
要約
本回は、議題(1)学習評価の在り方と議題(2)柔軟な教育課程・指導体制等・多様な外国語の二本柱で構成された。
議題(1)学習評価の在り方
評価規準の構造改革については、現行の複雑な評価プロセスを抜本的に簡素化する方向が示された。具体的には、これまで各学校が作成を求められてきた「内容のまとまりごとの評価規準」を国側が「評価規準例」として提示し、学校側の作成作業を不要とする。あわせて「単元の目標=評価規準」として一本化し、二重作成の負担を解消する方向性が打ち出された。
「学びに向かう力・人間性等」の評価改革については、総則・評価特別部会(令和8年3月30日)の議論を踏まえ、現行の「主体的に学習に取り組む態度」における目標準拠評価を廃し、「教育課程全体を通じた個人内評価」への転換を検討している。「初発の思考や行動」「学びの主体的な調整」「他者との対話や協働」という3要素が思考・判断・表現の過程で継続的に発揮されたと判断される場合に限り、当該観点に「◯」を付記する仕組みを導入する方向で議論が進んでいる。「◯」は独立した評価観点として直接評定に影響するのではなく、思考・判断・表現の評価との一体的な勘案を通じて間接的に評定に反映される位置づけとなる。
学習指導要領とCEFRの関係については、今次改訂で「内容」をCAN-DO形式で示すことにより、CEFRとの整合性が高まることが期待されている。ただし、特に中学校段階では、目標設定がCEFRレベル上は高く映る場合があるため、解説において教師の「足場かけ」を前提とした留意点を明示する方針が示された。全国学力・学習状況調査(令和8年度より中学校英語をCBT・IRT導入)においても、CEFRレベルを勘案した作問への見直しが検討される。
評価における教師の負担軽減については、MEXCBTを通じたCEFR対応問題の充実や、AIを活用したパフォーマンステストツールの可能性も俎上に上った。
議題(2)柔軟な教育課程・指導体制等・多様な外国語
高校の必履修科目の履修免除制度については、入学時点でCEFR B2以上の英語力を有する生徒を主な対象として、英語コミュニケーション(総合)Ⅰの履修免除・振替を可能とする制度設計が具体的に検討された。免除に必要な外部試験の水準(CEFRレベルのみを解説に明記し、特定試験は記載しない方針)、振替先(上位科目・学校設定科目・学校外学修)の在り方、および英語以外の外国語への拡張可能性についても論点が整理された。
小中学校における調整授業時数制度については、外国語に関する先進的取組が多いことを踏まえ、教育課程特例校制度の実践事例を積極的に情報提供する必要性が確認された。
AI時代の教師・ALTの役割については、授業デザイン・学習意欲向上・自律的学習者育成への貢献がより重要となる一方、「AI時代だからこそリアルなコミュニケーションが重要」との認識のもと、ALTとの効果的連携を推進する方向性が示された。教員養成においては外国語(英語)コアカリキュラムの見直しが予定されており、第二言語習得・認知科学・学習科学の知見やAIを含むデジタル指導法の習得が明記される方向である。
現場視点の一般的な懸念
①「◯」付記の運用が新たな形式的負担を生む恐れ 「学びに向かう力」を個人内評価化し、「◯」の付記によって簡素化する意図は理解できる。しかし、「継続的な発揮」を確認するための記録をどこでどのように取るかが曖昧なままでは、現場は自衛的に「振り返りノート確認」「発言記録」といった証拠集めに再び走る懸念がある。「形式的な評価材料集めを抑制する」という趣旨は正しいが、それを担保する運用ガイドラインが学習指導要領告示と同時に示されなければ、意図と逆の結果になりかねない。
②評価プロセスの「シンプル化」が小学校では特に機能するか疑問 「単元の目標=評価規準」の一本化は合理的だが、小学校の学級担任が全教科をカバーする実態においては、複数教科で「◯」の見取りを同時進行させることの認知的負荷は依然として高い。「文書作成のプロセスから構想のプロセスへ」という転換の言葉は説得力があるが、教師が「構想力」を発揮できるだけの余裕(時間・研修機会)が現場に確保されているかという根本問題には触れられていない。
③高校の履修免除制度が格差を拡大するリスク CEFR B2以上の英語力を入学時点で持つ生徒は、家庭の経済文化的資本が豊かな層に偏りやすい。外部試験の費用負担、対策塾へのアクセス、帰国子女等の言語環境といった要因が複合する中で、制度の受益者層が固定化される懸念がある。「一人一人の資質・能力の育成」という理念と、実質的な機会の不均等との間にある矛盾を、制度設計の段階で直視する必要がある。
④ALT活用の「自治体間格差」問題が解消されないまま役割論だけが先行 ALTが生徒の英語力に有意な効果をもたらすことが実証的に示されながら、「自治体によってALTの参画状況に差がある」という現状課題は「動画・資料の提供」という対処療法のみで処理されている。ALT配置の財政基盤(JETプログラムや各自治体委託の費用)や雇用の安定性に関する議論なしに、「効果的な連携を図るべき」という方向性を示しても、現場では活用の条件すら整っていない学校が多い。役割論の精緻化より先に、配置の実態格差を縮小する具体的施策が求められる。
⑤「AI時代だからこそリアルなコミュニケーション重要」論の曖昧さ 「AIが進化するからこそ人間同士の対面コミュニケーションに価値がある」という主張は本質的に正しい。しかし、それが授業設計の具体論に落とし込まれないまま方向性として提示されるだけでは、「AIも活用しつつリアルなやり取りも充実させる」という二重命令を現場に課すことになる。学習時間・指導人員・教材配置のどれも増えていない状況でこの両立を求めることの矛盾に対し、資源配分の観点から正面から答える議論が必要である。
教育課程部会 外国語ワーキンググループ(第11回) 配付資料:文部科学省 https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/108/siryo/mext_00011.html

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