教育課程部会 情報・技術ワーキンググループ(第9回)配付資料 (令和8年5月18日開催)

要約

本資料は、中央教育審議会初等中等教育分科会・教育課程部会の情報・技術ワーキンググループ(WG)第9回(令和8年5月18日)の配付資料一式を収録したものである。次期学習指導要領に向けた情報教育全体の体系整理が主題であり、三つの議題を中心に構成されている。

【議題1】学習評価の在り方について(資料1)

現行の観点別評価における「主体的に学習に取り組む態度(主態)」評価の抜本的見直しが提示された。改善の核心は二点。第一に、「学びに向かう力・人間性等」を各教科の目標準拠評価から切り離し、教育課程全体を通じた個人内評価に移行すること。第二に、「思考・判断・表現」の観点別評価に**「◯(まる)付記」**を導入すること――具体的には、①初発の思考や行動を起こす力・好奇心、②他者との対話や協働、③学びの主体的な調整、の三要素が特に表出した場面で付記するというものである。A/B/C評定は廃止せず、「◯付記」は評定にも一定程度加味する方向で検討中とされている。

加えて、評価プロセスそのものの簡素化(文書作成ではなく「構想」のプロセスへの転換)、デジタル端末を活用した形成的評価の充実、総括的評定の頻度削減(学年末への集約)も提案された。情報・技術科(仮称)については、科目が家庭科から独立することに伴い、独自の観点別評価・評定の総括方法を国が丁寧に示す必要があるとされた。

【議題2】プログラミング教育について(資料2)

AI時代を踏まえた「プログラミング的思考」の発展的再定義が提案された。現行の「コードを正しく作る」から「何を実現したいかを構想し、生成・作成したものを責任をもって判断するまでの一連のプロセス」へと拡張する。バイブコーディング(自然言語によるAI活用)の普及を前提に、人間固有の役割を「目的の構想」と「責任ある判断」に再定位するものである。

また、プログラミング的思考の育成を「小学校限定」から小・中・高校を通じた体系的指導に転換し、情報活用能力育成の「核となる教科等」(小学校:総合的な学習の時間の情報の領域(仮称)、中学校:情報・技術科(仮称)、高等学校:情報科)において責任をもって実施し、各教科等での横断的活用を支える関係へと再編することが方向性として示された。

【議題3】小学校〜高等学校情報教育の体系整理(資料3)

三校種にまたがる情報教育の縦断的体系が整理された。小学校では総合的な学習の時間に「情報の領域(仮称)」を付加(現行の教科横断的取扱いから一定の時間確保へ)。中学校では技術・家庭科(技術分野)を改組し「情報・技術科(仮称)」として独立教科化し、デジタル技術の活用を従来のD領域(情報の技術)に限定せずA〜C領域(材料と加工、生物育成、エネルギー変換)全体に横断させる構想が示された。高等学校情報科はこれらの改善を踏まえた内容の深化・充実が図られる。

情報活用能力の構成要素は「①活用・②適切な取扱い・③特性の理解」に整理され、「①活用」を中核に置きながら発達段階に応じて深化させる系統性が提示された。

現場視点の一般的な懸念

◯付記の運用における教師間格差と評価基準の曖昧さ 「◯付記」の判断は「見取る姿(仮称)」を基準とするとされるが、その具体化は「学習指導要領改訂後速やかに行う」とされており、現場が判断を求められる時点では基準が未整備となる可能性が高い。何が「継続的な発揮」に該当するか、どの程度の質と頻度があれば◯を付けてよいかは、教師の裁量に委ねられる部分が大きく、学校・教師間の格差が拡大しやすい。加えて、◯付記が評定にも影響するとなれば、保護者・生徒への説明責任も生じ、文書作業の削減どころか増加に転じるリスクがある。

「評価の簡素化」言説と実務負担の逆転 資料は評価プロセスのスリム化を謳うが、個人内評価・◯付記・形成的評価の充実・デジタルポートフォリオ管理を同時に求める構造になっており、現場の観点からは「整理されたように見えて増えた」と映る可能性が高い。特に、一人一台端末での思考過程の記録・共有・コメントフィードバックを「日常的に行う」前提で設計された評価イメージ(補足イメージ2・イメージ1〜4)は、端末環境・ICTスキルが十分でない学校では物理的に実現困難である。

情報・技術科(仮称)独立化に伴う指導体制の未整備 中学校「情報・技術科(仮称)」の独立教科化に際し、現行の技術・家庭科は技術教員と家庭科教員が一教科を共同担当してきた。独立後は技術分野教員が独自に観点別評価・評定の総括を行うこととなるが、技術教員の絶対数不足(特に農村部・小規模校)や、情報技術に精通した教員の確保が追いついていない現状では、改革が先行して現場が空洞化するおそれがある。資料も「指導体制の整備と併せた仕組みの構築が必要」と認めているが、その具体策は示されていない。

プログラミング的思考の「発展的再定義」による内容の肥大化 「何を実現したいかを構想し、責任をもって判断するまで」へと範囲を広げた新定義は概念として妥当だが、教科の「ねらい」が拡散しがちになる。特に小学校段階では「情報の領域(仮称)」で体験的学習・プログラミング的思考の育成・情報活用能力の基礎・生成AIリテラシーをすべて担うことになり、限られた時間数の中での過積載が懸念される。各教科等でのプログラミング横断活用についても、受け入れ側の教科担任が十分な指導力を持つまでの移行期間中の対応が課題となる。

教育課程部会 情報・技術ワーキンググループ(第9回)配付資料:文部科学省 https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/118/mext_00004.html

メインメニュー