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要約
本資料は、文部科学省が令和8年8月28日付で公表した「令和9年度 国立大学の入学定員(予定)について」であり、令和9年度(2027年度)から適用される国立大学の学部・大学院の入学定員の増減予定を、総括表と大学ごとの内訳表の形式で取りまとめたものである。学部全体では96,376人から96,356人へと20人の純減、大学院全体では修士課程で353人増、専門職学位課程で10人増、博士課程で109人増となり、大学院全体としては472人の純増となっている。
学部段階で最も目を引く動きは、東京大学における「価値創造学部」(価値創造学科、定員100人)の新設である。一方で東京大学は同時に、法学部(△6人)、文学部人文学科(△53人)、農学部(応用生命科学課程△24人・環境資源科学課程△16人)、経済学部(経済学科△5人・金融学科△7人)、教育学部(△1人)、医学部(医学科△2人・健康総合科学科△12人)など複数の伝統的学部で定員を削減する一方、工学部(社会基盤学科・電子情報工学科)と教養学部後期課程では増員するという、増減が入り混じった再編を行っている。福島大学では人文社会学群を廃止し、教育学部・政経学部を新設するとともに理工学部・食農学部の定員を増やす大規模な組織再編が行われる。
学部の入学定員を増やす大学は岩手大学、福島大学、東京大学、富山大学、金沢大学、福井大学、京都工芸繊維大学、鹿屋体育大学の8大学・135人分であり、このうち岩手大学理工学部と京都工芸繊維大学工芸科学部の増員は「大学・高専機能強化支援事業(高度情報専門人材の確保に向けた機能強化に係る支援)」による定員増を活用したものと注記されている。一方、定員を減らす大学は11大学・205人分にのぼり、その大半を医学部医学科・保健学科が占める。東北大学、東京大学、東京科学大学、新潟大学、金沢大学、神戸大学、鳥取大学、岡山大学、山口大学と、実に9大学で医学部系統の定員削減が同時に生じている。
大学院段階では、大阪大学の情報科学研究科が情報数理学専攻・コンピュータサイエンス専攻など6専攻を廃止し、「情報科学専攻」に一本化する再編、豊橋技術科学大学工学研究科が5専攻を「学際共創専攻」に統合する再編など、既存の専攻構成を大きく組み替える動きが複数大学で見られる。東北大学医学系研究科も、医科学専攻・障害科学専攻・保健学専攻・公衆衛生学専攻を廃止し「総合医学専攻」(修士110人・博士157人)に再編する。神戸大学の国際協力研究科も同様に、複数の政策系専攻を廃止し「国際協力専攻」に統合している。このほか、静岡大学「グローバル共創科学研究科」、島根大学「材料エネルギー研究科」、大分大学「総合健康科学研究科」など、新しい研究科の新設も複数確認できる。
参考資料として、第1年次後期編入学・第2年次編入学・第3年次編入学それぞれの定員増減も示されており、増を行う大学が計8大学・109人分である一方、減を行う大学は計11大学・173人分にのぼり、弘前大学医学部保健学科(△30人)や秋田大学医学部保健学科(△14人)など、編入学定員をゼロ化する事例が目立つ。
現場視点の一般的な懸念
- 医学部医学科・保健学科の定員削減が全国9大学で同時多発している:東北大学、東京大学、東京科学大学、新潟大学、金沢大学、神戸大学、鳥取大学、岡山大学、山口大学と、地域も設置形態も異なる大学で医学部系統の定員削減が同時期に集中している。本資料は各大学の増減数を淡々と列挙するのみで、削減の背景(医師需給見通しの変化なのか、大学独自の教育体制見直しなのか)には触れておらず、高校の進路指導現場や医学部志望者・保護者からは、国全体としての医師養成方針との整合性が見えにくい。
- 東京大学における増減が入り混じった再編の全体像が読み取りにくい:法学部・文学部・農学部・経済学部・医学部で定員削減が行われる一方、工学部・教養学部後期課程で増員し、新たに「価値創造学部」を新設するという動きが同時に生じている。個々の増減数は示されているが、大学全体としてどのような教育理念・人材育成方針のもとにこれらを組み合わせているのかの説明は本資料には含まれておらず、受験生・保護者からは大学の方向性が見えにくい。
- 大学院専攻の統合再編に伴う教育・研究体制への影響が不透明:大阪大学情報科学研究科(6専攻→1専攻)、豊橋技術科学大学工学研究科(5専攻→1専攻)、東北大学医学系研究科、神戸大学国際協力研究科など、複数の大学院で専攻の大幅な統合が行われる。専攻名の統合は入学定員の管理区分の変更にとどまるのか、実際の教員配置・研究室体制・カリキュラムにも変更が及ぶのかは、本資料の定員増減表だけでは判断できず、進学を検討する学生や既存の在籍者にとって研究環境の継続性が見えにくい。
- 編入学定員の大幅な縮小・ゼロ化:第3年次編入学定員は全体で163人の純減となっており、弘前大学医学部保健学科、秋田大学医学部保健学科・理工学部、岐阜大学応用生物科学部など、複数の学部で編入学定員がゼロになっている。高専卒業生や短期大学卒業生など編入学を進路の選択肢としてきた層にとって、この縮小がどのような理由(学部改組に伴う一時的な調整か、恒常的な受入れ縮小か)によるものかが明示されておらず、進路選択における不確実性が高まる。
- 学部・学科・研究科の名称変更が同時多発しており、情報の追跡負担が大きい:福島大学(理工学群→理工学部、農学群→食農学部)、佐賀大学(経済学科・経営学科・経済法学科→経済学科に統合)、広島大学(人間社会科学研究科→教育人文社会科学研究科)、大阪大学(創成薬学専攻→創薬科学専攻)など、名称変更を伴う改組が全国的に同時進行している。高校の進路指導担当者や受験生が、新旧名称の対応関係を正確に把握し続けることは容易ではなく、旧名称のまま進路指導や情報検索が行われるリスクが残る。
- 高専機能強化支援事業に紐づく定員増の効果検証が示されていない:岩手大学理工学部・京都工芸繊維大学工芸科学部の定員増は「大学・高専機能強化支援事業(高度情報専門人材の確保に向けた機能強化に係る支援)」を活用したものと注記されているが、この事業による定員増が今後どの程度継続され、どのような成果指標で評価されるのかは本資料からは分からず、対象学科に進学を検討する受験生にとって、増員後の教育体制の安定性を見通しにくい。
現場視点の一般的な懸念を踏まえた改善提案
まず、医学部医学科・保健学科の定員削減が全国的に同時多発している点については、文部科学省が個々の大学の増減数を機械的に一覧化するだけでなく、地域の医師・医療人材の需給見通しとの関係を整理した解説資料を別途公表し、進路指導現場や受験生が削減の背景を理解できるようにすることが望ましい。
東京大学のように学部間で増減が入り混じる大規模な再編を行う大学については、大学自身が増減の全体方針(どの分野を強化し、どの分野を再編するのか)を対外的に分かりやすく説明する概要資料を、本一覧の公表と合わせて示すことが有効である。
大学院専攻の統合再編にあたっては、専攻名の変更が入学定員管理上の整理にとどまるのか、教員配置や研究指導体制の実質的な変更を伴うのかを、対象大学が入学希望者向けに明示することが望ましい。特に既存専攻に在籍する学生への影響(指導教員の継続性、研究テーマの継承等)についての説明責任を果たすべきである。
編入学定員の縮小・ゼロ化については、削減理由(学部改組に伴う一時的措置か、恒常的な受入れ方針の変更か)を各大学が明示し、高専・短期大学等の進路指導現場に対して早期に周知することで、編入学を目指す学生の進路選択の混乱を防ぐことができる。
学部・学科・研究科の名称変更については、文部科学省または各大学が新旧名称の対応表を分かりやすい形で公表し、高校の進路指導担当者や受験情報会社が参照しやすいようにすることが求められる。
最後に、大学・高専機能強化支援事業など特定の政策目的に紐づく定員増については、事業の実施期間・評価指標・次年度以降の継続方針をあらかじめ明示し、対象学科への進学を検討する受験生が、増員後の教育体制の安定性を見通せるようにすることが望ましい。
「秩序ある共生社会の実現に向けた日本語教育支援総合パッケージ」を取りまとめました
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/clarinet/003/1320860_00001.html


