追われないよう窓口を一本化することが望ましい。

最後に、栄養教諭等以外の関係者(調理従事者、配送事業者、食材納入事業者)の意見聴取を実効あるものとするため、施設の新増築・改修時に意見聴取の場を設けることを望ましい実施例として具体的に示し、モデル校での試行を通じて得られた知見を全国に共有する仕組みを整えることが、理念と現場実態の橋渡しとして有効であると考えられる。

「学校給食衛生管理基準」の在り方に関する有識者会議(第3回)配布資料
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/205/giji_list/mext_00002.html

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