【現場視点】教育課程部会 情報・技術ワーキンググループ(第12回)配付資料

教育課程部会_情報・技術ワーキンググループ(第12回)_配付資料について_1

要約

第12回情報・技術ワーキンググループでは、小学校「情報の領域(仮称)」、中学校「情報・技術科(仮称)」、高等学校「情報科」の体系整理についての議論が続けられるとともに、これまで11回にわたる審議を踏まえた「取りまとめ骨子イメージ」が資料として示された。会議ではまず、AI・ロボットによる雇用構造の変化や生産年齢人口の約1,100万人減少、AI・ロボット活用人材の約339万人不足といった2040年代の社会像を前提に、情報活用能力を「主権者の育成」「アクティブラーナーの育成」「アドバンスト・エッセンシャルワーカーの育成」「世界トップレベルのイノベーターの育成」という四つの方向性に接続する構図があらためて確認された。

続いて、情報・技術科(仮称)に新設が検討されている「技術の統合(仮称)」領域や、情報Ⅱの単位数を柔軟に配当する仕組みなど、内容面の具体化は大きく前進した一方、肝心の新教科・領域の授業時数の規模については「(6/25の議論を踏まえ、次回記載)」として結論が持ち越されたままとなっている。あわせて参考資料として示された令和6年度高等学校学習指導要領実施状況調査(情報科・情報Ⅰ)では、知識・技能を問う設問の通過率が76.4%・83.5%と高水準であるのに対し、思考力・判断力・表現力等を問う設問は41.2%・42.1%にとどまるという結果が明らかにされた。

また、中学校技術・家庭科(技術分野)担当教員のうち臨時免許状所有者540名・免許外教科担任1,837名、高等学校情報科担当教員のうち臨時免許状所有者36名・免許外教科担任47名という状況が、資料自身によって「危機的な課題」と表現される形であらためて示された。内容の充実・精選、目標及び見方・考え方の整理、学習評価の在り方の検討は着実に積み上がっている一方で、これらを支える授業時数の配分や教員確保の具体策がどこまで並走できているのかという点には、なお検討の余地が残されているように見える。

現場視点の懸念

  1. 条件整備(教員未確保)について、本資料自身が「危機的な課題」と認めているにもかかわらず、情報・技術科(仮称)の「技術の統合」新設や情報Ⅱの単位弾力化など指導内容の高度化が先行して具体化されており、体制整備は「改訂を待つことなく」進めるとされているものの、達成期限や数値目標を伴う具体的な工程は示されていない。
  2. 新教科・領域の授業時数の規模については本資料中で「次回記載」として明示的に先送りされている。内容項目や高次の資質・能力の整理が先に固まっていくため、現場は「何を教えるか」が具体化される一方で「どれだけの時間で教えられるのか」が分からないまま、指導計画づくりへの心理的負担を先に抱え込む形になりかねない。
  3. 実施状況調査で明らかになった「知識・技能」(通過率76.4%・83.5%)と「思考力・判断力・表現力等」(41.2%・42.1%)の落差は、従来から指摘されてきた「知識はあるが活用できない」という課題を裏付けるものである。しかし資料2の対応は「統合的な理解」「総合的な発揮」という新たな整理軸の導入にとどまり、なぜ思考力等の通過率がここまで低迷しているのか(授業時数、指導法、評価方法等の要因)についての分析が本資料には明示されていない。
  4. 小学校段階の情報活用能力育成について「地域や学校による差が大きい」こと、ICT利活用についても「地域・学校間の差」があることが繰り返し指摘されている。しかし示されている対応は主に優良事例の周知や研修コンテンツの整備であり、格差の背景にある自治体間の財政力・人的資源の差そのものへの言及は乏しい。
  5. プログラミング的思考の再定義では、生成AIへの指示やAIが生成したコード・成果物の評価・改善までが新たに求められるようになった。しかしこの内容は「学習指導要領改訂を待たずしてガイドライン等で対応することが必要」とされており、次期学習指導要領本体には必ずしも明確に位置付けられていない。改訂サイクルとAI技術の進展速度との乖離が、現場に暫定的・場当たり的な対応を強いる構造になっている。
  6. 資料の随所で、2040年代の労働力不足(生産年齢人口約1,100万人減、AI・ロボット活用人材約339万人不足等)が情報活用能力育成の主要な論拠として繰り返し語られており、経済成長・人材確保の論理に重心が置かれているように読める。女子生徒の理系選択率の低さについても、対応策は「義務教育段階から…興味・関心を育む」という抽象的な表現にとどまり、具体的な数値目標や検証の仕組みは示されていない。

改善提案

  1. 教科書検定・学習指導要領改訂のスケジュールとは別建てで、中学校技術・家庭科(技術分野)及び高等学校情報科における免許外教科担任・臨時免許状の解消に向けた数値目標(例:令和◯年度までにゼロ)と予算措置を明記した工程表を、既存の「指導体制改善プラン」の一部として速やかに公表する。
  2. 内容項目の確定作業と授業時数の検討を並行させ、遅くとも次回WGまでに時数規模の複数の選択肢(案)を提示したうえで、内容と時数をセットにして現場からの意見聴取を行う。
  3. 実施状況調査で通過率の低かった設問領域(モデル化・アルゴリズム構築、情報デザインによる課題解決)を対象に、教員研修や指導事例の作成を優先的に絞り込むとともに、改訂後も通過率の経年変化を検証指標として継続的にモニタリングする仕組みを明記する。
  4. 優良事例の周知にとどめず、ICT環境整備や外部人材配置における自治体間の財政力格差を補うための交付金・支援策を、条件整備の重点項目として明示的に位置付ける。
  5. 生成AI活用に関するガイドラインを学習指導要領の「補完」ではなく「先行実装」として明確に位置付け、ガイドラインの改定時期・内容を学習指導要領解説にあらかじめ記載することで、現場が場当たり的対応と受け取らないようにする。
  6. 情報活用能力の育成意義を説明する際には、経済的必要性と並べて主権者育成・包摂的社会の実現という市民的価値を明記し、とりわけ女子生徒の理系選択率については具体的な数値目標と経年検証の仕組みを設ける。

教育課程部会 情報・技術ワーキンググループ(第12回) 配付資料について
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/118/mext_00009.html

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