「デジタルな形態を含む教科書の発行・採択等の指針に関する検討会議(第1回)」資料集 (令和8年4月10日・文部科学省初等中等教育局)

要約

本資料集は、令和8年4月1日付で文部科学省が設置した「デジタルな形態を含む教科書の発行・採択等の指針に関する検討会議」の第1回(令和8年4月10日)に配布されたものである。

背景と経緯 令和元年度から紙の教科書の内容をデジタル化した「教科書代替教材」が制度化され、令和3年度以降は小学5年生から中学3年生を対象に国からデジタル教科書が提供されてきた。令和7年9月には中央教育審議会デジタル教科書推進ワーキンググループが審議まとめを公表し、教科書の形態として「紙だけでなくデジタルも認める」制度改正の方向性が示された。これを受け、令和8年4月7日に「学校教育法等の一部を改正する法律案」が閣議決定・国会提出され(施行日:令和9年4月1日)、本検討会議が設置された。

検討会議の目的と期間 教科書発行者や教育委員会・学校が新制度のもとで発行・採択・使用を判断する際の指針(ガイドライン)を策定することを目的とし、令和8年12月31日までを検討期間とする。委員は校長・教育委員会・保護者・教科書業界・研究者等15名で構成。

主な検討事項(論点案) 資料4で示された10の論点が中心となっており、以下の点が議論の柱となる。

  • 学校種・学年・教科ごとの形態(紙・デジタル・ハイブリッド)のあり方
  • 紙とデジタルそれぞれが効果的な学習場面の整理
  • 児童生徒の発達段階と認知特性への配慮
  • 情報活用能力の育成・学習外使用の防止策
  • 手書き機会の減少への対応
  • 視力低下など健康影響への対応
  • 発行者・採択権者の負担軽減
  • 学校のICT環境・支援体制の整備

制度改正の概要

  • 「教科用図書(紙のみ)」の規定を廃止し、紙・デジタル・ハイブリッドいずれも正式な「教科書」として位置づける
  • 義務教育では無償給与の対象となる
  • デジタル部分の使用可能期間は義務教育で3年以上、高校段階で4年以上が望ましい
  • 著作権法も改正し、音楽・動画を含む著作物の公衆送信等に係る権利制限を拡充

現場視点の一般的な懸念

① 採択事務の複雑化・負担増大 これまで紙のみだった採択判断に、デジタル機能の評価が加わる。デジタル教科書の機能(音声読み上げ、動的表示、拡大・縮小等)を実際に操作して比較する必要が生じるため、採択担当者の作業量・専門性への要求が大幅に高まることが懸念される。資料もこの点を「採択事務の負担軽減の工夫を期待」と述べており、現状では具体的な解決策が示しきれていない。

② ICT環境の格差による不公平 デジタル教科書の効果的な使用には安定したネットワーク環境と端末の適切な更新が前提となる。学校・自治体間のICT環境格差が残る中でデジタル形態が「採択の選択肢」となれば、環境の整っていない学校・地域の児童生徒が実質的に不利益を被る可能性がある。

③ アカウント管理・ライセンス管理の実務負担 デジタル教科書の供給にはライセンス管理が伴い、年度更新時の登録作業・失効対応・転入転出時の対応など、学校事務に新たな実務が発生する。資料でも「十分に活用されていない面がある」と認めており、教員・事務職員の業務量増加が現場で現実の問題となりうる。

④ 手書き・読解力への影響への不安 画面上での読み書き中心になることで、手書きの機会が減少し、紙上での精読や熟考の習慣が損なわれるのではないかという懸念は保護者・教員の間で根強い。資料の論点⑤でも明示的に取り上げられているが、今後のエビデンス蓄積と指針への反映が求められる。

⑤ 健康影響(視力・姿勢・睡眠)の懸念 スクリーンタイムの増加に伴う視力低下や姿勢の悪化は保護者から最も頻繁に挙がる懸念のひとつである。専門家の意見として「長時間の近距離注視を避けることが重要」とされているが、授業の流れの中でどう管理するかの具体的ガイダンスはこれから策定される段階であり、現場では判断根拠が乏しい。

⑥ 教員の指導力・デジタルリテラシーの格差 デジタル教科書の機能を効果的に使いこなすには教員側の習熟が必要だが、世代・学校種・教科によって差が大きい。研修体制の整備が強調されているものの、通常業務と並行して習得を求められる教員の負担感は看過できない。

⑦ 制度改正のスケジュールの厳しさ 施行は令和9年4月1日で、指針の検討期間は令和8年12月末まで。検定・採択・供給の実務サイクルを踏まえると、現場が新制度に対応する準備期間は極めて短く、特に小規模自治体や人員の限られた私立学校では対応が追いつかないリスクがある。

デジタルな形態を含む教科書の発行・採択等の指針に関する検討会議(第1回) 配布資料:文部科学省 https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/206/giji_list/mext_02310.html

コメントを残す

メインメニュー