
要約
本資料は、現行の認証評価制度を抜本的に見直し、高等教育機関における「教育の質」を可視化・段階評価する新制度(「新たな評価」)の設計案をまとめたものである。
背景と課題認識 制度導入から20年が経過した認証評価は、評価結果のわかりにくさ・評価者・被評価者双方の負担感・徒労感、および内部質保証がカリキュラム改善に実質的につながっていない点が課題として指摘されている。急速な少子化(2040年の大学進学者数は約46万人、2021年比27%減)への対応として、学生一人一人の能力を最大限に高める「質の向上」が急務とされる。
新制度の基本構造 評価は「大学全体の評価」(適合/不適合)と「学部ごとの段階別評価」の二層構造で構成される。
学部の段階別評価は「要改善」「★」「★★」「★★★」の4段階で、「質保証の視点」(法令等が定める最低水準の達成確認)と「質向上の視点」(教育成果の可視化と改善活動の評価)の両面から評価する。
評価の基本的な方針はⅠ〜Ⅳの4軸で構成される:①養成する人材像とDPの策定・公表、②CP・教育環境体制の整備、③学修成果の把握と評価、④不断の自己改善。
評価主体 大学全体・学部の段階別評価を担う「総合評価機関(仮称)」と、特定分野を専門的に評価する「特定分野評価機関(仮称)」に再編。評価機関には更新制を導入し、機関間の目線合わせのための調整組織も設置する。
データ・情報公表 新たな大学等評価のためのデータプラットフォーム(仮称、大学改革支援・学位授与機構に設置予定)を整備し、受審管理・データ入力・評価支援・情報公表の一元化を図る。評価結果は大学名・学部・分野・評価機関・星数等を検索可能な形で一般公開される(Univ-map(仮称))。評価サイクルは6年を前提とする。
既存評価との整理 現行の機関別・分野別認証評価の一元化、国立大学法人評価との重複解消を進める。
現場視点の一般的な懸念
1. 「教育成果」の測定・証明責任の重さ 新制度では各学部が「卒業認定・学位授与の方針(DP)に定める資質・能力を学生が身に付けたこと」をデータで証明することが求められる。直接評価・間接評価・卒業後追跡調査など多面的なエビデンス整備は、教員・IR部門への新たな恒常的業務となり得る。特に人員・予算の限られる中小規模大学や地方大学では対応能力に格差が生じるリスクが高い。
2. 「星」評価の固定化と序列化への懸念 ★〜★★★という段階評価が社会に公表されることで、高校生・保護者・企業の大学選択に直結し、実質的な格付けとして機能する可能性がある。建学の精神や地域貢献型の使命を持つ大学が、統一的な「教育成果」指標では評価されにくく、一定の大学・学部に低評価が集中する構造的偏りが生まれることが懸念される。
3. データプラットフォームへの依存と現場負担 システムへのデータ入力・根拠資料登録・自己点検評価書作成が一元化される一方で、移行期の実務負担は相当規模になる。AI・BI活用による自動化を謳っているが、システム稼働の安定性・教職員のリテラシー格差・既存システムとの連携問題が現場に混乱をもたらすリスクがある。
4. 評価機関間の基準格差への不信感 複数の総合評価機関・特定分野評価機関が並立する構造では、「調整組織」による目線合わせが機能しなければ、どの機関を選ぶかで評価結果が左右される。受審する大学側からみると、評価の公平性・一貫性への不信が生じ、受審機関の選択をめぐる戦略的行動が起きる可能性もある。
5. 「要改善」認定のペナルティの影響 要改善学部を持つ大学は「不適合」となり、文部科学省による改善状況の聴取・補助金への影響・法令上の措置まで想定されている。これは小規模・地方・特色ある教育を志向する大学にとって大きな経営リスクとなる。特に「要改善」からの脱却を急ぐあまり、本来の教育理念よりも評価基準への表面的な対応が優先される本末転倒の動きが現場で起きることが懸念される。
6. 学部を単位とする評価の限界 学際的・横断的プログラム、大学院、通信教育など従来の「学部」区分に収まらない教育形態への対応が今後の課題として残されている。現行制度設計が4年制大学の学部を前提としており、多様な高等教育機関への適用時に評価枠組みが十分に機能しない可能性がある。
教育・学習の質向上に向けた新たな評価の在り方ワーキンググループ(第10回) 配付資料:文部科学省 https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/056/giji_list/mext_00002.html

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