
要約
本資料は、特別支援教育に携わる教師の専門性向上を目的として、免許制度と教職課程の両面にわたる見直しの方向性を示したものである。
幼・小・中・高の教職課程における見直しとして、現行の「特別の支援を必要とする幼児、児童及び生徒に対する理解」(1単位以上必修)を継続しつつ、発達障害・情緒障害・言語障害に関する内容、障害の社会モデルや合理的配慮の理解、インクルーシブ教育の考え方(ICF活用・自立活動・交流学習等)などを共通必修事項として追加・充実させる方向が示された。
特別支援学校の教職課程の再構造化として、現行の第一~第四欄構成を見直し、「特別な支援を必要とする幼児、児童又は生徒の理解及び教育に関する科目(仮称)」(4単位)と「障害の種類及び状態等に応じた教育に関する科目(仮称)」(6単位以上)を中心とした新たな科目編成(合計16単位)を提案。あわせて「特別支援教育の実践に関する総合的な演習」(2単位)を新設し、理論と実践の統合を図る。
複数領域の免許状保有促進として、養成・採用・研修の各段階を通じて複数障害領域の免許状取得を促し、最終的には特別支援学校に勤務する全教師が全領域の免許状を保有することを目標とする。
人事交流の推進として、公立の特別支援学校教師が採用後10年以内を目途に小・中・高での勤務を経験し、逆に小・中・高の教師も特別支援学校での勤務経験を積む双方向の人事ローテーションを制度化する方向が示された。
現場視点の一般的な懸念
① 多忙な現職教員への追加負担 複数領域の免許状取得や研修の充実が求められる一方、特別支援学校の臨時任用教員比率は17.6%と他校種より高く(小学校10.9%、高校8.7%)、教師不足率も0.71%と全校種中最高水準にある。専門性向上の要求と人員不足という矛盾が、現場の疲弊をさらに深める懸念がある。
② 人事交流の実効性と子どもへの影響 「採用後10年以内に異校種を経験」という方針は理念としては理解できるが、担当する子どもとの継続的な関係性が特別支援教育の質を支える側面は大きい。人事交流の時期・期間・頻度によっては子どもの安定した教育環境を損なうリスクがあるにもかかわらず、その点について資料では十分に議論されていない。
③ 大学カリキュラムの実質化への疑問 「大学と学生の自律的なカリキュラムデザイン」を強調するが、単位数に「余白」を持たせる設計は、大学の取り組み姿勢や学生の意識によって修得内容に大きな差が生じる可能性がある。現場が必要とする実践的専門性が担保されるかどうか、質の管理が課題となる。
④ 通常学級担任への負荷増大 幼・小・中・高の共通必修として特別支援教育の内容を拡充することは方向としては妥当だが、通常学級の担任が担う実質的な特別支援の責任がさらに拡大する可能性がある。専門家との連携体制や加配・支援員の整備といった「人的・物的な裏付け」なしに内容だけを拡充しても、現場負担の増大にしかならないという懸念は根強い。
⑤ 免許制度の複雑化と養成大学の対応能力 視覚障害・聴覚障害の免許課程を持つ大学数は全国でそれぞれ12校・22校にとどまり(一種通学課程)、地域間の偏在が著しい。複数領域免許の促進を掲げながら、地方の大学や学生が実際にそれを実現できる環境整備についての具体的方策が、本資料からは読み取りにくい。
特別支援学校教諭の免許制度や教職課程、幼・小・中・高の教職課程における特別支援教育の在り方に係る方向性について:文部科学省 https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/124/mext_00005.html

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