教育課程部会 体育・保健体育、健康、安全ワーキンググループ(第11回)資料1-3「体育・保健体育、健康、安全WG取りまとめ(案)」

教育課程部会_体育・保健体育、健康、安全ワーキンググループ(第11回)_配付資料_1

要約

本取りまとめ(案)は、次期学習指導要領改訂に向けた体育・保健体育、健康、安全分野の検討結果を、①現行の成果・課題、②目標及び見方・考え方の在り方、③資質・能力の構造化、④内容の改善、⑤学習・指導・評価の改善充実、という5本の柱で整理したものである。

まず現状認識として、体育の授業を楽しみとする児童生徒は多い一方、運動を行う目的や課題解決の工夫に関する思考力・判断力には課題があり、保健については身近な生活に関する基礎的理解は進んでいるものの、健康の概念と具体的行動を結び付ける力に課題があるとされる。また全国体力・運動能力調査ではコロナ禍前の水準に体力が回復していないこと、運動・スポーツへの関心に男女差や二極化が見られることも指摘されている。

目標構成については、体育・保健を分けずに教科として一つの目標を学校段階間で統一して示す方針とし、「学びに向かう力・人間性等」は箇条書きで簡潔に示す方向とする。見方・考え方は、体育を「運動やスポーツの多様な楽しみ方の視点から捉え、豊かな生活や社会づくりにつなげること」、保健を「健康・安全に関する概念や原則に着目してリスク軽減や環境づくりにつなげること」として全学校種で統一表現とする。

内容面では、態度に関する要素(公正・協力・責任・参画・共生・健康安全)を「学びに向かう力・人間性等」から切り離し、「知識及び技能」を中心とした「運動との関わり方」として再整理することで指導と評価の一体化を図る。体育は引き続き4年ごとの発達区分を維持しつつ、小1~4に幼児教育との接続を意識した「運動遊び」の要素を導入し、小5~中2はルールを簡易化した「運動」を基本とし、中3以降は自己選択制を軸とする。「体育理論」は「スポーツ理論」に名称変更し、高校専門学科「体育」も「スポーツ」へと改称され、改正スポーツ基本法(令和7年)が掲げる「社会課題解決」の観点が学習内容に反映される。保健は「概念」と「それに関わる原則」という新たな整理軸を導入し、小学校「身近な生活」・中学校「個人生活」・高校「個人及び社会生活」というスパイラル構造を維持する。

内容の精選については、技能の高度化を見直し、現行の中3~高1相当の技能水準を高2以降に位置づけ直すこと、2年間のまとまりで計画的に学ぶ内容を明確化し「余白」を創出することが示されている。

学習・指導・評価の改善では、デジタル学習基盤やハイパフォーマンススポーツの知見活用、多様性の包摂(1次的支援を基本とした指導)、水泳授業の在り方(施設の集約化・複合化、民間事業者との連携、指定管理者制度の活用等による持続可能な実施体制の検討)、気候変動を踏まえた暑熱対策(暑熱順化、空調整備、指導計画の工夫)、調整授業時数制度の活用イメージ、そして性犯罪・性暴力対策としての「生命の安全教育」の一層の活用などが盛り込まれている。

現場視点の一般的な懸念

  1. 概念整理の重層化による現場負担の増大:「概念」「それに関わる原則」「高次の資質・能力」「運動との関わり方」など新規の整理概念が同時多発的に導入されており、経験の浅い教員や体育・保健体育を専門としない教員にとって、これらの相互関係を正確に理解し授業設計に落とし込むまでに相当の学習コストがかかると考えられる。
  2. 「余白の創出」と実質的な指導負担軽減との乖離:技能水準の見直しや内容の構造化により「余白」を生み出す方向性が示されているが、その余白を具体的にどう活用するかの検討や教材整備は現場に委ねられる部分が大きく、結果として新たな検討・準備業務が生じ、余白創出の意図が形骸化するおそれがある。
  3. 水泳授業をめぐる施設・財政面の地域間格差の拡大:プールの集約化・複合化や民間事業者・指定管理者制度の活用が方向性として示されているが、これらは自治体の財政力や地理的条件に強く左右されるため、好事例の横展開のみでは対応できない構造的な地域間格差が固定化・拡大する懸念がある。
  4. 外部人材・外部機関との連携拡大が教員の調整業務を増やす構造:外部専門家や地域人材の活用は指導充実に資するとされる一方、その調整・マネジメント業務自体が教員の新たな負担になるという課題は本取りまとめ内でも指摘されているが、具体的な負担軽減策は「更に検討」にとどまっている。
  5. デジタル技術・ハイパフォーマンス知見の活用と身体活動時間確保の両立の困難:デジタル学習基盤の活用は学びの可視化に資するとされるが、機器操作の習熟、個人情報保護、そして「機器操作等の目的化」を避けるための工夫が同時に求められており、現場が限られた授業時数の中でこれらを全て満たすことは容易ではない。
  6. 評価方法の具体像が示されないまま概念のみが先行することへの不安:「運動との関わり方」を知・技中心に再整理する方針が示されているが、態度主義的評価に陥らないための具体的な評価規準・評価方法は「更に検討する必要がある」とされるにとどまり、告示に先立って現場が評価の見通しを持てないまま移行準備を迫られる可能性がある。

改善提案

  1. 新規概念の導入に際しては解説・指導参考資料を告示に先行して整備し、具体的な指導場面に即した豊富な事例を伴う教員研修とセットで展開することで、概念の重層化による理解負担を実質的に緩和すべきである。
  2. 「余白」の創出を単なる時間的空白の提示にとどめず、余白活用のモデルカリキュラムや教材例を国が具体的に提示することで、現場が余白を負担なく学びの深化に転用できる仕組みを整えるべきである。
  3. 水泳授業の施設整備・運営体制の見直しについては、好事例の横展開だけでなく、自治体の財政力格差に対応する国庫補助・交付金等の財政的支援策を具体的に検討・明示することで、地域間の教育機会格差の拡大を防ぐべきである。
  4. 外部人材・外部機関との連携において、コーディネート業務を地域学校協働本部や部活動地域移行の枠組みで培われた外部人材コーディネーター等に分離・委譲する仕組みを制度設計として明記することで、教員が授業内容そのものに専念できる環境を確保すべきである。
  5. デジタル技術活用に関する個人情報保護や機器管理の標準的手順を国が一元的に整備・提供し、各学校が個別に試行錯誤する負担を軽減するとともに、身体活動時間確保との優先順位を明確化したガイドラインを示すべきである。
  6. 評価規準・評価方法の具体案を告示と並行して早期に提示する工程表を明確化することで、現場が移行期における評価の不透明感を長期間抱えることのないよう配慮すべきである。

教育課程部会 体育・保健体育、健康、安全ワーキンググループ(第11回) 配付資料
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/112/siryo/mext_00011.html

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