中央教育審議会初等中等教育分科会 教育課程部会 総則・評価特別部会(第8回)配付資料 令和8年4月27日開催

要約

本特別部会の第8回は、次期学習指導要領改訂に向けた複数の重要議題を扱った。配付資料は以下の三本柱で構成される。

【議題①】教員養成等に関する審議状況(資料1-1〜1-3)

教職課程・免許・大学院課程WGおよび各作業部会(幼児教育・小学校・中学校高等学校・養護教諭栄養教諭・特別支援教育)の中間まとめが提示された。骨子は以下のとおり。

  • 現行の免許状区分(一種・二種)を「基礎免許状」に一本化し、これに「強み専門性(20単位程度)」を付加する新体系への移行。
  • 教職課程の科目区分を「教科指導等に関する科目」「教育及び幼児・児童・生徒の理解に関する科目」の2本柱に再編し、「教師としての適応力・回復力・自己管理能力」「教育における多様性の包摂」「教育データの活用及び人工知能」等の新規事項を追加。
  • 中堅教諭等資質向上研修を大学院・教職大学院の学びと接続させることで、保有免許状の「修士レベル化」を推進。
  • 幼稚園については、幼保小免許・資格の併有を強力に促進し、コンソーシアム形成による人材バンク整備・復職支援を想定。
  • 特別支援学校教員の不足(特に臨時的任用教員比率が17.6%と高い)も参考資料で示された。

【議題②】部活動・地域クラブ活動の取扱い(資料2-1〜2-2)

次期学習指導要領の総則に、従来の「部活動」規定を維持しつつ新たに「地域クラブ活動」の位置づけを追記する方向性が示された。令和7年スポーツ基本法改正を踏まえ、令和8年度からの「改革実行期間」内(令和13年度まで)に休日の学校部活動を全面的に地域展開することが前提となっており、体罰・暴言防止や働き方改革推進に関する記載も充実させる。高等学校は「部活動」のみ記載。

【議題③】関係WG等の議論を踏まえた総則の在り方(資料3)

以下の6領域にわたる各WGの議論状況が総則改訂の観点から整理された。

  • 特別支援教育WG:デジタル学習基盤を活用した合理的配慮の充実、特別支援学級における「学びのイメージ」(異学年・個別・協働の組み合わせ)、通級による指導での各教科指導の特例的取扱いの検討。
  • 特別活動WG(記載省略、本会では主要論点なし)
  • 不登校児童生徒に係る特別の教育課程WG:校内外教育支援センターを利用する不登校生徒を対象とした「特別の教育課程」の制度化に向けた検討。対象は「伴走支援があれば学びに向かえる状態」「回復期で学びたい意欲を持ちつつある状態」の児童生徒。授業時数は一律に定めず校長が柔軟に設定できる仕組みを検討。個別の指導計画において「学びのサイクル」を実感させる視点を重視。
  • 特定分野に特異な才能のある児童生徒に係る特別の教育課程WG(本資料では詳細記載省略)
  • 外国人児童生徒等の教育に関する有識者会議:日本語指導を「言語補充」から「資質・能力の育成」へと位置づけ直す方向で総則への記載を検討。「ことばの力のものさし」を活用したアセスメントの徹底、在籍学級との連携・役割分担の明確化、R8年度中に「外国人児童生徒等の学びを支えるガイドライン(仮称)」を整備予定。
  • 幼児教育WG・生活WG:幼小接続について「架け橋期のカリキュラム」を幼児教育施設と小学校が協働で作成する仕組みの整備。スタートカリキュラムを入学当初の短期的計画にとどめず年間を見通したものとして再設計。

現場視点の一般的な懸念

  1. 「強み専門性20単位」の実質的な確保が困難な構造的問題 教職課程の基礎部分に新規事項(AI・データ活用、適応力・回復力、多様性の包摂など)を積み増しながら、同時に「強み専門性(20単位)」を上乗せする設計になっている。単位数の圧縮と充実が同一文書内で語られており、学生・大学双方への負担が実質的に増加する矛盾が解消されていない。「量より質」を標榜しながら事項数は増加する、というこれまでの改訂の繰り返しと構造的に同じである。
  2. 「修士レベル化」推進が現職教員の負担増として機能するリスク 中堅研を大学院学修に位置づける方向は、校務や学級担任業務を担いながら大学院単位取得を求める構造である。「学びやすい環境の整備」という文言はあるが、代替人材確保・研修中の不在対応・経済的負担軽減の具体策は依然として非拘束的な「検討事項」にとどまっており、現場への個人帰責の典型パターンが繰り返されている。
  3. 部活動改革の「学習指導要領記載」が、移行の痛みを学校現場に転嫁するおそれ 「部活動」と「地域クラブ活動」の併記は、両者が並存する移行期において学校側が両方への対応を求められることを意味する。教師の兼職兼業・施設開放等の記載を「解説」に委ねる方式では、現場が具体的な判断基準を持てず、裁量の名の下での過重対応が常態化する懸念がある。
  4. 不登校特別課程の「柔軟な授業時数設定」が、支援体制の乏しい学校で形骸化するリスク 校長が授業時数を柔軟に設定できる仕組みは、支援員・SCの配置が充実した学校では機能しうるが、農村部・小規模校・人員不足校では個別の指導計画作成・ケース会議・連携体制の全てが同一の限られた教職員に集中する。「実施可能な学校」と「名目のみの学校」の格差拡大が懸念される。
  5. 外国人児童生徒支援の「ガイドライン整備」依存が、格差を温存する 日本語指導を受けられていない児童生徒が一定数存在するという事実が「注」として記載されているにもかかわらず、対応策はR8年度中のガイドライン整備と教員研修の充実にとどまっている。受入れ体制そのものの財政的・人的担保(専任教員・支援員の配置基準設定など)を欠いた「好事例の共有」では、集住地域と散在地域の支援格差は縮小しない。
  6. 幼小接続の「架け橋期カリキュラム」が、担当者の善意と時間に依存する 幼児教育施設と小学校が「協働して」カリキュラムを作成するという方向性は理念として正しいが、複数の園が一つの小学校に流入する構造では全ての園・校が対等に連携することは物理的に困難である。担当者の「組織的対応が必要」という留意書きは存在するが、接続担当教員の持ち時数確保・加配・業務分掌明確化といった制度的担保なしには、年度替わりのたびに連携が途切れる現実は変わらない。

現場視点の一般的な懸念を踏まえた改善提案

  1. 教職課程の「加算型改革」から「真の精選型改革」への転換 新規事項の追加に対応して削除する既存事項を各作業部会が明示的に提案し、部会審議の中でトレードオフを可視化するプロセスを制度化すべきである。また「強み専門性20単位」を必須とするのであれば、それを現行の総単位数の枠内に収めるための大括り化を教職課程コアカリキュラム改訂と一体で設計することが前提条件となる。
  2. 「修士レベル化」推進に先行した労働条件整備の義務化 中堅研の大学院接続を推進するなら、研修参加中の学級・授業の安定的な代替措置(代替教員確保の国庫補助・地方交付税算定への反映)を義務規定として先行させるべきである。「支援を強化することが望まれる」という非拘束的表現を、具体的な財政措置と結びついた義務的記述へと格上げすることが不可欠である。
  3. 部活動移行期間中の「学校業務免除規定」の総則・解説への明示 「地域クラブ活動」が主体となった学校において、当該活動に関する教師の業務が学校業務から切り離されることを、学習指導要領解説レベルにとどめず、教育委員会・学校長への通知等で法的拘束力を持たせることが必要である。移行後に教師が「ボランタリーな参加」を事実上強いられる事態を防ぐための上位規定が求められる。
  4. 不登校特別課程の実施を支える「最低限の支援体制基準」の設定 校長による柔軟な課程編成を認めるにあたり、その実施要件として校内委員会の定期開催・SCまたはSSW等の定期的関与・個別の指導計画の作成と見直し頻度について、省令もしくは通知で最低基準を定めるべきである。ガイドライン・手引きへの委任は「実施できる学校だけが実施する」構造を固定化するため、実施可能性の底上げとなる標準仕様の策定が必要である。
  5. 外国人児童生徒支援の「体制整備」を財政措置と一体で進める ガイドライン整備と並行して、日本語指導が必要な児童生徒数に応じた加配教員・支援員の配置基準を義務的経費として算定基準に組み込むべきである。散在地域では専任の指導担当者を単独校で確保することが困難であるため、複数校合同での巡回指導体制・市区町村レベルでのコーディネーター配置への補助事業を恒久化することが求められる。
  6. 幼小接続「架け橋期カリキュラム」の作成・維持を支える制度的インフラ整備 幼小連携の担当教員に対して、勤務時間内に連携業務を行えるよう業務分掌上の明確な位置づけと、授業持ち時数の軽減措置を標準化すべきである。また、架け橋期カリキュラムの作成・更新を市区町村教育委員会が主導し、個々の園・校の担当者交代によって連携が途切れないよう、カリキュラムの保管・引き継ぎを行政が担う仕組みを「総則解説」に記載するにとどめず、施策として制度化することを提案する。

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