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要約
本資料は、職業に関する各教科における柔軟な教育課程の編成及び学習評価の在り方を検討する第7回産業教育ワーキンググループの議事録である。1単位の計算方法が「50分×35コマ」から「50分×17コマ」へと事実上半減する見直しにより、看護・介護福祉士等の資格養成課程では現行の指定規則との整合性次第で年間53コマ相当の実習時間減少を招きかねないという、委員自らが数字で示した衝撃的な副作用が明らかになった。現場視点から6つの懸念点を整理する。
本会議では、①高等学校における科目の柔軟な組み替え(既存科目同士の「組替え後科目」と学校設定教科・科目の区別、単位計算方法の見直し、必履修科目の減単要件緩和、外部試験による履修免除、学校設定教科・科目の単位数上限撤廃、週当たり授業時数標準の廃止、質確保の仕組み)と、②職業に関する各教科の学習評価の在り方(「学びに向かう力」の評価における観点別評価への「○」付記方式の導入、高次の資質・能力を直接評価対象としない整理、産業界等外部人材の評価材料活用、パフォーマンス評価の推進)という2つの大きな論点が審議された。委員からは、教員免許と組み替え後科目の対応関係、検定試験の授業内活用の可否、校務支援システム改修の財政負担、学び直し対応の少人数化など、実務に直結する具体的な論点が相次いで提起された。
現場視点の一般的な懸念
第一に、単位計算方法の見直しが資格養成課程に与える影響への懸念である。野口委員が具体的に指摘したように、介護福祉士養成施設では厚生労働省の指定規則により53単位(50分×35単位時間換算)と定められており、今回の見直しにより1単位当たり1コマの減少が、53単位分では53コマもの実習時間減少に直結する。文部科学省と厚生労働省という所管の異なる制度が併存する中、現場では単位計算の考え方の相違そのものが教育課程編成や単位認定の混乱要因となりかねない。
第二に、科目の柔軟な組み替えに伴う教員免許適用の曖昧さである。森澄委員が具体例(論理国語と理数探究を組み合わせた「アカデミック・プレゼンテーション」、水産と生物・化学の重複科目等)を挙げて質した通り、組み替え後科目をどの教科に「紐づける」かによって担当可能な教員免許が変わるという整理は理論上明快でも、実際の人員配置や時間割編成における判断は現場の管理職に委ねられており、教科間の垣根を越えた指導体制の構築は容易ではない。
第三に、検定試験の授業内実施を巡る長年の未解決課題である。小川委員が指摘した通り、商業科では授業中に検定対策を行うことの是非が長らく曖昧なまま放置されており、CBT検定を評価ツールとして活用する構想が示されても、それを公式に認めるかどうかの判断基準は今なお不明確である。結果として、検定指導は放課後や休日に無報酬で担われる実態が温存されている。
第四に、「学びに向かう力・人間性等」の評価簡素化が、かえって評価の実質を損ないかねないという逆説である。清水委員が懸念を示したように、思考・判断・表現の評価に「○」を付記するのみとする方式は、実験・実習を重視する専門高校の学びの特質を軽視するリスクをはらむ。加えて、現行の観点別評価の組み合わせによる評定判断は校務支援システムで自動化されている自治体が多く、今回の改訂は大規模なシステム改修を要するにもかかわらず、その財政負担の帰趨は示されていない。
第五に、好事例の「横展開」に依存した支援方策の限界である。栗林調査官の説明では、都道府県・指定都市の指導主事等を集めた協議会での周知や事例集の整備が繰り返し支援策として挙げられているが、これは情報共有にとどまり、実際に柔軟な教育課程を編成・運用するための人員や予算といった構造的な資源配分には踏み込んでいない。
第六に、学び直しや多様な生徒への対応における教員の負担増への懸念である。加藤委員が指摘した通り、学び直しが必要な生徒の増加は少人数・細分化された指導体制を要求するが、具体的な教員配置や時間確保の方策は示されないままである。資格取得のための補習が早朝・放課後・休日に無報酬で行われている実態(清水委員言及)も踏まえれば、教育課程の柔軟化が現場の「善意」と時間外労働に依存する構造を追認・拡大しかねない。
改善提案
第一に、単位計算方法の見直しに際しては、厚生労働省をはじめとする資格養成課程の所管省庁との調整結果を具体的な数値・基準として明文化し、移行期間中の激変緩和措置(経過的な単位換算の特例等)を制度上明記すべきである。所管省庁間の「調整を図る」という抽象的な説明にとどめず、現場が実務上依拠できる統一的な運用指針を早期に示す必要がある。
第二に、組み替え後科目における教員免許適用の判断基準について、具体的な事例に基づくQ&Aや判断フローチャートを学習指導要領解説等に明示すべきである。「目標・内容に照らして紐づく教科を判断する」という原則論だけでは現場の混乱は解消されず、複数教科にまたがる典型パターンごとの取扱い例を国が示すことが求められる。
第三に、検定試験の授業内活用については、教育委員会ごとの個別判断に委ねるのではなく、国として統一的なガイドラインを策定し、CBT検定を学習評価ツールとして正式に位置づけるべきである。これにより、検定指導が正規の授業時間内で完結し、教員の時間外・無報酬労働への依存を減らすことができる。
第四に、「○」付記方式の導入に伴う校務支援システムの改修費用について、国庫補助等の財政支援策をあらかじめ明確化すべきである。評価方法の簡素化を掲げながら自治体に多大なシステム改修負担を転嫁する結果とならないよう、国が財源面での道筋を早期に示す必要がある。
第五に、好事例の横展開にとどまらず、専門高校の教育課程編成を支える専任コーディネーターの配置や、産業界等外部人材との連携に係る予算措置など、財政的裏付けを伴う支援策を並行して講じるべきである。協議会や事例集による情報共有は必要条件ではあっても十分条件ではなく、資源配分の裏付けなしに「横展開」だけを期待するのは現場に責任を転嫁する構造になりかねない。
第六に、学び直し対応や資格取得支援に伴う教員の実質的な負担増を踏まえ、教育課程の柔軟化とあわせて教員定数の見直しや加配措置を検討すべきである。柔軟な教育課程編成という制度設計上の自由度拡大が、結果として教員の時間外労働に依存する形で「現場の努力」に回収されることのないよう、働き方改革との整合性を制度設計の当初から組み込む必要がある。
中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会産業教育ワーキンググループ(第7回)の議事録を掲載しました
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