中央教育審議会 教育課程部会 家庭ワーキンググループ(第7回)配付資料「家庭WGの取りまとめについて」(令和8年5月19日)

要約

本資料は、次期学習指導要領に向けた家庭科の改革取りまとめ案をまとめたものである。主な論点と内容は以下のとおり。

領域再編 現行の領域構成を見直し、小・中・高等学校を通じてA〜E(「家庭総合」はF領域を加えた6領域)に再編する。A:家族・家庭と生涯発達、B:生活の経営と消費生活、C:食生活、D:衣生活、E:住生活、F:総合生活実践(「家庭総合」のみ)という構成である。

「家庭基礎」「家庭総合」の差別化 両科目の趣旨が不明確で内容が重複しているという現状課題を受け、それぞれの役割を明確化する。「家庭基礎」は基礎的理解と実践の着実な実施を重視し、「家庭総合」は複合的課題の問題解決的学習と領域横断的な深い学びを重視する方向で整理する。「家庭総合」の履修年次については、「連続する2か年」規定を削除し、隔年履修等の柔軟な編成を認める。

F領域「総合生活実践(仮称)」の新設 「家庭総合」に限り、A〜E領域を学習した後に履修する新領域を設ける。「高齢者福祉」「子育て」「防災」「生活文化」「環境」等のテーマの方向性を教師が示し、生徒がホームルームでテーマを設定・課題探究する構成である。

「ホームプロジェクトと学校家庭クラブ活動」の再編 独立領域から各領域内の「生活の課題と実践(仮称)」に再位置付けし、「個人探究(ホームプロジェクト)」「協働探究(学校家庭クラブ活動)」(いずれも仮称)として「家庭基礎」「家庭総合」いずれにも実施する。

高次の資質・能力の設定 各領域ごとに「統合的な理解」(知識・技能)と「総合的な発揮」(思考・判断・表現)を並列パターンで構造化し、教師の題材構想の指針とする。

評価改善 「主体的に学習に取り組む態度」については、「学びに向かう力の3要素」(初発の思考・好奇心、学びの主体的な調整、対話・協働)を思考・判断・表現の学習過程全体を通じて見取り、「◯付記」方式で一体的に評価する方向で整理されている。

デジタル活用 1人1台端末は、家庭科固有の実践的・体験的活動を充実させる手段として位置付け、「目的化」を避ける観点が明記されている。

現場視点の一般的な懸念

F領域「総合生活実践」の実施負担が過大になる恐れ A〜E全領域を学習した後にF領域を履修するという構成は、教師が地域の実情を踏まえてテーマを設定し、複数領域を横断する問題解決的学習を展開することを前提とする。これは非常に高度な授業設計を要求するものであり、指導体制や準備時間が確保できない学校では、形式的な「まとめ学習」に終わるリスクが大きい。資料中でも「ホームプロジェクトと学校家庭クラブ活動」の現状について「指導上のノウハウや好事例等の情報が不十分で現状十分な指導が行われていない」と課題認識が示されているにもかかわらず、同様の構造をさらに拡張した新領域を設ける点は矛盾を含む。

免許外教科担任の問題が棚上げされたまま改革が進む構造 資料は中学校技術・家庭科(家庭分野)の免許外教科担任許可件数が全体の約29%を占める実態を明記しつつ、改善策として「国において授業の構想に資する優れた指導事例等の周知に取り組む」という情報提供にとどまっている。問題の構造的要因——教員配置・採用・養成——には踏み込んでおらず、専門性の低い教員に複雑な問題解決的学習の実施を求めるという矛盾は解消されない。

「◯付記」評価の運用格差と教師の記録負担 「主体的に学習に取り組む態度」を「学びに向かう力の3要素」として細分化した上で、学習過程全体を通じた「継続的な発揮」を見取るという評価設計は、評価基準の解釈・適用に教師間の格差が生じやすい。また、その「見取り」を記録・根拠化するための業務負担が増大することが懸念される。この点は他教科の審議でも繰り返し指摘されているパターンであり、家庭科においても同様の問題が生じる可能性が高い。

「家庭基礎」偏重の実態が構造的に是正されるか不明 資料は「家庭基礎」に履修が偏り最低限の学習に留まっているという現状課題を認識しつつも、その改善策は科目の趣旨の明確化と指導事例の周知にとどまる。「家庭総合」の履修を促進する制度的・誘因的な仕組みが示されないまま、科目の差別化と内容拡充だけが進めば、「家庭基礎」偏重という実態はむしろ固定化される可能性がある。

中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会家庭ワーキンググループ(第7回)の配付資料を掲載しました
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