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要約
1. 会議の概要
令和8年5月28日(木)開催のウェブ会議。議題は「特別支援教育の教育課程の充実に向けた方策について」。資料1を中心に、次期学習指導要領改訂に向けた取りまとめ骨子案が提示された。
2. 取りまとめ骨子案の主要内容
① 基本的考え方——「重層的な指導・支援」
特別支援教育を受ける児童生徒数が急増するなか、通常の学級・通級による指導・特別支援学級・特別支援学校という連続的な多様な学びの場を整備しつつ、「重層的な指導・支援」の考え方を軸に据える。すべての学校に特別な支援を要する児童生徒が在籍しうることを前提に、インクルーシブ教育システムの理念を具体化する方向性を示している。
② 幼・小・中・高等学校における改善方向性
- 合理的配慮の明確化:学習指導要領総則に合理的配慮の提供を位置付け、本人・保護者との建設的対話による合意形成プロセスを明示化する。
- 基礎的環境整備:1人1台端末等のデジタル学習基盤を合理的配慮の前提となる基礎的環境整備として総則等に明記。
- 通級による指導の制度的柔軟化:自立活動の指導を行った上で、なお困難がある場合の特例的措置として各教科等の目標・内容の一部変更・調整を可能とする新しい仕組みを提案。時数の下限規定は設けず、弾力的運用を促進。
- 特別支援学級:在籍者急増に対応し、教育課程編成の基本的考え方をわかりやすく整理。デジタル学習基盤の活用と個別の指導計画の記載精選(スリム化)を推進。
- 高等学校:障害の程度が比較的重い生徒を受け入れる場合に備えた新たな特例校制度の創設を検討。
- 障害種ごとの「配慮事項」:特別支援学級・通級による指導における全国的教育水準保障の観点から、障害種別の基本的な対応・配慮事項を新たに示す。
③ 特別支援学校における改善方向性
- 知的障害教育の教育課程改善:幼・小・中・高等学校との連続性を重視しつつ、段階別の目標・内容構成を維持。情報活用能力の抜本的強化として、中学部「職業・家庭」を「職業」と「家庭」に分離し、「情報機器・情報技術の活用(仮称)」領域を設定。
- 自立活動の充実:自立活動を「心身の調和的発達の基盤を培うもの」として総則に明確に位置付け。子ども主体の自己選択・自己決定を促す指導内容の充実と、個別の指導計画の業務重複解消を図る。
- 総則の構成・記載見直し:重複障害者等に関する教育課程の取扱いの対象名称見直し、不登校児童生徒への支援の記載追加など。
- 学習評価:知的障害のある子どもへの学習評価を小・中・高等学校の考え方に准じた形に整備し、「主体的・対話的で深い学び」との接続を図る。
- 高等部の充実:スクール・ポリシーの導入、産業界・高等教育機関との連携強化、専門学科の内容見直し。
- センター的機能の強化:小・中・高等学校の解説等で具体的活用場面を明示、アウトリーチ支援の期待を明記。
現場視点の一般的な懸念
① 「重層的な指導・支援」は通常の学級教員への新たな負担転嫁になりうる
骨子案は、通常の学級における「多様性・包摂性を尊重した学習者主体の授業づくり」をすべての改善の起点に据えている。しかし現在でも、通常の学級担任が専門知識なく特別支援対応を求められている実態は資料自身が認めている。基盤層(第1層)の実質的充実が図られないまま制度の柔軟化だけが先行すれば、「重層的」という名のもとに、これまで特別支援の専門家が担っていた役割が通常学級教員に丸投げされるリスクがある。
② 通級における教科指導の特例化は連携コストと責任の所在を曖昧にする
通級による指導で「各教科等の目標・内容の一部変更・調整」を可能とする特例措置は、一見柔軟化に見えるが、次の問題を内包している。第一に、通級担当者・在籍校担任・管理職・教育委員会の間でカリキュラム・マネジメントの責任主体が不明確である(参考資料1でも委員からの指摘あり)。第二に、他校通級・巡回指導の場合、教科指導に付随する事前・事後の情報交換業務がさらに積み重なる。「働き方改革にも留意」という但し書きはあるが、その具体的な担保措置が示されていない。
③ ◯付記問題と同型——知的障害教育における学習評価改革の曖昧さ
骨子案は知的障害のある子どもへの学習評価について「小・中・高等学校の各教科等の考え方を踏まえた学習評価」を求めているが、知的障害教育における評価は障害特性と個別性が特に高く、一般校と同型の枠組みを持ち込む際の具体的な手続きや記録形式は示されていない。他ワーキングで問題になっている◯付記(「主体的に学習に取り組む態度」の◯記載方式)と同様に、制度的な整合性を優先した評価様式の変更が現場の実務負担を増大させる可能性がある。
④ 中学部「職業・家庭」分離の実施体制が未整備
中学部における「職業・家庭」の「職業」と「家庭」への分離は、実施に際して免許・時数・担当者配置の全面的な見直しを要する。特別支援学校の現場では教員の専門免許取得状況に格差があり、分離によって生じる担当不在・授業成立の困難について骨子案は言及していない。「検討が必要」という記述にとどまっており、2027年度(令和9年度)の改訂施行に間に合う実装設計が不透明である。
⑤ デジタル学習基盤の「前提化」は整備格差を固定化しうる
骨子案は全体を通じてデジタル学習基盤の活用を「前提」として構造化している。しかし合理的配慮に係る委員意見(参考資料1)が指摘するように、「ICTの活用が進んでいるとは言い切れない」のが現状である。インフラ整備が十分でない学校・地域では、デジタル基盤を「前提」とした制度設計が、むしろ合理的配慮の提供体制の地域間格差を制度的に正当化する論理として機能しかねない。
中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会特別支援教育ワーキンググループ(第9回)の配付資料を掲載しました
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/105/siryo/mext_00015.html


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