学校における持続可能な保健管理の在り方に関する調査検討会(第6回)資料1「これまでのヒアリングを踏まえた論点(案)」

要約

令和8年5月20日開催の第6回調査検討会に提出された論点整理資料。令和7年4月に設置された本検討会が、医療関係団体・教育関係団体へのヒアリング(第2回〜第5回)を踏まえ、学校健診の在り方全般にわたる論点を7分野に整理したもの。

1. 健康診断の実施項目・実施方法(総論) 健診の役割を「疾病スクリーニング」と「健康教育への活用」の2点に整理。身体疾患発見の機会が相対的に低下し、心理・社会的課題への対応が重要度を増しているとの認識が示された。全国一律での現行規定の実施困難も指摘されており、学年限定・隔年実施・一次スクリーニングの問診票活用などが検討課題として挙げられた。

2. 個別健診項目 各検査項目について意義と課題を整理。結核については小・中学校での集団感染が2014年以降ゼロであり、健診での発見率も極めて低いことから、対象者の絞り込みや学校医による実施の見直しが示唆された。眼科・耳鼻科・整形外科については学校医不足が深刻であり、専門科医師による実施の継続が困難な地域が増加している。

3. 心の健康の保持 改正自殺対策基本法(令和7年)を受け、心の健康の保持に向けた健診等の実施が努力義務化。1人1台端末を活用した「心の健康観察」の全国展開が推進されているが、定期健診としての位置付けの適否や、既存の生徒指導との重複整理が課題として挙げられた。

4. 健康診断の実施時期 6月30日期限について、医学的根拠が乏しいとの指摘があり、特に心臓・耳鼻科・眼科・脊柱の項目で期限内完了が困難な学校が一定数存在(例:心臓37.4%が6月30日までに未実施)。期限の緩和が論点として提示された。

5. 健康診断の実施体制 養護教諭の深刻な人員不足、学校医の高齢化・多校兼務、かかりつけ医との個別健診の併用可能性、DXによる業務効率化などが検討課題として示された。

6. 学校医の確保・役割 眼科で1人当たり平均5.8校、耳鼻科で6.9校を兼務しており、学校医1人配置校が都道府県・政令市によっては50%超に上る地域も存在。地域医師会・学校保健会全体で学校保健を担うシステムへの転換が提案されている。

7. 学校健診PHR 政府全体のPHR推進方針を踏まえ、民間送達サービスを通じたマイナポータルへの学校健診データ送達が進められているが、導入校は伸び悩んでいる。令和8年度予算でPMH(Public Medical Hub)活用に向けた次世代型学校健診PHRの調査研究を開始。個人情報保護・セキュリティ・費用負担等の課題が多い。

現場視点の一般的な懸念

1. 「見直し」が担い手への責任転嫁になるリスク 健診項目の縮減・実施方法の弾力化・期限緩和は、いずれも「学校や地域の判断に委ねる」方向で整理される可能性が高い。しかし学校・養護教諭・学校医の絶対数不足が改善されないまま裁量だけが拡大すると、対応できる学校とできない学校の間で健診の質に地域格差が生じ、責任の所在が現場に集中する構造になりかねない。

2. 「心の健健康観察」のデジタルツール依存問題 1人1台端末を活用したストレスチェックは、導入後にいじめ認知件数が増加した事例として肯定的に紹介されている。しかし認知件数の増加は必ずしも問題の解決を意味しない。スクリーニングの感度が上がれば当然「要対応者」も増加し、その後の支援体制(SC・SSW・医療機関への接続)が追いつかなければ、発見したにもかかわらず対応できないという事態が生じる。資料自体も「数か月診察待ち」の現実に言及しており、検出機能の強化と支援体制の整備を同時に進めることの困難さが課題として残る。

3. プライバシー配慮と検査精度のトレードオフの未解決 着衣での健診では正確な診察が困難という医師側の意見と、脱衣や肌への接触への抵抗感という児童・保護者側の懸念は、根本的に相容れない面がある。現場では「説明と同意を丁寧に」という方向が示されているが、事前説明を行わなかった学校が16.6%存在するという調査結果は、現行の「周知徹底」アプローチの限界を示している。着衣のまま実施した学校が87.4%に上る実態とも併せて考えると、診察精度の担保策(補助機器の普及等)に関する具体的な制度設計が急務である。

4. 不登校児童への健診保障の構造的困難 令和6年度の不登校児童生徒は過去最多の35万人超。健診を受けられなかった児童への対応として「別日に実施」「医療機関に委託」等が示されているが、教育委員会の72.2%が「各学校に個別対応を依頼している」にとどまり、組織的な対応策が整備されていないことが数字に表れている。健康管理の責任主体が不明確なまま現場に判断を委ねる現状は、支援が最も必要な児童が健診から漏れ続けるリスクと直結している。

5. PHRの「未来像」と現在の乖離 PMHとの連携による次世代型学校健診PHRは概念図上は整合的に見えるが、現時点で導入校が増えていない理由として「メリットを感じにくい」ことが挙げられている。この感覚は現場の直感として重要で、保健調査票の電子提出や健診結果の双方向共有が実現しても、日常の保健指導・健康相談・個別支援に活かす仕組みとセットでなければ、データ管理コストだけが現場に残る。デジタル化の恩恵が学校・養護教諭の業務軽減として実感できる設計になっているかどうかが、普及の鍵である。

学校における持続可能な保健管理の在り方に関する調査検討会(第6回)配布資料
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/199/siryo/mext_00006.html

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