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要約
令和8年7月30日に開催された第2回会合では、前回(第1回)の委員意見の振り返りに続き、4つの要件—①産業競争力強化へのビジョン、②ガバナンス・経営力、③研究力・人材、④経済圏への深い貢献—のうち、特に①と④を中心に議論が行われた。経団連からは「研究大学」指定における「ビジブルな得意領域」の必要性と大学再編・統廃合の加速が、三井不動産からは米国ラストベルト・サンベルトおよび欧州ブルーバナナの中規模都市(ピッツバーグ、トリノ、マディソン等)における産学連携エコシステムの実証研究をもとに、文化・教育基盤、カタリスト人材、場の整備主体、資金という5つの成功要因が提示された。骨太の方針・日本成長戦略では17の戦略分野を中心に「特に高い研究力を有し高度な経営を行う大学」を認定し中長期的に支援する制度の創設が2026年度中の結論を目指して検討されており、既に「10年以上の支援期間」「成果連動型支援」「認定取消しを含めた緊張感の維持」など制度設計の骨格が委員意見として積み上がっている。一方で、この「中核大学群」構想は特定分野・特定大学への重点的な資源集中を前提としており、現場である大学・地域・非選定機関にとって、その恩恵と負担がどのように配分されるかについては、なお詰めるべき論点が多く残されている。
現場視点の懸念
- 選定大学への資源集中による大学間・地域間格差の拡大:「その時々の産業政策や流行テーマに右往左往するのではなく」「特定分野で国内外から高く評価される強みを有する大学に重点的な支援を行う」という方針が示されているが、非選定大学や地方の中小規模大学における研究環境・人材確保への影響についての具体的な緩和策は本資料からは読み取れない。
- 評価指標・KPIの多元化に伴う現場の事務・報告負担の増大:産業界参画による評価委員会の設置、定量・定性両面からの評価、KGI・KPIのロジックモデル整理、産業界の参画や資金獲得状況の評価観点への追加など、評価の精緻化が繰り返し提案されているが、これらのデータ収集・報告実務を担う大学の教職員・URA等の業務量増加への目配りは薄い。
- 長期コミットメントの実効性への不安:「大学が経営改革を実現するには10年以上の支援期間が必要」「政府としても長期的なコミットメントを示すことが重要」との意見が第1回から繰り返されているが、複数年度にわたる予算・法的な担保をどう制度化するかは本資料の議論対象に明示されておらず、政策サイクルの変化により現場が投資判断を誤るリスクが残る。
- 人材交流における報酬・処遇格差是正の具体策の欠如:クロスアポイントメント等による大学・産業界間の人材循環の重要性は繰り返し指摘され、経団連プレゼンでも「報酬・処遇を経済界水準に引き上げるべき」との言及があるが、雇用契約の煩雑さや機密保持・知財管理上の課題を含め、現場の研究者個人が実務上どのような支援を受けられるかの制度設計は示されていない。
- 文化・教育基盤整備の前提条件の地域間格差:三井不動産の分析は、郷土愛を育む文化・スポーツ・食などの地域資源、篤志家による財団設立や大学への寄付、家族のQOL向上策(保育・教育環境)など、産学連携エコシステムの土台となる基盤整備が長期にわたる複合的な投資の産物であることを示している。中核大学群の指定を目指す地方大学がこうした基盤を短期間で整備することの現実的な困難さについては議論されていない。
- ガバナンス改革実行における組織内調整コストの過小評価:プロボスト・CFO等への実効的な権限付与、独立性の高い医学部・附属病院を含めた組織の壁を越えた資源再配分など、要件②に関わる改革は「求められる取組」として列挙されているが、こうした改革を実行する過程で生じる部局間の調整負担や移行期のマネジメントコストについて、現場の視点からの検討は不足している。
改善提案
- 中核大学群として選定されなかった大学・地域についても、共同利用施設の整備や広域連携枠組みへの参画支援など、格差の固定化を防ぐための並行的な底上げ支援メニューを制度設計の段階からセットで用意する。
- 評価指標の設計にあたっては、既存の統計・データベースとの連携やデータ収集の自動化を前提とし、大学教職員・URAの新たな事務負担を最小化する仕組みをあらかじめ組み込む。
- 支援の長期性を担保するため、単年度予算に依存しない基金化や複数年度にわたる予算措置の法的枠組みを検討し、政策サイクルの変化によって現場の投資判断が損なわれないようにする。
- クロスアポイントメント等における年俸・退職金の通算制度や機密保持・知財管理の標準契約ひな形の整備など、人材交流の障壁除去策を制度の必須要件として明記する。
- 中核大学群に指定されない地域の大学についても、地域の文化・教育基盤の底上げ(地方創生策との連携、QOL向上投資)を対象とする別建ての支援策を用意し、中核大学群構想と地方創生戦略を接続する。
- ガバナンス改革の実行段階において、部局間調整に必要な移行期間の設定や、外部の経営専門人材を一時的に派遣する仕組みなど、現場の調整コストを緩和する制度的手当てをあらかじめ組み込む。
産業競争力・研究力中核大学群に関するワーキンググループ(第2回)配布資料
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu31/siryo/000019199_00021.htm


