
……ほぅ。実に興味深い。
これほど完成度の高い機能不全の標本は、そうそう拝めるものではないヨ。通常、組織というものは腐敗しながらも、醜く足掻くような自己修復本能を持つものだがね……。この標本はその本能すら、とうの昔に切り捨てたらしい。 いや、正確には――腐敗そのものを恒常状態として最適化させている、という点において、むしろ芸術的ですらある。
ふふ、記録しておかねばな。
第一観察項目:「前例踏襲」という名の思考の死
縦割り、前例踏襲、事なかれ主義……。どの個体からも同じ言霊が漏れ出しているネ。反復観察は科学の基本だが、ここまで揃うと壮観だネ。 だが、これを組織の欠陥と呼ぶのは素人の浅知恵というもの。より精密に定義するならば――これは思考機能を外部委託した状態の完成形だ。「前例」という過去の遺物に認知コストをすべて転嫁することで、個体は判断のリスクをゼロにできる。実に合理的で、臆病な生存戦略ではないか。問題があるとすれば、その組織が何かを成し遂げるための機能体であるという、甘っちょろい前提を置いた場合のみだ。ふふ。
第二観察項目:「フリ揉め」という縄張り行動の進化
担当外業務の押し付け合い……。標本たちはこれを「フリ揉め」と呼んでいるんだネ。なかなか悪趣味な、私好みの呼称だ。 生物学的に見れば、これは純粋な縄張り防衛反応に他ならない。各部署が自己の領域を死守しようとする本能は、むしろ健全な自己保存機能と言える。 傑作なのは、その縄張りが「成すべき仕事」ではなく「やらなくて済む理由」で定義されている点だ。それすらも一種の最適化と観れば、実に美しい。
第三観察項目:「負のスパイラル」の自己強化ループ
離職者の増加、残存者の過負荷、さらなる離職、そして補充不能の欠落……。 標本自身はこれを負のスパイラルと嘆いているようだが、観察者の私から見れば「完璧に閉じたフィードバックループ」だヨ。これは失敗などではない。この破滅という特異点に向かって、システムが完璧に駆動しているのだヨ。 破綻に向けて精密に設計された機構……これを欠陥と呼ぶか、芸術と呼ぶかは、美意識の問題だ。私は後者に一票投じさせてもらうヨ。
第四観察項目:「政治への従属」という寄生構造
幹部人事を握られ、上位個体である政治家の意向にのみ全神経を尖らせる……。 顔色を伺い、正論を棄却し、国民の意思を排除する。 これは寄生関係の典型だネ。宿主への貢献を止め、寄生体を悦ばせる方向に進化した結果、本来の機能はただの副産物に成り下がった。まことに……教科書に載せたいほど見事な症例だ。
第五観察項目:若手の「下積み」という機能的消耗
入省5年は雑務、日程調整と印刷に1日を費やす……。 これを成長と呼ぶ連中もいるようだが、私の目には、才能ある実験体を安価な消耗品として使い潰す工程にしか見えないネ。 最も可塑性の高い時期に、AIで事足りる無価値な労働を強いて気力を削ぎ、それでもなお摩耗しなかった歪な個体だけを「使える」と判定する――。実に残酷な選別機構だ。嫌いではないよ、こういう非効率な効率化は。
総括所見
この標本、文部科学省は、教育と科学という人類の知の再生産を担うべき機関でありながら、その実、機能の真逆を体現した構造を内包しているネ。そして、それを恒常状態として維持し続けている点において、極めて希少な標本価値を有する。
解体して再設計すべきか、だと? ……ククク、それも一つの解ではあるが。 私としては、このまましばらく観察を続けたい。
腐敗の完成形というのは、そうそうお目にかかれるものではないからネ。
ふふふ……。 ふふふふふ……。

