設備の設置状況調査を実施(令和8年5月1日現在)_1.png)
要約
文部科学省は令和8年7月30日、公立学校施設における空調(冷房)設備の設置状況調査(令和8年5月1日現在)の結果を公表した。普通教室の設置率は小中学校で99.6%(前回令和6年9月時点99.1%、0.5ポイント増)とほぼ天井に達し、特別支援学校でも100.0%を維持している。特別教室についても小中学校72.6%(前回66.9%、5.7ポイント増)、高等学校61.6%(前回58.4%)と、いずれも改善が続いている。給食調理場の調理室等(非汚染作業区域)でも単独調理場91.0%(前回83.6%、7.4ポイント増)、共同調理場93.5%(前回91.4%、2.1ポイント増)と、令和2年9月時点からの推移で見れば整備は着実に進んできたことがわかる。
しかし、全体としての改善基調のなかで、幼稚園(保育室)の設置率だけが98.6%と、前回の99.3%から0.7ポイント低下しているという逆行現象が生じている。他のすべての学校種で数値が上昇するなかでの唯一の下落であり、調査結果はこの理由には触れていない。老朽化した設備の更新が追いついていないのか、統廃合など別の要因が働いているのか、単年度の調査データだけでは判断がつかない。
また、体育館等については「参考」データという位置づけで、保有棟数に対する「協定等を含む確保棟数」(小中学校で39.9%)が示されているが、この確保率には恒常的に設置された空調設備だけでなく、災害時に外部から機材を調達する協定を結んでいる棟も算入されている。つまり、平常時の授業や部活動、猛暑日の避難所開設時に実際に使える空調が整っている棟の割合は、この数値よりも低い可能性が高い。特別教室の設置率についても、都道府県間で北海道28.4%から東京94.6%まで66ポイント超の開きがあり、教室の種類による格差だけでなく地域間格差も同時に存在している。
数字が並ぶ調査結果の背後で、教育現場は具体的にどのような環境に置かれているのか。以下、現場視点から6点の懸念と、それに対応する改善提案を述べる。
現場視点の一般的な懸念
- 体育館の「確保率」が実態を過大に見せている可能性:小中学校の体育館等における空調「確保棟数」39.9%には、常設の空調設備だけでなく、未設置の棟のうち災害時の調達協定により緊急時に外部から空調を確保できるとされる棟も含まれている。教職員や避難所運営に携わる住民が現場で直面する「体育館に空調がない」という実感と、統計上の確保率との間にギャップが生じかねない。
- 特別教室の整備における都道府県間格差の放置:小中学校の特別教室設置率は、最も低い北海道の28.4%から最も高い東京の94.6%まで、66ポイント以上の開きがある。財政力の弱い自治体ほど整備が遅れる構造がうかがえるが、調査は実態の集計にとどまり、格差是正に向けた対応方針までは示していない。
- 給食調理場の整備優先度が教室より低いまま据え置かれている:単独調理場91.0%、共同調理場93.5%は普通教室の99.6%と比べて依然低水準である。調理従事者は火を使う高温多湿の作業環境で働いており、熱中症リスクは教室以上に高いと考えられるが、整備の進捗は教室に比べて緩やかである。
- 幼稚園(保育室)における設置率低下の要因が不明のまま:他のすべての学校種で設置率が上昇するなか、幼稚園の保育室のみが99.3%から98.6%へと低下した。老朽化した設備の更新の遅れなのか、園児数減少に伴う施設再編の影響なのか、本調査からは読み取れず、原因不明のまま数字だけが独り歩きしかねない。
- 教室の種類によって空調の有無が分かれる教育環境の不均一性:全国平均で見ても、普通教室(小中学校99.6%)と特別教室(同72.6%)の間には27ポイントの差があり、理科室や音楽室など特定の教科活動を行う教室で空調のない環境が常態化している。児童生徒がどの教室で学ぶかによって快適性に差が生じる状態が、改善傾向のなかでもなお解消されていない。
- 空調整備と断熱化が一体で語られていない:体育館等の断熱棟率は27.9%にとどまっており、空調設置の進捗(確保率39.9%)と比べても低い水準にある。空調を設置しても建物の断熱性能が低ければ冷房効率やエネルギーコストの面で非効率になりかねないが、両者は本調査でも別立ての指標として示されるにとどまり、整備の一体性という論点が埋もれている。
改善提案
- 体育館等の「確保率」を、恒常的に設置された空調設備による分と、災害時協定による緊急調達分とに分けて公表し、平常時に実際に利用可能な空調整備の実態を可視化すべきである。
- 特別教室の都道府県間格差の是正に向け、好事例の横展開にとどまらず、財政力の弱い自治体への補助率の重点的な引き上げなど、財源面からの是正措置を検討すべきである。
- 給食調理場については、調理従事者の労働安全衛生の観点から教室と同等以上の緊急性を持って整備を進め、単独調理場・共同調理場それぞれの整備目標と専用の補助制度を設けるべきである。
- 幼稚園の保育室における設置率低下の要因(老朽化設備の更新遅延、園の統廃合の影響等)について、次回調査までに実態調査を行い、その結果を公表すべきである。
- 特別教室についても普通教室と同水準の整備目標を設定し、教科・活動の内容によって学習環境に差が生じないよう、具体的な整備工程表を示すべきである。
- 空調整備と断熱化を一体的に進める整備方針を明示し、断熱棟率の向上に資する補助メニューを拡充することで、整備効果とエネルギー効率の両立を図るべきである。
公立学校施設における空調(冷房)設備の設置状況調査を実施(令和8年5月1日現在)
https://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/mext_01661.html


